改竄とコネとラジオ体操の不思議の国

これは私が実際経験した話、だと思います。

というのも、本当の事だったのか夢だったのかは不明なくらい、全て不思議な出来事なのです。でもとりあえず、事務所編の次のお話。


私はそれまで勤務していたタレント事務所を退職して、しばらくニートをしていました。

ただずっとそんな風にしていられるわけもなく、いくつかの企業の求人に応募してみたりしていましたが、私自身真剣じゃないのが伝わってしまったのか、面接後に落ちてしまっていました。
ここでも素直過ぎる自分が仇となっていました。

それからしばらく経った後、友達に紹介してもらったある大企業で、ご縁あって働くことになりました。

それは私がレコード会社時代〜タレント事務所時代の間もずっと疑問に抱いていた、音楽権利周りについて経験の得られる職場だったので、雇ってもらえる事になった事はとても嬉しい事でした。

その後、その会社内で不可思議な事ばかり起きるなど、知る由もありませんでした。

着任してから3カ月は、アルバイト雇用として試用期間でした。

私が配属になったのは企画営業部という音楽制作・楽曲権利の契約書進行をする部でしたが、そんな特殊な仕事を最初からすぐ進められるわけなく、上司について挨拶周りをしたり、上司の担当業務の簡易的な手伝いをする以外は、基本的に会社にいました。

渡された権利周りに関する資料を読んだり、契約書を確認したりしていましたが、レコード会社時代・タレント事務所時代に比べたらとても時間に余裕のある勤務でした。

会社にいる時に、その不可思議な出来事は起きはじめたのです。

同フロアにある系列会社のある外国人のスタッフに
「ねぇ、あのラジオ体操の人は?」
と聞かれました。

私は意味が分からず不思議そうな顔をしていると、別の人が「どこ行ったか分かりません」と言いました。

その時に唯一いなかったのは、管理部に所属している50代のおじさんでした。
3ヶ月経っても何をしているかは不明でしたが、どうやら郵便物の配布と祝い花の手配と電話番だけのようでした。
驚かれると思いますが、本っ当にそれだけなのです。

どうやら昔いた偉い方の息子という事で、“ただいるだけ”の人との事でした。

そしてその人は1日に3回、会社が入っているビル内でラジオ体操をしているとの事でした。ずっとエレベーター前のカウンタースペースでやっていて、来客にバレてクレームが来てからは、非常階段か多目的トイレでやっているとの事でした。それでもラジオ体操は辞めないのです。

私がある日、勤務時間内で時間があり過ぎて、ずっと気になっていた汚い文房具棚を片付けていると、管理部のお局さんから「ハタノさん、そんな事やらなくていい!あのおじさんの担当だから。死ぬほど給料もらってんだから、あの人」と声をかけられました。

どうやら文房具の整頓や補充などもその人の仕事のようでしたが、前述のラジオ体操や仕事の件も踏まえてやるわけがないと思っていたのと、汚い棚は私自身が使いにくかったので、整頓しました。
整頓しながらも、「死ぬほど給料もらってんだから!…だから!…だから!」の言葉が頭の中をずっとこだましていました。

郵便物の配布と祝い花の手配と電話番で高給取り、、、とは、、、?
私は不思議の国にでも迷い込んでしまったのでしょうか。

また別の日、私はある契約書や収支表を見ていて、上司に質問を投げかけました。
「何故あの作品は1000万も制作費がかかっているんですか?リクープのスピードもかなり緩い、、というかほぼ出来ていないように思いますが」と、嫌味等ではなく、単純な疑問として聞きました。

すると上司は苦笑いで、「部長は全然計算ができないから」と言いました。
計算ができない。。。?
私を雇用してくれた人でもあるので余計に何も言えませんでしたが、その後も調べていくうちにその部長やっている作品は、ほぼ全くリクープしてない事が分かりました。

ある日、月1全体会議の月収支表を部長と管理部長が作っている時、私は偶然残業をしていました。コソコソしていましたが、おじさんという生き物は声がデカイので、内容はまる聞こえでした。どうやら、部長の使った60万近い企画に紐付かないただの接待経費を、制作費に入れようとしているようでした。これはほぼ毎月やっていました。

この正しくない月収支表を元に実施する会議意図が、不明で不明で仕方ありませんでしたが、部長が上に説明する為の偽善資料だったようです。
この事は自分が企画を持って制作をし始めると、大きくボディブローとして効いてくる事を、この時はまだ分かっていませんでした。

この部長は、試用期間中の接待会食で私に向かって「早く結婚して、子供を産め」と言いました。私はこれまでの仕事から、そんな事は全くセクハラとして捉えず飄々としていましたが、同席していた上司に「またセクハラで訴えられても知りませんよ」と言われ、思い当たる事があるのか、だんまりを決め込んでいました。

どうやら、過去に同じような発言をして、その時にその発言を受けた子にセクハラで訴えられ、金銭で解決したようです。そして、部長という立場を利用して圧力をかけ、居辛くさせて退職に追い込んだようです。

この時の部長は今、社長になっています。

私はやっぱり不思議の国に迷い込んでしまっていたようです。老舗の大企業の闇を全て幕の内に詰め込んだような、不思議の国に。

ハタノ


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