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仲間とのモノづくりで、コミュニケーションにモヤモヤを感じはじめたら

1. 3つのタイプの対人関係のもち方

 アメリカの心理学者ジョセフ・ウォルピ(Joseph Wolpe/1915-1997)は、対人関係のもち方について、
①自分のことだけを考えて、他者への思いやりが無いタイプ
②自分よりも他者を常に優先して、自分を後回しにするタイプ
③自分のことを考え、同時に他者にも配慮するタイプ
の3種類に分類しました。
 その時の事情や表現の程度はありますが、自分はどのタイプにあてはまると思いますか?
 ①②③それぞれについて、「そういうものだろうな…。」と、観念的には理解ができると思いますが、③の“自分のことを考え、同時に他者にも配慮する”は、実際のところ、どの様な言動が相当するのか掴みにくい部分もあると思います。
 そして、チームでの共同作業や仲間との作品制作も、力を合わせて何かを成し遂げるのだから、③の“自分のことを考え、同時に他者にも配慮する”が行われているのだろう、と言っていることは分かりますが、いざ、意見の食い違いが生じて感情的になった時、どう振舞って良いか難しい場合があります。

 振り返ると、①になったり②になったりして、自分の表現の仕方について沢山の反省をしました。また、講師で学生さんと接している中でも、同じ様な思いをしている学生さんに良く出会います。一所懸命、熱く取り組むあまり、結果的に自分の考えを押し通そうとして、他者の意見に耳を貸さなくなってしまったり、仲間との関りを意識しすぎて、自分の気持ちを抑え他者の意見や考えを優先して、自分を後回しにしてしまったりするのです。そんな学生さんを見ていると、自分の気持ちや考えを伝え、同時に他者意見も受け取り、他者とうまくモノごとが出来たら、もっと笑顔になれるだろうな、と思います。

 この点において開発された<アサーション>があります。これは、1950年代に心理療法(行動療法)の中から生まれ、自己主張が苦手な人を対象としたカウンセリング技法として活用されてきました。現在では、広く日常生活の中で対人関係スキルのトレーニングとして、教育機関、企業、社員研修など幅広い分野で、コミュニケーションスキルとして活用されています。(平木典子『アサーション・トレーシング さわやかな<自己表現>のために』2008年、部分引用)

 演劇や舞台芸術は、自分の意見や考えを大切に表現し、同時に、共同制作者の意見や考えも尊重して受け入れる態度が求められる芸術活動です。しかし、その理解が無かった筆者は、舞台芸術を始めたころ、自分の想いだけでは作品が完成しないこの芸術活動を、複雑な心境で行っていました。それが、活動を継続するうちに相互を尊重するという考え方と自然に向き合う様になり、そこに含まれている他者との関わり方に興味を持つようになりました。
 そこで、仲間とのモノづくりでのコミュニケーションについて、<アサーション>の観点から一つの例として<演劇・舞台芸術活動>を眺めてみました。

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