長谷部浩のノート お芝居と劇評とその周辺

菊之助が大阪で『六歌仙容彩』を踊る。

 『六歌仙容彩』には、思い入れがある。
 今はなき坂東三津五郎の取材を重ねていた頃、『京鹿子娘道成寺』とともに『六歌仙容彩』には、身をいれて話を聞いた。『坂東三津五郎 踊りの愉しみ』(岩波現代文庫)には、そのときの聞書きが収められている。

 三津五郎襲名のときは、この『六歌仙』のなかで、もっとも仁に合っていた『喜撰』を踊った。平成二十一年八月には、この『喜撰』を含む五本の踊りを、ひとりで踊った。

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泣き言はいわないように、がんばります!!!

野田秀樹の発案で生まれた東京キャラバンin駒沢が中止になった。2015年に行われた駒沢での公演についての原稿を再録します。

 今日になって8月21日〜22日に予定されていた東京キャラバンの中止が発表された。東京都の感染拡大の劇的な急増、医療態勢の逼迫が近づくなか、賢明かつ冷静な対応だと思う。2015年の同地で行われた公演の批評を再録する。当然、この時点では、東京オリンピック2020が延期になり、現在のような状況になるとは、誰も予想していなかった。

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 昨

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希望を語ります!

野田秀樹が描いた幻のオリンピック。『エッグ』劇評14枚。

 劇作家・演出家・俳優の野田秀樹には、幻のオリンピックを描いた名作がある。2012年に東京芸術劇場で初演された「エッグ」である。
 ここでいう東京オリンピックは、一九六四年に開催された東京五輪ではなく、一九四○年に東京市で開催される予定だった夏季オリンピックである。
 欧米以外ではじめて開かれるオリンピックとなるはずだったが、日中戦争の影響で日本政府は、開催権を返上した。幻のオリンピックであった。

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おもしろい記事を書いていきます。

時間との闘い。音羽屋関連の本を集めて。

 資料を揃えるために、時間も労力もお金も惜しんではいけないと思ってきた。回り道もしたし、無駄と思える投資もしたけれど、古書店、新刊書店をとわず、お世話になってきたと思う。

 ただ私は、あまり収集癖はない。資料として読めればいいので、美本などを揃える趣味はもたなかった。今、進めている音羽屋の仕事のために、「菊五郎の色気」(文春新書)以来、久し振りに関連の本を手元に集めている。東日本大震災やその後の

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希望を語ります!

【劇評233】海老蔵の「北山櫻」。超特急なれど、実質あり。

 海老蔵の行方が気になっている。

 團十郎襲名が、コロナウィルスの脅威によって延期になり、まだ予定も発表になっていない。歌舞伎座出演から遠ざかって、二年。海老蔵が第三部に用意したのは、『通し狂言雷神不動北山櫻』である。
 筋書によれば、昭和四十二年一月、二代目松緑による復活では、五時間二十一分。平成八年一月、十二代目團十郎による通しでも、五時間一分。現行にもっとも近い平成二十一年一月の海老蔵によ

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勝手なことを書いていますが、どうぞ見守ってください。

【劇評232】歌舞伎座第二部、七月は白鸚の『身替座禅』の内省。菊之助の『鈴ヶ森』の気迫。

一年のうち、もう半分が過ぎたのか。
 終息の気配が見えないコロナウィルスの脅威のなか、懸命の興行が続く。
 歌舞伎座の七月大歌舞伎、第二部は、白鸚、芝翫の『身替座禅』に、菊之助、錦之助の『御存知鈴ヶ森』が並んだ。

 まずは、『身替座禅』。白鸚の山蔭右京が初役とは驚いた。年表を見ると十七代目勘三郎を相手に、初代白鸚(八代目幸四郎)は、玉の井を昭和二十六年に立て続けに勤めている。
 ともあれ、白鸚の

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泣き言はいわないように、がんばります!!!

『フェイクスピア』を演じた役者たち。白石加代子、橋爪功、野田秀樹、高橋一生、前田敦子らの演技について考える。九枚。

 声が空間に屹立している。

 野田秀樹作・演出の『フェイクスピア』も、ようよう七月に入って、大阪での大千穐楽も射程に入ってきた。
 すでにこのnoteに二度に渡って書いたが、劇の後半、航空機事故とヴォイスレコーダーが要にあるために、劇評を書くにもためらいがあった。戯曲も初期の野田作品を思わせる難解さだったので、その解読に紙幅を使っていた。

 そのために、出演の俳優論に筆が及ばないきらいがあって

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明日は、今日よりいい一日になりますように!

【劇評231】岡田利規『未練の幽霊と怪物 —「座波」「敦賀」—』は、舞と音と謡がねじれ、からみあう。瓦解する巨人としての日本。十二枚。

 「構想」という身体 複雑かつ堅牢であったはずのシステムが、崩壊していく。

 岡田利規作・演出、内橋和久音楽監督の『未練の幽霊と怪物 —「座波」「敦賀」—』は、能楽の形式を借りて、死者を呼び出す。ここでは、死者とは必ずしも、人間を意味しない。

『座波』の後シテは、国立競技場の設計者に内定していたザハ・ハディドであるが、『敦賀』では、核燃料サイクル政策の亡霊とされている。岡田の独創は、過去に生き

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【劇評230】博多座の菊之助二題。『与話情浮名横櫛』と『身替座禅』の出来やいかに。八枚。

 博多へと旅立つ 六月博多座大歌舞伎、緊急事態宣言下の博多を訪ねた。

 飛行機を予約するときから、現在が「緊急事態」であると知れた。羽田、福岡は、幹線だと思うが、大半の便がのきなみ欠航となっている。そのため、登場した便は、空席などなく、満員御礼の三密状態で、航空会社が極限まで追い詰められているとわかった。

 ホテルにつくと、カフエテリア以外のすべてのレストランが閉鎖されている。オールデイと名の

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勝手なことを書いていますが、どうぞ見守ってください。

【劇評229】井上ひさし作、小川絵梨子演出の『キネマの天地』は、スタアの神秘性を剥ぎ取る。六枚。

 スタアの神秘性を剥ぎ取る。
 井上ひさしの『キネマの天地』は、小川絵梨子の演出によって、新たな視点が導かれている。

 昭和十年、第二次世界大戦までまだ、間がある。自由の風は、当時、絶頂であった映画界を吹き抜けていた。

 松竹キネマ蒲田撮影所の四人の女優、大御所から若手花形まで。娘役の田中小春(趣里)、野性味あふれる人気の滝沢菊枝(鈴木杏)、母親役で当たりを取る徳川駒子(那須佐代子)、トップス

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