はと

デザイン、写真、音楽、ランニング、農業、家づくり、日本手話などなど。仕事&趣味の煩悩を…

はと

デザイン、写真、音楽、ランニング、農業、家づくり、日本手話などなど。仕事&趣味の煩悩をnote。

マガジン

  • 読書

    枕元に本を置く。物語の続きを夢想し寝るのが好き。だから、とても遅読。

  • 農業

    農作業の備忘録として記録しています。

  • ランニングライフ

    GarminやRunkeeperをつかってのゆるゆる市民ランナーのジョグライフマガジン。

  • 言語

  • ミュージックライフ

    音楽、音響、サブスク、radiko、真空管からUSBオーディオでのハイレゾまでゆるいサウンドライフ。

最近の記事

「オール・ノット」〜柚木 麻子

遠く色彩のぬけた海を背景に、工業地帯のコンビナート、貨物船が斜陽に広がった景色のような作品。横浜の元町、山手の坂を舞台に、ある一家をめぐる何人かの女性の人間模様を描いた純文学。若い頃から憧れの街、今も娘が二人暮らす街なのでストーリーの情景が映像でみえるようでフィクションとは思えない。

    • はじめてのスピノザ 自由へのエチカ〜國分功一郎

      記憶にないけど「読みたい本」として登録してあったので図書館で手に取った。読み切ってはみたけど難しくて私にはお手上げな哲学の話だった。「身体(物質)」「精神」「神」「自由」などが哲学の領域とわかっただけでも勉強になった。17世紀当時の書物のほとんどが筆者の母語ではなくラテン語でかかれていて、日常用いられる言語ではない、いわば誰のものでもない標準語のようなラテン語(母語話者がいない)。だから普遍性を目指す学問にあっていたそう。

      • 「天才」〜石原 慎太郎

        初版で読んだので再読。森元孝氏から「貴方は実は田中角栄という人物がすきなのではないのですか」との問いから執筆にあたり氏の研究を始める。角栄氏の一人称でつずられた日記のような体裁。そこにはコンピュータ付きブルドーザーといわれた力強さと聡明さはもちろん、子として、父として、男としての人間らしさがにじみ出ている。それは政治家でもあり作家でもある作者の氏に対する尊敬と憧憬から描かれていてあたたか。 すこし如何わしいが一級建築士ということも初めて知る。

        • 「成瀬は信じた道をいく」〜宮島 未奈

          偏差値75級の高校から京大へ。高校と違って学んでいる実感があるという。それでも目から鼻へ抜けるのとは違ってちょっと天然気質なのが愛嬌。さて、2025年の紅白に三山ひろしは出演できるだろうか。

        「オール・ノット」〜柚木 麻子

        マガジン

        • 読書
          17本
        • 農業
          3本
        • ランニングライフ
          11本
        • 言語
          1本
        • ミュージックライフ
          12本
        • 雑感
          9本

        記事

          「成瀬は天下を取りにいく」〜宮島 未奈

          話題作で地元出身の作家、興味があり読んでみた。全体的に真夏の未明から早朝のような爽やかな作品。優秀すぎて成瀬には感情移入できなかったけど、高校デビューを飾りたいけどいまいち。ちょっとシュールな「ぬっきー」こと大貫かえでにシンパシー。デパートというのはその地域の文化の要となり、様々なストーリーを引きずっているのだとデパートのない街で育ったものとしてうらやましかった。(子どもの頃は地元のスパー、イトーヨーカドーがその役割を担ってはいたが…)次作も読もう。

          「成瀬は天下を取りにいく」〜宮島 未奈

          農機具フロート式キャブレターのメンテ

          農機具フロート式キャブレターのメンテ

          GEL-FujiTrabuco SKY

          GEL-FujiTrabuco SKY

          METASPEED SKY

          METASPEED SKY

          「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」〜丸山 正樹

          子どもがろう児で日本手話が母語となるよう育ててきたので、ろう社会には多少の知識がある。ろう教育や手指日本語、旧優生保護法、コーダやインテなど、そこにある問題をしっかりと汲み上げていて感心しながら読み進めた。登場する人物や団体のモデルも想定できて、ろう文化宣言の旗手、素子は間違いなく彼女だろうと断定できたが、しっかりとあとがきで実名があった。障害を取り上げると重苦しくなりがちだけれど刑事小説として昇華している。

          「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」〜丸山 正樹

          「街とその不確かな壁」〜村上春樹

          読了後、心が混沌としてなかなかまとまらない。「結局なところ」生きることはカオス。酸素の希薄な薄暗く影さえ消えた世界を彷徨うだけ。輝いていた17歳の夏、きみのふくらはぎに張りついた濡れた草の葉の句読点で終わる。それは遠い過去の記憶の中だけにあり、人はそれを滋養に生きていくのだ。1980年に「文學界」に掲載された「街と、その不確かな壁」。句読点のとれた本作は書き直しただけあり、作家の世界観が時間という観念を濾過して滲み漏れでた傑作。

          「街とその不確かな壁」〜村上春樹

          「光のとこにいてね」〜一穂 ミチ

          「パッヘルヘブンのカノン」。 追いかけるように輪唱。家庭環境の違う二人の少女の物語が、それぞれ、交互に章を分けて一人称で語られる。ずらし、重なり合いながら響くメロディーは美しくももの悲しい。それは、ひとりの人間の内にある二面性のようにも感じた。終盤に睡眠導入剤で眠らせて場面転換するのは安易か。しかも2回。

          「光のとこにいてね」〜一穂 ミチ

          「1973年のピンボール 」〜村上 春樹

          70年のしめった夏が終わり、73年の乾いて冷めた秋にはなにも残っていない。想い出を遡ってもそこは忘れ去られた冷凍倉庫。まるで、アドレセンスの霊安室。たぶん、80年代後半以来の再読だが、これもまた、断片の記憶も残っていなかった。という作品。

          「1973年のピンボール 」〜村上 春樹

          「風の歌を聴け」〜村上 春樹

          眠れない夜にふと思い出す遠い過去の友人に再会したような作品。全体にしめった夏の風のなかでぼやけたディティール、軟調なフォーカスで描写された酸味の強い恋愛世代の叙情詩だ。暗くなりかけた港湾で人気のない突堤の倉庫の石段でいつまでも海を眺めていたあの頃。月並みな表現だけれど青春群像。

          「風の歌を聴け」〜村上 春樹

          「スタンド・バイ・ミー —恐怖の四季 秋冬編」〜スティーヴン・キング

          ギャングエイジのルール(おきて)と無意味なこだわり。下品な”ファック動詞”でつながった友情は切なくはかない。真夏の数日が生涯にわたって心を温め、また、締め付けることになる。「ことばは有害なもの」話すことで失われてしまう大切な心持ちが記録された半私小説だろう。内容はとてもアメリカン。しゃれたレトリックが映画的で愉快。ただ、この小説の面白みは女性でもシェアできるものなのかわからない。 原文の英語では読めないのでなんともいえないが、山田順子氏の訳がとてもよかったと思う。解説も。

          「スタンド・バイ・ミー —恐怖の四季 秋冬編」〜スティーヴン・キング

          「ノルウェイの森」 〜村上 春樹

          小説って読む歳によってこんなに味わいが変わるかってちょっとビックリしている。 -- 結局のところ──と僕は思う──文章という不完全な容器に盛ることができるのは不完全な記憶や不完全な想いでしかないのだ。 第一章より -- 克明なことよりザックリしないと、記憶はできても言語化した記録はできないってことかな。そういう事。初版当時、恋愛世代現役では見えていなかった青春の骨格が切なくて、楽しめた。

          「ノルウェイの森」 〜村上 春樹

          「クララとお日さま」〜カズオ・イシグロ

          モザイク(ボックス)にぼやけた描写のなかでも「貧富」「知能」「機能」「身分」「時間」と明確に階層化された世界を、ゆれる光模様と心模様で描いたとても映像的なサイエンス・ファンタジー。「二人の計画」「向上処置」「クーティングズ・マシン」「遺伝子編集」「P-E-G9溶剤」など解釈を読者に依存させることでしらずしらずに物語の真ん中に引きずり込まれる。そして私たちは「心」の「ありか」をクララに学ぶことになる。

          「クララとお日さま」〜カズオ・イシグロ