【劇評339】初代萬壽の一門の隆盛を願う気持ちが伝わってくる『山姥』
時蔵が萬壽となり、名跡を梅枝に譲ると聞いて、ある種の感慨に捉えられた。
子供時分はいざしらず、歌舞伎を自覚的に観はじめたとき、当時は三代目梅枝を名乗っていた可憐な女方に心惹かれた。私よりはひとつ上で、同世代意識もあった。同じ年代の勘三郎、三津五郎が五十代でこの世を去ったこともあって、私にとって、萬壽と彌十郎が同じ時代を生きてきたと、共感できる役者となった。
六月大歌舞伎は、初代中村萬壽、六代目時蔵、五代目梅枝の三代が襲名する。あわせて、獅童の息子二人、陽喜、夏幹が、梅