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【劇評325】歌舞伎役者の宿命と伝承を思う。初春大歌舞伎。夜の部。

 新年はなにかと慌ただしく、歌舞伎座を見に行くのも遅くなり、劇評も滞ってしまった。お詫びを申し上げます。

 夜の部は、『鶴亀』から。こういったご祝儀狂言に理屈はいらない。福助が舞台に立ち続けていること、それを寿ぐ幸四郎、松緑、左近、染五郎の気持ちが伝わってきた。
 それにしても、歌舞伎というのは、血縁で結ばれた大家族であることを思う。そして同時に、同じ世代に生まれれば、当然、藝はもちろん人気を競わねばならぬ。幸四郎、松緑は、今歌舞伎の中核にあり、次を担う左近、染五郎の懸命さが胸を打つ。

 福助は、自由になる身体を駆使して、正月のめでたさを醸し出している。生涯、舞台に立つことを宿命づけられた歌舞伎役者の意気地をみた。

 さて、正月といえば『対面』である。
 梅玉の工藤、扇雀の十郎、芝翫の五郎。そして、魁春の大磯の虎、鬼王に東蔵がつきあっている。現在の歌舞伎界を網羅した配役だけれども、祝祭感に乏しいのはなぜだろうか。『対面』のような演目は、世間と歌舞伎界の関係を微妙に反映するのかもしれない。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。