書いてて、これ本当の話か?と思うような話

前回の続きの話。一応免罪符のようにつけてみるが、私が体験したような不思議な話。


課長の尻拭いをする日々と、その他にも別の企画を進めていく日々。

課長は自分がディレクターと名乗りたいが為に、それに紐付いて空請求まで行っていた。それを見つけた瞬間に「どうしてだ?」と私が部長に言われて、「いや、こっちのセリフだし、これまで気づかなかったのはどうしてですか?で、どうします?」と聞いた。バカも休み休みにして欲しかった。残念ながら気持ちはどんどん苛まれていった。

ただ目の前で座っているだけの課長の事は、いつも○したかったけど、かなり疲弊しながらもだいぶ慣れてきた。


ただ、これまでのレコード会社やタレント事務所の時と違って、ランチや夜ご飯を一緒にする事は片手で数えられる程度しかなかった。それも優しい同僚の人や、上司との何度かだった。ラインも誰にも一切教えなかった。

それほどまでに、会社の人が無理だった。なぜこれほどまでに無理なのか。1年目であまりにもずっと理不尽過ぎた事が続いた事は大きな要因だ。そして、部長や課長以外にも無理なやつがいるのか、という事だが結論から言えば、大まかにはそうだ。人生で仕事の時間以外に、一切関わりたくない。そうじゃないと仕事を続けられなかった。

この事で、これまでの会社の人はプライベートでも仲良くできている人が多いので、とても有難かったのだという事に気づいた。

今後も部長や課長は出てくるものの、その他の同僚については出てこないのだが、各々でパンチが効いているので軽くご紹介したい。


なんとなく管理部全体での話となるが、管理部の4人は以前の投稿に書いたラジオ体操おじさんを含めて、全員仲が良くなく空気もすこぶる悪かった。

所属している女性2人は、息を吸って吐くように、5秒に一度人の悪口を言っていた。それも、向かいに座っている人に向かっての悪口を言う。それ以外の人の事も言うし、私も聞こえる範囲で言われたりした。

これが意外と、いや意外でもないのかもしれないけど毎日ボディブローのように効いて、自分の脳が冒されていくようだった。毎日毎日呪文のように悪口を聞いている事で、私もこうなっていってしまうのではないかという、仕事とかとは別の恐怖が襲った。

意見ではなく、悪口を言い続ける人の顔は、遠慮なく言うと形の美醜に関わらず醜い。

祝い花の発注と郵便物の配布と電話番しかしないラジオ体操おじさんと何かとミスの多い管理課長は、この女性2人の格好の餌だった。ラジオ体操おじさんはテンパる度に、手のひらで頭を叩いていた。管理課長は女性達から話しかけられても、手で制して無視していた。恐らく彼らも悪口に気を病んでいたのだろう。そして止まらない悪口。嗚呼、ここは地獄か?というような光景だった。

そして状況を近くの席で理解しながらも、管理部長を兼任していた企画部長は見知らぬ振りをして何もしなかった。何なら毎日デスクで居眠りしていた。


私が2年目の時、企画営業部に新入社員の男の子が入ってきた。それ自体が不思議な出来事だった。というのも、この会社ができてから10年強一度も新入社員が入った事がないらしいのだ。

部長も課長も管理部長も、親会社からの出向だった。上司や同僚は会社ができてから契約社員としての入社だった。

この不思議な出来事に関してもすぐ謎は解けるわけで、新入社員は親会社の大得意先の孫だった。大コネだった。無い枠をこじ開けられる程の。

とはいえ、私もまぁ紹介で入っているし、大コネだからといって気も遣い過ぎないので、特に気にしてもいなかった。

彼が着任して早々、ラジオ体操おじさんから電話番の業務が外されて、彼に移った。ラジオ体操おじさんはとても悔しそうだった、なんでやねん。

私の隣の席だった彼は、電話が鳴ってもなかなか取らなかった。オリエンテーションなるもので3ヶ月みっちり教育されているようだったので大丈夫かと思っていたが、そうでも無い様子。「電話取って」と言い、取らせて対応させて電話を終えたので、横を見てみると、

彼の手がブルンブルンに震えていた。

私は「は?ヤク中?」と思って、思わず手を掴んでしまった。10個も上の女が新入社員の手を握ってしまったので、見方を変えたら完全にセクハラだが、そうではなくて震え方にびっくりしてしまった。オゾン・スパイラルでダメなものをやってた奴の震え方だった。


彼は「固定電話を取ったのが初めてで・・・・」と言った。

ジーザス、金持ちは固定電話をこれまで一回も取らない人生なん?と私の方が震えたかった。

私は教育係ではなく、上司が教育係だったのだが、彼はずっとそんな調子だったので上司は途中で匙を投げてしまった。現場で全てにおいてミスをして、できなかったらしい。これにおいては、採る会社も匙を投げる上司もどうかと思っていた。


現場にも連れていってもらえなくなった彼は、私の横で毎日何をしていたか。

それは、タイピング練習だった。もう一度言う。タイピング練習だ。それも約半年。怖いなー怖いなーと思っていたが、来る日も来る日もずっとタイピング練習をしていた。

私もレコード会社に入社したばかりの頃、パソコンが全然触れなくて苦戦していたので、気持ちはわかるものの、さすがに半年は長い。

そして、彼は私を見て言った。「ハタノさん、タイピングがすごく早いので、タイピング検定にすぐ受かりそうですね!!」と。

気を緩めていたら「うるせぇな、仕事しろ、あれやってこい」と言ってしまいそうだったが、ここは一応会社だし、私は教育係ではないし、という謎の制御がかかったのと呆れて「あ、ありがとう」としか言えなかった。言う気力も失せていた。

それでも何度か彼を叱って教えた事があるけれど、彼にとっても不幸な場所だったのかなと今は思う。

彼は、入社前にデキ婚をして、親の援助で家を買っていたけど、1年経たずに退社していった。何が人生の成功なのだろうか、と軽ーく思い悩んだ。


少し月日は経って、管理課長は同部の女性2人からの悪口に気を病み、親会社へ戻っていって、新しい管理課長が来ていた。その管理課長も、最初は部長が連れてきた事もあって何もなかったが、そのうちに以前の管理課長と同じようになっていった。管理部の女性2人はズタボロに悪口を言いまくっていた。

そして、私は現場に出ていたある日。

その新しい管理課長から会社の全員にメールが来ていた。開いてみると、ボーナスについてのメールだった。長時間の現場稼働だったので、空いた時間にメールを開いてみると、親会社からのメールのそのままの転送だった。

2つ添付資料がついていた。両方とも開いてみると、1つは正社員向け・1つは契約社員向けのボーナス付与に関するお知らせだった。

私は先に気づけず両方とも開いてしまった。私が気づけないとか言う前に、分けて送らなければならなかった管理課長がそうしていないし、待遇の差があるものをわざわざ送って来ないでしょう、とある程度信頼もしていた。


ボーナス付与について、正社員は基本給与の3倍、契約社員は0.5倍だった。

正社員と契約社員で対応が違うのは分かる、分かる。分かるのだけど。

私は今日も残業で0時を過ぎてからの帰りで、課長の尻拭いをしている日々で契約社員。

対して、セクハラしてトラブル起こしてお咎めと処分なしで毎日いるだけ・定時退社の課長と、タイピング練習しているだけの人が3倍ですか・・・・・、と気にしてもしょうがないのに、苛立ちがマックスとなった。そして、それをいけしゃあしゃあと何も考えず分けずに全員に転送した管理課長も3倍か・・・・と。

いやぁぁーー、試練の1年だなぁと思った。現場で怒るわけにもいかず、ブラックコーヒーを飲んで遠くを見つめて休憩して、また業務に戻った。

さすがに次の週の会議の際、管理課長に向かって「この会社は、分けて送らなきゃいけない資料を分けて送る配慮もできない会社って事で間違いないですか?」と言った。信頼した私がバカでした、と言わんばかりに。


場がシーンと凍りついた。既にずっと凍りついているのはこっちだったが、これだけでは終わらなかった。



ハタノ

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