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読書

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枕元に本を置く。物語の続きを夢想し寝るのが好き。だから、とても遅読。
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記事一覧

「オール・ノット」〜柚木 麻子

遠く色彩のぬけた海を背景に、工業地帯のコンビナート、貨物船が斜陽に広がった景色のような作…

はと
1か月前
1

はじめてのスピノザ 自由へのエチカ〜國分功一郎

記憶にないけど「読みたい本」として登録してあったので図書館で手に取った。読み切ってはみた…

はと
2か月前
7

「天才」〜石原 慎太郎

初版で読んだので再読。森元孝氏から「貴方は実は田中角栄という人物がすきなのではないのです…

はと
2か月前
6

「成瀬は信じた道をいく」〜宮島 未奈

偏差値75級の高校から京大へ。高校と違って学んでいる実感があるという。それでも目から鼻へ抜…

はと
3か月前
1

「成瀬は天下を取りにいく」〜宮島 未奈

話題作で地元出身の作家、興味があり読んでみた。全体的に真夏の未明から早朝のような爽やかな…

はと
3か月前
5

「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」〜丸山 正樹

子どもがろう児で日本手話が母語となるよう育ててきたので、ろう社会には多少の知識がある。ろ…

はと
11か月前
6

「街とその不確かな壁」〜村上春樹

読了後、心が混沌としてなかなかまとまらない。「結局なところ」生きることはカオス。酸素の希薄な薄暗く影さえ消えた世界を彷徨うだけ。輝いていた17歳の夏、きみのふくらはぎに張りついた濡れた草の葉の句読点で終わる。それは遠い過去の記憶の中だけにあり、人はそれを滋養に生きていくのだ。1980年に「文學界」に掲載された「街と、その不確かな壁」。句読点のとれた本作は書き直しただけあり、作家の世界観が時間という観念を濾過して滲み漏れでた傑作。

「光のとこにいてね」〜一穂 ミチ

「パッヘルヘブンのカノン」。 追いかけるように輪唱。家庭環境の違う二人の少女の物語が、そ…

はと
1年前
5

「手話を生きる」

もともと遅読な私ですが、さらにじっくりと時間をかけけて読みました。プロローグから胸が高ま…

はと
2年前
1

「1973年のピンボール 」〜村上 春樹

70年のしめった夏が終わり、73年の乾いて冷めた秋にはなにも残っていない。想い出を遡ってもそ…

はと
1年前
18

「風の歌を聴け」〜村上 春樹

眠れない夜にふと思い出す遠い過去の友人に再会したような作品。全体にしめった夏の風のなかで…

はと
1年前
17

「スタンド・バイ・ミー —恐怖の四季 秋冬編」〜スティーヴン・キング

ギャングエイジのルール(おきて)と無意味なこだわり。下品な”ファック動詞”でつながった友…

はと
1年前
8

「ノルウェイの森」 〜村上 春樹

小説って読む歳によってこんなに味わいが変わるかってちょっとビックリしている。 -- 結局のと…

はと
1年前
4

「クララとお日さま」〜カズオ・イシグロ

モザイク(ボックス)にぼやけた描写のなかでも「貧富」「知能」「機能」「身分」「時間」と明確に階層化された世界を、ゆれる光模様と心模様で描いたとても映像的なサイエンス・ファンタジー。「二人の計画」「向上処置」「クーティングズ・マシン」「遺伝子編集」「P-E-G9溶剤」など解釈を読者に依存させることでしらずしらずに物語の真ん中に引きずり込まれる。そして私たちは「心」の「ありか」をクララに学ぶことになる。