【短編小説】 藍を演じる④
五、清廉潔白
屋敷に通い始めて数ヶ月した頃、わたしは今まで通されたことのない屋敷の敷地内にある母家とは別の離れに呼ばれた。その離れは日当たりはいいが、足を踏み入れた瞬間どこか重苦しい空気が漂っていた。
「話すかどうか迷ったが、わたしはお前を信用している。そしてお前の占術は的確だ。だから今日、ここに呼んだのだ。」
主人は恰幅が良く、仕立てのいい漢服がよく似合う、声の大きい豪快な人物だったがこの日の主人はひと回り小さく見えた。
「奥で休んでいるのは、わたしの大切な一人息子だ。実