ものぐるほし

向こう岸の信号が灯台になったり、しませんね

平たいサンダルで濡れたアスファルトの上を進む。裸足を真上から見ていると、ここがどこかわからなくなるのがとてもいい。踏みしめたら、じゅわっと水がしみてきそう。砂浜みたいに。
かかとで弾く残りものの雨が、くるぶしとスカートを濡らしていく。よく眠るためのぶかぶかのTシャツは肩からずり落ちて、前髪の束が視界をゆらゆら遮る。

水たまりを覗いたら、魚が光る列がみえないかな。ガードレールの下をヤドカリが歩いて

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ありがとうございます。うれしいですー。
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そのへんの花たちは真夜中も咲いてた

かかとの裏で鳴らすサンダルのぱたぱたとした音がうるさい。体温を感じる空気に嫌気がさして、星よりも団地の蛍光灯に安心しているし、無理やりつくられた壁の向こうに人間が横たわっていることが恐ろしい。ひんやりした空気が頬を撫でて、星が控えめに瞬いていて、眠る人間の幸せを願ったりして、サンダルのごきげんな音がする、と思えたらよかったよね。

剥がれかけた白線を見つめて、どうしてかズッキーニのスカスカの断面を

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キウイの緑色のものはヘイワード種っていうらしいです。
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フォークとマグカップと蛍光灯とポワレ

フォークとナイフをなんなく使えるかを大切にする人間もいるけれど、フォークたちのほうが人間をよく見ている、ほら、いま彼女何か言いかけたよ、肉なんて見てないでさあ、あーあ、やめちゃった

・・・

紙カップはマグカップがうらやましくて仕方がない、取っ手があるのがうらやましい、だって取っ手を持たない人も印象に残るでしょう、蓋されることも少なくて中身がさあ見えるのもうらやましい、あとどのくらい一緒にいたい

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あ、となりによいことが近づいてるみたいです
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今日は自分に飽きなきゃ

飽きてきた。鏡を見て思う。また君か。このからだも考えも動きかたも、飽きてきた。それなのに、お湯を沸かしてねぎを切って、明日も健やかに過ごそうとしてる。これさ、こないだも考えたんだよ。今から数分で変わるねぎのほうが、よっぽどすてき。

自分に飽きたのをごまかすために、おいしいコーヒーを飲みに行く。代々木公園近くのフグレンさん。22時を過ぎているのに、カウンターの隣のレジでご注文をする人間が次々とやっ

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ありがとうございます、あったかくして出かけてください
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企画タネ「東京消滅」

好き:非現実(ここではないどこか)
現実は辛いことが多いと感じているから、ファンタジーに惹かれることが多い。最近のテーマの一つが”資本主義疲れ”だったから(ちょっと飛躍)、ジブリの東京脱出計画に反応した。そこから連想し、東京消滅を起こりとした企画を考えてみたくなった。

好き「美少女の片思い」

好き:童貞感
”君の名は”の何が良かったかというと、三葉の瀧への片思いにキュンキュンした。自分の中にある童貞感によると、美少女の純粋な片思いに心が洗われるんだと思う。逆に言うと童貞感の弱い人には”君の名は”は、そんなに刺さらないのかもしれない。今まで最も童貞感をくすぐった作品はおそらく”いちご100%”。美少女の恋が実るのと終わるのの、両方があるのがかなりいい。ちなみにハーレム系には惹かれない。ハ

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コミック企画タネ「太陽のスケート」

好き:不可能を可能にする、下から上を目指す
あらすじ:
常夏の国の人々がボブスレーで冬季オリンピックを目指した”クールランニング”のように、亜熱帯の沖縄の褐色の美少女高校生フィギアスケーターが全日本ジュニアスケート選手権優勝を目指す話。

グレープフルーツ

どうしようもなくて、なんにもしたくないあの重さが舌の根っこに引っかかって離れないとき、グレープフルーツの黄色い厚い皮を剥ぎたくなる。大さわぎするほどのことでもない、だあれも悪くないのに自分にだけは悲しいことがあったとき。深夜のスーパーでグレープフルーツを買う。

まな板に置く前に香りを確かめる。はい、爽やかですね。1Kの簡素なキッチンに無表情なひとりぼっち。手にはナイフ。あなたの柑橘の香りだけが華

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あ、となりによいことが近づいてるみたいです
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事件の香り日記

独特の匂いがしますね。異臭というかなんというか……。

傷口を見るに、ある程度は時間が経ってますね。おそらくナイフが使われたのでしょう。あまりに、美しいですから。

現場は階段なのに、損傷も少ないですね。事故とは考えにくいかもしれません。切られた部位も、見当たりませんし。一部だけ遺棄したのか……それも考えにくいでしょうか。

もしかしたら、犯人がまだ凶器と一緒に所持しているのかも。

それより、あ

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わ、ひだりによいことが近づいてるみたいです
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もういい、ほんとに、あなたって人は

いちばん好きなオフィスの音は、遠くで原稿を読む先輩の声。「よ、う、こ、そ、こ、ん、に、ち、わ」と、印刷所にかける前の最終原稿を声に出して読み、間違いがないか探している。一字一字ていねいに読みすぎて、変なリズム。いつもより声が可愛くなる。

何かに真剣に向き合う人は静かなものだと思っていたけれど、先輩はうるさい。あいうえおを覚えたばかりの小さな女の子が、ひとつずつ指をさしては文字を読むようだ。とき

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ありがとうございます。うれしいですー。
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