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クリエイティブリーダーシップ特論:2021年第9回 Code for Japan

この記事は、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコースの授業である、クリエイティブリーダシップ特論の内容をまとめたものです。
 第9回(2021年9月6日)では、Code for Japan 代表理事の関治之さんから「バザール」型の行政や自治体における課題解決(デザイン)についてお話を伺いました。

Code for Japanとは…

 Code for Japanは、2013年10月25日に設立された一般社団法人である。Code for Americaの事業を参考に立ち上がり、日本独自に発展してきた活動である。これまで依存しがちだった公共サービスを、市民が主体となり自分たちの力で、そして「技術」を活用して課題解決するコミュニティ作り支援や、自治体への民間人材派遣などの事業に取り組む非営利団体である。

VISION
ともに考え、ともにつくる社会

MISSION
オープンにつながり、社会をアップデートする

 また、Code for Japanの行動指針は以下の3つである。

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関治之さんとは…

 関治之さんは、1975年生まれであり、もともとSEとしてシステム開発に従事し、2011年3月、東日本大震災発生の当日に震災情報収集サイト「sinsai.info」を立ち上げる。その後、住民コミュニティとテクノロジーの力で地域課題を解決する「シビックテック」の可能性を感じ、2013年10月に一般社団法人コード・フォー・ジャパンを設立し、代表理事を務める。以降、「オープンな技術でよりよい社会をつくる」ことをテーマに様々な活動を展開している。合同会社Georepublic Japan 代表社員/CEO、デジタル庁プロジェクトマネージャーなども勤める。

技術は人を幸せにするのだろうか…

 関さんが常に考えてきことがある。それは以下の問いである。

技術は人を幸せにするのだろうか?

 2011年の震災時に震災情報収集サイト「sinsai.info」を立ち上げたものの、現場では、そもそも電力がなく、インターネットが使えず、本当に役に立ったのだろうか、という思いがあった。また、技術により格差や差別が助長される可能性があるのも事実である。それらのことをふまえ、関さんは上記の思いを巡らせてきたとのことである。

 まず、関さんが取り組んだのは行政や自治体における共創のためのシステムをデザインすることであった。その際に関さんが参考にしたのが、エリック・レイモンドの『伽藍とバザール』であった。伽藍とバザールにはそれぞれの特徴があり、行政や自治体では主に伽藍のやり方であった。そこで、関さんは、バザールの仕組みを取り入れることで、行政や自治体における共創のためのシステムをデザインして来たのである。
       <伽藍>   ← →   <バザール> 
綿密な計画、堅牢な設計   ← →   変更を受け入れる
       中央集権   ← →   自律的な小集団 
   長いリリース期間   ← →   早めに細かくリリース

その後、様々な活動を通じて、いま、関さんは以下のように考えている(望んでいる)。

技術は人を幸せにする
ただし、正しい目的に使えれば

 では、どうしたら正しい目的に使えるのであろうか。

アジャイルガバナンスとは…

 次なる関さんの問いかけは以下のものであった。

行政のアジャイルプロジェクトが失敗するのは、
ガナバンスモデルが正しくないせいでは?

 そして、いま、アジャイルガバナンスに取り組んでいる。関さんによると、アジャイルガバナンスとは、「環境・リスク分析」「ゴール設定」「システムデザイン」「運用」「評価」「改善」というサイクルを、マルチステークホルダーで継続的かつ高速に回転させていくガバナンスモデルである。

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 上記のアジャイルガバナンスでは個人やコミュニティの参加も想定しており、デジタル技術の活用により、多様な市民が参加できてより高い正当性と反省性を持つ話し合い(熟議)による民主主義の実現(参加型熟議民主主義)が可能となるのである。

授業にて特に印象深いことは...

 関さんの言葉で一番印象深かったのは、「当初、正しいことをしようと頑張っていたが、正しいことではなく楽しいことをするのが大切と気がついた」という言葉であった。Code for Japanでは、オープンに繋がり社会をアップデートする活動をしている。そこでは場をつくり、プロジェクトを組成し、知識を共有し、また場に還元する、というサイクルが行われている。

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私としては、このサイクルをどのように回すのか、という点が気になった。関さんからは参考事例として、様々な活動の紹介があった。特に自分達で生み出している活動では、最初にできる小さなステップを考え、そして、楽しさを持つことを大切にしているとのことであった。そして、仕事と割り切る案件に対応する一方で、全てを成功させようとせず、失敗を恐れず、多くを生み出して多くをボツにする(多産多死)の考えを受け入れる土壌も大事であるとのことであった。楽しさを持つ、という視点は、前回の安斎さんの「遊び」とも同じ観点であり、人間の創造性における遊びの観点の重要さを再び学び、日々業務に追われて忘れないようにしたいと思う。


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