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静かな海

8月22日、海に来た。
泳いでいる人は数組。申し訳程度にオープンしている海の家の音楽が遠くまでしっかりと響き渡る程、誰の声も聞こえない。
静かな海だ。

夫と子どもたちは泳いでいるが、私は木陰にいる。
木陰でも「うっ…」と苦しくなるくらいの熱風と、少しだけひんやりとした風が交互にやってくる。うっすら蜃気楼も見えている。

誰かが近くに来る気配すらないので、海の家の音楽に被せるように自分の好きな音楽をスマホから流し、海を眺めている。贅沢な時間である。

と打っていたら突然人の声が聞こえて来たので、急いで音楽を小さくした。誰が来ても自分の好きな音楽を爆音で流してやるぜ的な度胸は私にはない。

今、海を眺めながら聴きたい音楽…と考えた時にふと思い出したのが「海になれたら」だった。

ジブリの「海がきこえる」の主題歌だ。

「海がきこえる」は金曜ロードショーか何かで放送された時に見た記憶はあるものの、正直内容はあまり覚えていない。
でもふと、聴きたいと思ったのがこの曲だった。

シンプルなピアノに重ねられる様々な音たちが、この曲に優しい波のような浮遊感を与えてくれていると感じる。
ザバーーーーン!!!という荒波の海ではなく、サーーーッ…と静かに打ち寄せる波のような雰囲気の曲だ。

今日の海があまりにも静かなので、この曲が頭に浮かんだのかもしれない。

8月も後半になり、まだまだ暑い日は続いているが、風には少しずつ秋を感じるようになって来た。毎年どこかで秋の気配を感じると突然気持ちが切なくなってしまうのだが、今はまだまだ残るこの猛烈な暑さが、顔を出そうとする切なさをモグラ叩きかのようにひとつひとつやっつけてくれている。まだ当分切なくならなくて済みそうだ。

私は小さな秋の気配で切なくなってしまうくらいにはまあまあ感受性が豊かなタイプで、移ろいゆく季節の変化だけではなく、誰かのささいな言動からも何かと感じ取ってしまうタイプの人間であり、誰かと居るということだけでそれなりに疲れてしまう。

そう思うと、私にとってはこういうひとりでただひたすら海を眺める…という時間が、何よりも癒しの時間なのかもしれないと、ふと思った。

波が綺麗だな
木陰の風が涼しいな
この音楽のこういうところが好きだな…

そんなことを考えていられる時間が、マッサージに行くよりも、誰かと美味しいものを食べるよりも、一番安らぐ時間なのかもしれない。

私なりの充電時間だ。
今日はとことん、この静かな青い海を眺めていよう。

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