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前十字靭帯 〜解剖学と機能〜

今回は前十字靭帯の解剖学と機能についてです。

前十字靭帯について理解を深めることはトレーニングを導入する際にも非常に大切になります。

前十字靭帯の特性を理解しないままの運動療法は症状を悪化させるリスクもあります。

前十字靭帯(ACL)損傷の概要についても参考にしてください↓↓


前十字靭帯の解剖学


前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament:ACL)は、脛骨高原の前顆間区のくぼみに沿って付着します。この付着部から、斜め後・上・外側方向に走行し、大腿骨外側顆の内側に付着します。

ACL内のコラーゲン線維は互いに織り合わされ、おもにⅠ型コラーゲンからなる別々の螺旋状の束を形成します。

ACL内に2組の線維束、脛骨に対する相対的付着部により命名された前内側線維束および後外側線維束があります。

前十字靭帯の機能

ACL内の線維束の張力、ねじれ、および全体的な空間的配置は、膝関節が屈曲したり伸展したりすることで変化します。

屈曲‐伸展の可動域全体においてACLの一部の線維は比較的緊張しています。とくに後外側線維束は、膝関節が完全伸展に近づくにつれて漸増的に緊張します。この線維は、膝関節が屈曲するにつれて弛緩します。

前十字靭帯に加えて、後方関節包、側副靭帯の一部、膝関節屈筋群も伸展につれて相対的に緊張し、特に、荷重時に膝関節の安定化を補助します。

膝関節完全伸展までの50〜60°のあいだ、大腿四頭筋の収縮によって発生した能動的な力は脛骨を前方に引き出し、前方滑りの関節包内運動が起こります。この時、ACLに張力が発生し、前方滑りが行き過ぎないように防いでいます。

前十字靭帯の検査

前方引き出しテスト(anterior drawer)は、膝をおよそ90°に屈曲した状態で脛骨の近位端を前方へ引き寄せます。この検査では、膝の前方への緩みがどの程度であるかを評価する検査です。

前方引き出しテストと大腿四頭筋の収縮によるACLにかかる前方への力は類似しています。

正常では、脛骨の前方移動に対する全受動的抵抗の約85%をACLが担います。対側膝より8mm以上大きい前方移動は、ACL断裂の可能性を示唆します。

ハムストリングスの防御的な筋スパズムが生じると、脛骨の前方への移動を制限し、それによってACL断裂の発生を見逃すことがあります。

前十字靭帯と大腿四頭筋


大腿四頭筋は「ACLの拮抗筋」とよばれます。比較的少ない屈曲角度で大腿四頭筋の収縮力がACLの大部分の線維を伸張します。

膝関節屈曲15°で、大腿四頭筋の最大努力での等尺性収縮ののちに、前十字靭帯の4.4%の歪みが生じたと報告されています。

大腿四頭筋がACLを伸張する力は、脛骨に対する膝蓋腱の付着各が最大になる完全伸展位で最大になります。この腱の付着角が大きいほど、大腿骨に対して脛骨を前方へ滑らす大腿四頭筋力の割合が大きくなります。

膝関節の屈曲が大きくなるにつれて腱の付着角は徐々に減少するため、脛骨を前方に滑らせてACLを引き伸ばす力は低下します。

ACL損傷を引き起こすメカニズムや術後に修復または再建したACLを保護する方法を検討するとき、ACLを伸張する要因を理解することが大切になります。

まとめ

・前十字靭帯は前内側線維束および後外側線維束に大別される
・膝関節が完全伸展に近づくにつれて緊張する
・膝関節伸展時の前方滑りを制動する
・前方引き出しテストと大腿四頭筋の収縮によるACLへかかる力は類似する
・膝関節が屈曲すると大腿四頭筋の収縮によるACLへの力は低下する

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今回の記事は以上になります。

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