【ミニ社長塾 第9講】年収が増えると嬉しいのは○○○万円まで!? 科学で見る「お金と幸せ」とは
おつかれさまです!
中小企業診断士で、社長の後継者に【徹底伴走】するコンサルタントの長谷川です。
今回も先日社長塾で行われた企業視察会の話題からなのですが、社員の方々との意見交換会の中でこのような質問がありました。
「会社に求めていることはなんですか?」
2人の社員の方々が回答されたのですが、それが「求めることは特にありません」だったんです。
ある方は「自分がやりたかったことができているから不満は少ない。何か問題があるなら、それをどう解決できるかを一人一人が考える会社だから。」と言われ、また別の方は「『こうしてほしい』と思うことがあれば自分が動きます。」ときっぱり答えられまして。すごい自律性だな、と驚きました。
金銭的にも非金銭的にも満たされた状態であるのは、まさに「愛される会社」だと実感しました。
一方で、ある人材会社が行った「会社に改善してほしいこと」に対するアンケートを見てみると、トップ3は以下の通りです。
1.給料アップ
2.出産・育児に対する待遇
3.上司を変えてほしい
経営者の皆さまにとっては給料は支払うものですので、社員の給料アップの要求に対しては冷静に考えなければならないところだと思います。ただ給料を上げればよいのか、あるいはトータルリワードの考えで非金銭的報酬とのバランスをどのくらいで取っていくのか、様々考えることがあります。
そこで、今回はお金と幸せについて、アメリカの研究結果をご紹介させていただきます。色々とお伝えいたしますが、皆さまの経営の一助としていただけますと幸いです。
1.お金のもたらす幸せには限界がある
いきなり強烈なサブタイトルですが……
財務アタマの自律促進思考の中に「社員への利益還元」というものがあります。利益が生まれたら、その利益を獲得するために力を貸してくれた社員に対して「感謝の気持ちを表す」意味で社員へ還元している会社ほど伸びています。
社員への給料は、労働に対する対価であり、仕事量や勤務時間などと見合っているかどうかが仕事のモチベーションに大きく左右してきます。生活していく上で、収入は欠かせませんからね。
では、給料が高ければ高い方が良いのかという話なのですが、ここでアメリカ プリンストン大学のダニエル・カーネマン名誉教授とアンガス・ディートン名誉教授のお金と幸福感に関する研究を紹介します。
この研究結果によると、自分の人生にどのくらいの価値や意義があるのかという自己評価は収入が増えるにつれて上がっていく、というのです。ところが、その相関は年収が800万円までで、それ以上になると相関がなくなってくることが分かったのです!
ただし、この研究論文は2010年のものですので、当時とは物価や消費動向が違ってくるため、金額には変化があるとは思います。しかし、重要なポイントは「お金のもたらす幸せには限界がある」ということです。限界を超えると、収入以外の個人差が幸福感を左右するようです。
2.重要になるのは、やはり働きがい?
社長塾でお伝えしていることのなかに、経営者が追い求めなければならないものが業績と働きがいの両輪である、というものがあります。
一日の3分の一働いている成人にとって、仕事は非常に大きな意味を持ちます。仕事に対して自分なりの意義を感じられれば、幸せを感じることができるのですから。
働きがいには、内発的なものと外発的なものの2面あります。内発的なものは自己成長や「仕事をやり切った」といった有能感など、外発的なものは「給料」「地位」「昇進」などの評価や「ありがとう」という感謝もそうです。
どの部分に自分なりの意義を感じるかは個人差があるかもしれませんが、幸福感が高いのは一般的には他者貢献です。
気持ちよかったり喜んだりしているときに活性化される脳の部分は「報酬系」と呼ばれており、人にお金を上げたり人助けをしたときには報酬系が活性化されることが研究で明らかとなっています。また、自分がしたことの結果を、ハッキリと理解したり実感したりすることで、より生きがいと幸せを感じることもできます。
ちなみに、人のためになることで得られる人生の意義による幸せ感を持っている人は、免疫力が高く健康的にも良いそうです。
3.経営者の仕事とは……
「経営者の仕事って何ですか?」と聞かれると、お答えが結構難しいのですが、間違いないのは「集めること」だとは思います。
事業を動かすために「予算」を集めますし、運営し商品やサービスを提供するためには「人(社員)」を集めます。また、提供先である「お客様」も集めなければなりません。
そして、何事も「調達→投資→回収」のサイクルです。このサイクルを強く、大きくしていくことが財務視点での経営の表現なのですが、そのためには「社員の成長」が欠かせません。
「自分の取り分は自分で取りに行く!」という主体性に溢れた社員の考え方があるのは、「強くて愛される会社」にある面で共通しているものだと思います。
その背景には、働きがいが大きな力の源泉となっています。なぜならば、自分の活動が活発になればなるほどお客様への貢献度を強く感じることができる仕組みがあるからです。(例えば、サンクスカードやお客様の直の反応を見れる環境づくり)
仕事を通じて社会から必要とされ、世の中の役に立ち、「ありがとう」と感謝される。生きる幸せを実感できるのは、仕事を通じた働きがいによるものだと、お伝えしてきました。
また、社員教育も見逃してはならないところです。教育があるからこそ、社員の幅が広がり、人のためになる新たな行動を起こしてくれます。その結果、新たな利益を生むことができ、好循環が生まれています。まさに、調達→投資→回収のサイクルですよね。
今回の話をまとめますと、
・年収が高ければ高い方が良いか、というと実はそうでもない
・人の役に立つことで働きがいを感じられると幸福感が高い
・調達→投資→回収を意識したお金の使い方を社員教育でも意識する
となります。
今回はここまでです。
また、次回の【ミニ社長塾】も、どうぞよろしくお願いいたします。
※今回の参考文献は「スタンフォード式 生き抜く力」(ダイヤモンド社)です。
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