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『ウルトラマン』シリーズの系譜学①

ウルトラマン生誕55周年 

 2021年はウルトラマン生誕55周年にあたる。

 幼いころより親しんできた、作品がこれまでシリーズとして続いていることに一人のファンとして大変うれしく思うが、ここまで続くにはそれなりの物語群のつながりがあり、これまでの作品が次世代の作品に影響を与えているという点が、親世代と子供世代をつなぐ結果となっている。


ウルトラマンシリーズの沿革

 ウルトラマンは宇宙警備隊の一員であり、ウルトラシリーズは基本的にはこの宇宙警備隊の面々の地球での活躍を描いている。
 シリーズの中には「光の国」とは違うウルトラの星U-40のウルトラマンジョーニアスが登場する『ザ・ウルトラマン』や、平成に入ってから、別次元の地球で活躍する「ウルトラマン平成三部作」とされるティガ、ダイナ、ガイアの物語や『ウルトラマンコスモス』、『ウルトラマンネクサス』などが登場して、ウルトラシリーズのウルトラマンたちは多様化した。

 しかし、重要なことはウルトラマンをはじめとするウルトラ六兄弟やウルトラマンメビウスといったウルトラマンシリーズ作品の大半はこの「宇宙警備隊物語」の作品群であるということである。そしてその他別次元でのウルトラマン作品は「ウルトラマン」という共通のツールを用いたパラレルワールド作品として位置づけられていた。


ウルトラマンゼロが繋いだ新たな世界観

 シリーズにおける大きな転機はウルトラマンゼロの登場によって起こる。2009年公開の劇場版作品『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』において悪のウルトラマンであるウルトラマンベリアルと宇宙警備隊の面々との戦いの中で、ウルトラセブンの息子、ウルトラマンゼロがこの作品で鳴り物入りで登場する。さらに2010年公開の劇場版作品『ウルトラマンゼロTHE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』において、ウルトラマンゼロがパワーアップして時空移動を可能とする。

 この「時空移動」というシステムはウルトラシリーズにおいて、その作品世界に大きな影響をもたらした。
 これまで「宇宙警備隊物語」の系譜であるウルトラシリーズと「ウルトラマン平成三部作」をはじめとする別次元のウルトラマンの物語はパラレルワールドの物語として、次元の壁によって隔てられていたが、この「時空移動ができる」という設定は、それぞれのウルトラマンを「時空移動さえできれば」簡単に客演させることが可能なのである。

 これは、ウルトラマン作品同士をつなぐ大きな架け橋となり「時空移動」というキーワードからウルトラマンシリーズは宇宙警備隊の系譜とパラレルワールドの系譜との大きな隔たりを克服し、より大きな「ウルトラマン作品の系譜」としてつながりを見せた。
 そしてキャラクター商品もそのつながりに乗って多様となっている。近年のウルトラシリーズには歴代ウルトラマンの力を借りて、戦うアイテムが多数登場する。平成後期の作品『ウルトラマンギンガ』『ウルトラマンオーブ』『ウルトラマンジード』『ウルトラマンルーブ』などは、ひとえにこの歴代ウルトラマンの力というアイテムなしではなかなか成立しにくいものになっている。
 この「時空移動」はウルトラマン作品世界をつなげたが、それと同時に大人の事情である商品化のつながりもより強くする結果になった。さらに言えば、この作品のつながりは、大人の事情としては商品ありきの企画構成に大変都合がいいものでもあったのだろう。


さらに広がるウルトラマンシリーズの系譜

 2020年にはウルトラマンゼロに憧れる新米宇宙警備隊員のウルトラマンゼットが登場して人気を博し、やはりというか歴代ウルトラマンの力を借りるアイテムを使って戦った。また現在2021年放送中のウルトラマントリガーは、1996年放送のウルトラマンティガの系譜に沿った作品であることが作中で示唆され、ここでもまた時空移動が登場した。

 ウルトラマン作品群のスピンオフという形式で、新たなウルトラマンキャラクターが生み出され、過去に活躍したウルトラマンと関わりを持って、作品群をより大きなものにしていく。もちろん歴代ウルトラマンの商品化という大人の事情も含めて、宇宙警備隊物語を中心にすえた大きな物語は様々なスピンオフを繰り返して、さらに長いウルトラマン体系を形成していくことだろう。そして歴代ウルトラマンの設定も、その関わりに対応して商品化され続け、大人も子供も知っているキャラクターという存在をより強くしていくのだろう。

 今後もこの系譜と大人の事情は、引き継がれていくことが予想されるが、ここまで大きくなった「ウルトラマン作品の系譜」を考えるに、ファンの一人としては、いつかすべてのウルトラマンたちが作中でそろう姿を、期待してやまない。

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