長谷川ちえ

エッセイスト/「in-kyo」店主。 「三春タイムズ」vol.25〜48が書籍『続・三…

長谷川ちえ

エッセイスト/「in-kyo」店主。 「三春タイムズ」vol.25〜48が書籍『続・三春タイムズ』(文・長谷川ちえ 素描・shunshun)として 2023年春、信陽堂https://shinyodo.netより書籍化されました。前回に引き続き造本装幀はサイトヲヒデユキさん。

マガジン

  • 日記 / in-kyoの縁側

    日々の出来事、季節の風景、ぼんやりと頭に思い浮かんだことなど暮らしの観察日記のようなものをポツリポツリポツリと書き始めてみようと思います。 気軽に腰を下ろして、ご近所さんがやって来れば、お茶でも飲みながら他愛もないおしゃべりもできる憩いの場、縁側。 私が営む雑貨店「in-kyo」の店名にちなんでタイトルを「in-kyoの縁側」と名付けてみました。 さて、その縁側では一体何を目にするのでしょう。

  • 三春タイムズ

    • 49本

    福島県三春町での暮らしや季節の行事、風景など ゆるやかで心地よい時間の流れを 「三春タイムズ」と題して追っていきます。 題字をはじめ、毎回文章に合わせて 素描家shunshunが絵を描き下ろしてくれます。 更新は二十四節気の変わり目に沿って 一年で二十四のお話を綴っていきます。 文・長谷川ちえ 絵・shunshun

最近の記事

宝の山よ~ 10月1日

福島に住んでいるなら一度は登った方がいいと言われる磐梯山。 確かに。 遠くから眺めることは何度もあったというのに、 これまで登る機会がなかったとは。 自分にその気持ちさえあれば、案外と機会はめぐってくるというもので。 先日の日曜日。お店を臨時休業してまで…という 後ろめたさが無くもなかったが、 「エイッ!」という勢いも必要かなと自分に言い聞かせ、 夫とともにKUU先生が誘って下さった町のトレッキング教室に 参加することにした。 これでも東京に住んでいた頃は、よく山へ行ってい

    • いつでもポンと簡単に取り出せるように 9月27日

      1泊の東京出張から昨夜三春へ戻ってきた。 雨が降ったのか、しっとりと地面が濡れていて 草木や土、いろんな自然の匂いがした。 たった1泊だというのにその匂いを胸いっぱいに吸い込んで 「あぁ帰って来たんだなぁ」などと どこかホッとしている自分がいる。 三春に住んでたかが8年、されど8年。 すっかり三春ナイズされたのか。 さすがに疲れて今日こそはダラダラと何もせずに 過ごそうかと布団の中で思っていたが、 秋晴れの空に手招きされるように、起き上がって外へ出たら、 結局庭仕事をはじめ

      • そして私は歳を重ねて 9月21日

        はっ!と気づいたときには 日々がザザザーッと過ぎて9月も後半へ突入。 その間、日記を書けなかったことを悔やむほど 様々な出来事があった。 ひとつひとつを書き留めていれば、微細なそのときの 心情や景色、空気や空の色、音など大事な欠片を とっておくことができたかもしれないのに。 私はそうやってバタバタしているうちに またひとつ歳を重ねた。 55ですよ、55歳。 この年齢を自分でどう捉えたら良いのだろう? 抱負は?などと聞かれたところで恥ずかしながら これといったものはない。 人

        • 台風とやまなしと 8月29日

          ここ数日、ネットで台風情報を 日に何度もチェックしている。 というのも、夫が出張で金沢へ向けて 車で今朝出発。 奈良からは友人夫妻が飛行機で 今日福島に到着予定。 そして私は朝から健康診断。 これは関係ないけれど。 三春は風もなく、暑さも落ち着いて曇り空。 台風の影響といえば今のところ、 湿度が高いくらいだがなんだか落ち着かない。健康診断では問診でいくつか質問をされたが どれも受け答えがぼんやりとしたものになってしまった。 さて検診の結果はいかに。 それもそうなのだが、まず

        宝の山よ~ 10月1日

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        • 三春タイムズ
          49本

        記事

          目が点 8月24日

          半年、もしくは一年に一度、東京からin-kyoに いらして下さるお客様。その方が朝一でご来店。 リネンニットの洋服をご試着されて、和やかに 接客していたそのときだった。 表の通りをたまーに見かけるおじいさんが歩いていた。 するとそのおじいさんはin-kyoの花壇の前で 立ち止まり、何かをし始めた。 接客をしつつ、気になってそのおじいさんを注視すると なんとウチの花壇のユーカリの枝をポキポキ いや、バキバキと折っているではないか! 最初は何をやっているのかさっぱり理解ができず

          目が点 8月24日

          松本から昨夜三春へ戻る 8月23日

          2泊3日の松本滞在から昨夜三春へ戻る。 松本と三春は気候や空気が少し似ている気がする。 が、耳の奥の方では宮下家の子どもたちの声や、 山から聞こえる蝉や秋の虫の鳴き声がこだましている。 普段、木曜日が休みの夫は出張で留守だし、スイとモクは お昼寝中。静かな三春の時間を寂しく感じたりもするが、 これが日常。時間の経過とともに徐々に私の日常へと 意識がスライドしていく。 宮下家の影響を受けて今朝は早起きして庭の草刈り。 朝ごはんは蒸籠で蒸したしっとりふんわりしたパンを味わう。

          松本から昨夜三春へ戻る 8月23日

          松本2日目 8/21

          DM撮影日。 宮下家の子どもたちと一緒に、蒸籠で蒸したパンや 名残の桃、旬のぶどうが並ぶ食卓を囲む。 撮影が始まる前から漆を使った 豊かな景色のある日常が目の前に広がっている。 撮影のときだけではなく、地続きの中の1コマを DMに収める。イメージとしてはそんな感じでDM制作を 毎年重ねている。 『家族の漆』このテーマで開催している宮下さんの個展も 今回で10回目。子どもたちが生まれる前に開催していた 個展のテーマが「ごはんのうれしい漆のうつわ」で2008年から 始まっていて、

          松本2日目 8/21

          毎年恒例の松本行き 8/20

          1年は早いな。 今年もこの季節がやって来た。 12月に開催する個展DMの撮影のために、 松本市在住の漆の宮下家へ写真家・大沼ショージさんと 2泊3日の滞在。 DM撮影という名目だけれど、親戚の集まりのような、 「ただいま~」と久しぶりに田舎へでも帰るかのような。 その年によって訪れる季節は変わったりもしているけれど、 毎年の恒例行事のようになっている。 テーマや方向性は三者でお互い話し合うものの、 撮影はショージさんに全幅の信頼をしているので、 店主としては、現場で何か作業

          毎年恒例の松本行き 8/20

          今日の晩ごはん何にしよう?8月18日

          さてさて。 今日の晩ごはんは何にしよう? そんなことを考えながらの閉店作業。 台風一過の昨日は空の様子が忙しく、 晴れていたかと思ったら突然の雷雨。 今日もそんな天気予報が出ていたけれど、 このまま穏やかに陽が暮れていきますように。 久しぶりに家族3人で来てくれた シゲちゃん一家から家の畑で採れた というナスをたくさんもらった。 というわけで、晩ごはんにナスを 使うことは決まったものの、 ソテーにするか、フライにするか、 はたまた焼きナスか、 麻婆ナス?オーブン焼き?蒸す?

          今日の晩ごはん何にしよう?8月18日

          帰省 8月14日

          窓を開けても早朝からムンッと熱風で跳ね返されるような暑さ。 昨日から千葉の実家に帰省している。 お盆は混むからと毎年時期を外していたけれど、 今年は新盆なので久しぶりにドンピシャのタイミングで 帰省することにした。 覚悟はしていたものの、三春では暑さがひと落ち着き していたからか、思った以上に暑さが体に堪える。 台風を心配して持って来た雨傘を、晴雨兼用を装って 何食わぬ顔で最寄駅からさして帰った。 肌に刺すような陽射しの強さ。背に腹は、だ。 昨夜、迎え盆に行った墓地で、幼な

          帰省 8月14日

          小さなドラマ 8月13日

          今年の木槿は木が成長しすぎて 上の方ばかりに花が咲いている。 もっと近くでじっくりと、  その短い花の命を見届けたいのに。 昨日、 出先で突然激しく雨が降り出して、 (私は傘を持っていたのだけれど) すぐ近くで傘を持っていなかった ご年配のご夫婦が空を見上げながら 雨が上がるのを待っていらした。 すると、その様子に気づいた20代? ひょっとしたら10代?のお若い男女が 「もし良かったらこれ使って下さい! 僕たちはもう1本ありますから 差し上げます!」 と、ビニール傘をそ

          小さなドラマ 8月13日

          あっという間に日が暮れて8月3日

          暦は早くも大暑の後半。来週には立秋になるだなんて噓のよう。 毎日厳しい暑さ。私が三春に引っ越してきたばかりの頃、 今から8年ほど前の夏は、昼間がどんなに暑くても、 夕方になればスーッと涼しい風が吹いて、自宅にエアコンが 無くても過ごせるほどだった。今では考えられないことだが。 この暑さの中でもご来店下さるお客様がいらっしゃることに 感謝しかない。 今日は東京からいらして下さった方も。 蔵前にお店があった頃にも何度か足を運んで下さっていたとのこと。 「どこか蔵前にあったお店の

          あっという間に日が暮れて8月3日

          夏野菜のいただきもの 7月31日

          ご近所さんから朝一番、たくさんの夏野菜をいただいた。 「全部さっき採ったばかりなのよ。 トマトはヘタも取って洗っておいたから」 ビニール袋にいっぱいの夏野菜。 ちょうどあんざい果樹園の桃が家にあったから すぐにお返しすることができた。 美味しいものの物々交換。 美味しい・嬉しいがすぐ近くでグルグルと循環。 なんて清々しい一日の始まりなのだろう。 早速袋から取り出してみると、ナスのヘタやキュウリが チクチクしていて新鮮そのもの。 どれもピカピカ輝いてプリッとした姿は健やかで美

          夏野菜のいただきもの 7月31日

          招き猫 7月30日

          ここ数日、in-kyoにはご年配の方のご来店が増えている。 それもはじめていらしたという方がほとんど。 どうしてだろう?と不思議に思って訊ねてみると、 昨日いらした方からは 「スイちゃんとモクちゃんのお母さんでしょ?」と。 そうか!新聞連載の記事を見ていらして下さったのかと ようやく合点がいった。 「すみません。スイとモクは自宅で涼んでいるところで。 ここにはいないんですよ」 私が答えると、そんなことは承知の様子。その方は記事を読んで 以前に飼っていた猫のことを思い出している

          招き猫 7月30日

          客人のひと皿

          *漆の器と人参のポリポリ春巻き  結婚を機に、暮らしと仕事の場を東京から福島県の三春町へと移して、今年で8年の月日が経ちました。三春町で暮らす我が家には、東京をはじめとした県外から友人たちがよく遊びに来るようになりました。私が営む器と生活道具の店「in-kyo」で取り扱う器などの作品をつくる作家たちも展示期間中に滞在したり、ライブイベントを行うミュージシャンとは小さな打ち上げをしたりということも。こうしたことは東京での暮らしとの大きな変化のひとつかもしれません。  近くには

          客人のひと皿

          香りの誘惑 7月20日

          今日は朝から湿度も気温も高かった。 どうやら最高気温は32℃もあったようだ。 それでも三春の空気は、陽が沈めば一日の暑さを リセットするかのようにサーッと涼しい風に変わる。 夜道(といってもPM7時頃)を歩いていると、道の向こうに またもや富士子の姿を発見!こんなところまで行動範囲なのだろうか? と思うほど、我が家からはだいぶ離れている場所。 私になど目もくれず、スタスタ歩いている。 やっぱりムーンのようだ。 涼しくなって富士子もさぞかしホッとしていることだろう。 私は重

          香りの誘惑 7月20日