モテないのを仕事の立場を利用して解消しようとするのは公害だよね、って話。

前回の続きで、引き続き私が体験したような気がする不思議な話。(事務所編終わりから、ですます調にしていたんですが、うまく話が伝わらない気がするし、しっくりこないので戻します)


私が所属していた企画営業部には、前回話した部長と、いつも指導をしてくれる上司の他に、内勤で契約書関連の進行をしてくれるとても優しい同僚、そして今回の不思議な話の主人公となる50代の男性の課長がいた。

そもそもで会社は老舗の大企業の子会社で、管理部も4人程だったので、会社全員で10名程だった。オフィスは親会社のオフィスを間借りしている形で、親会社とデスクを並べていた。


課長は私が試用期間のアルバイト入社した時に、誰もが知っているような企画を担当していた。

私は基本的に指導してくれる別の上司とのコミュニケーションが多かったので、さほど話す相手ではなかったものの、社歴も長くてすごい人なんだろうなぁ、くらいに思っていた。


ある日残業をしていて、私と課長しかいなかった時。

いきなりふっと、生ぬるい空気が背中にまとってきた。

見ると課長が顔面の真横に迫っていた。課長の腕は、椅子の背もたれと私の背中の間に置かれていた。

真後ろの親会社の部署も、結構人が帰ってしまっていた。


課長は「ハタノちゃん、残業大丈夫?大変そうだね」と言ってきた。

女特有の勘というのだろうか、勘違いと言われればそれまで程度の事だが、ねっとりとして気持ち悪い空気感だった。

自慢にはならないが、私はこれまでレコード会社とタレント事務所で、訴えたらセクハラと認定されるであろう事などをたくさん受けてきたが、それをしてきた相手を擁護するわけではないものの、どれも気持ち悪さがないあっけらかんとしたもの(として受け取るようにしただけかもしれない)だったから、受け手としてもそう思わなかった節がある。

今回は、それに該当しなかった。該当しない!と頭の中で警告音が鳴っていた。

というのも、その人から会社で”ハタノちゃん”と呼ばれた事がない。会社に誰もいないからこその、この呼びかけだという事が丸わかりだった。そして、顔が本当に近い。否が応でも感じるねっとりした粘着さ。

私はその人の方に向く振りをして、背もたれを回して距離を取り、

「あー、大丈夫っす!もう少ししたら出ます、ありがとうございます」と言って、空気を悪くしないように笑顔で遠ざけた。

少し間があった後に、苦笑いをして「そう、無理すんなよ」と言った。

こいつ、、もしかして自分の事キムタクだと思ってる、、、?というようなキザ感だった。普段会社に人がいる時は、こんなタメ口も聞いてこない。

気持ち悪いなぁと思いつつも、残っている仕事を片付けて、その日は帰った。


後日、上司からある事を言われた。

「課長からメールが私と部長宛に来て、ハタノさんから避けられてるみたいで、僕何かしましたか、悲しいっていうメールだったんだけど・・・笑」と。

めめめめっめめめめっめめめ、女々しい。。。。。

私は上司とは仲が良かったので、先日の夜の事を話した。ちなみに上司は女性。その上司も過去に下の名前で呼びかけられたり、慣れ慣れしくされた経験があったようで、その課長のそういう部分は理解していて、2人して苦笑いした。

きっっっっっっっっっっっっっもーーーーーーーーーー笑、と。

ここまでは社内で留まっていたので、まだ笑い話で済んだ。


ある日、課長は担当していた企画を外れ、外出禁止の社内待機となった。その時何があったかは全く分からないが、まだアルバイトだった私と上司でほぼ全ての企画を担当する事になったので、大わらわとなった。

何ヶ月かして社内待機が解かれたが、この時の件は社長と部長と課長と顧問弁護士だけの秘密となっていて、誰も内容を知らないし、大わらわになった私達にも全く説明されなかったのが、今でもとても怖い。

そして、社内待機が解かれた課長は、別の企画の担当となる事になった。過去にも何年かその企画を担当していた事もあったとの事だったので、私は特に何も思っていなかった。その時は。


それからまた何ヶ月かした時に、いきなり課長が長期休暇に入る事になった。理由はうつ病だから、との事だった。部内の全員が嘘だ、と思った。なぜなら、直前に大きいクライアントに嘘をついた事で大きいトラブルを起こしていた。そして、それまでも仲違いしていた部長に、毎日酷く怒られていた。

そして、私は入社して半年が経ったくらいだったが、その課長が担当していた企画が回ってきて、初めて単独で担当する事になった。

前述の気持ち悪い事や謎の社内待機の件で、着々と不信感は抱いていたので、引き継ぎについて与えられた2時間で、かなり進捗を詰めた。だが、引き継ぎでも特に収穫は得られず、私は2週間後にある納品を控えた状態で現場に放り出された。

これまで上司に下である程度学んでいたし、そこまで手を動かす事もないので慌てていなかったが、現場に着いて速攻慌てた。引き継ぎでは出てこなかった色んなものが、ガッサーーーーと出てきた。

今収録しようとしているものの元の著作権に関わる確認を取っていない、大きいクライアントとのトラブルも聞いてた内容と違う、トラブルを話していなきゃいけない人に話していない、起用したタレントの条件を確認していない、、、等、目も当てられないものしか出てこなかった。

そして、上司から信じられない事実も聞いた。この企画を過去に担当していた時に、クライアントからNGをくらって外されていたのに、部長が馬鹿なふりして再度担当させたとの事だった。そしてそのNGを食らった理由が、外部の女性へのセクハラだった。しかも、ある程度敬われる立場を利用してのセクハラだった。それも、ある程度揉み消してもらっていた。


50歳も過ぎて仕事も片付けられないし、仕事とプライベートの境目がなく承認欲求や性的欲求を仕事で満たそうとするクソ童貞迷惑野郎=課長、という認識に変わった。ちなみにバツイチで子供がいる。


大きなクライアントとのトラブルに関しては、関係者全員が怒っていて、私は探偵のように過去のメールを至る所からかき集め、どうしてこうなったかの時系列を立てた。もはやその時職業は探偵に変わっていた。

入社したばかりの平社員が片付けられる範囲を超えていた気がするし、課長のミスを平社員が処理する、、?というのも不思議な話だった。なので、時系列を集めて、部長に説明をした。すると「やっといて」と言われた。


まぁそれまでおとなしくしてはいたものの、さすがに色んな件でカチンと来て、「課長のミスを平社員が片付けるのは失礼だし、こうなったのは部長の管理不足でもあるんじゃないですか?」と言った。

部長は私から時系列の報告書を取り上げ、「俺がわりぃんだろ?うるせえな!かせよ!」と怒鳴った。報告書を強く取り上げられた時に、指が切れた。

指が切れたのも痛かったけど、毎日毎日出てくる課長のトラブル案件に対して、代わりに謝って尻拭いしすぎていて、疲れていた。あまりの出来事に呆れてしまった。


課長が休んでから3週間経ち、ある程度トラブル処理も落ち着きを見せていた頃に、課長は復職した。

私はもう気持ち悪かったし、顔も見たくなかったけれど、会社の全員に復職の挨拶をしているようだった。私と優しい同僚の席の所にも来て「お休みありがとうございました」とだけ言った。

うぉぉぉぉい、てめぇ謝罪わい!と思って、その顔を見た瞬間血の気が引いた。


髪をさっぱりと小綺麗に散髪して、メガネを変えていた。


私は過去に電車に乗れない症状になった事があるのでわかるのだが、うつ病の人は外に出るのも苦痛だし、決定能力もなくなるのだ。

その課長の様子を見て、疑惑が確信に変わって、気持ち悪すぎてゲロ吐きそうになった。そしてブッ○したいくらい憎い課長を、部長は目の前の席に配置した。


ハタノ

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