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息子は陽気なアーティスト

息子はよく、こんなことを言います。
「それアートに使うからちょうだい」

家では、捨ててしまいそうなものを見つけると。
外では、持って帰っても大丈夫そうなものを見つけると。
入院中も病院食のパッケージや、ちょっとしたゴミになってしまいそうなもの、退院時には胸の中に埋めていた抗がん剤治療のためのカテーテルまでもらいました。

これ、初めて聞く相手はたいていポカンとします。
「え?!あーと、、、、??なに?」となります。
3歳の子とアートという言葉が、最初はまるで繋がらないのです。
その姿に、いつもニヤニヤしてしまいます。
その後、説明役として息子のアートを見せて説明すると、
やっと子供とアートという言葉が頭の中で繋がって、
その可能性を楽しんでくれます。
いつもその変化を想像するとニヤッとしてしまうのです。

自分の息子が褒められる嬉しさではなく、
子供とアートのつながり、
子供の表現力の可能性、
そんなものを大人が感じてくれることが楽しいんです。

そもそも始めようと思ったのは、
息子が2歳の頃、まだガンになるずーっと前です。
保育園に行くようになって、工作の時間で作ったものが壁に飾られてるのを見てからです。
壁には大勢の子供の作品が並んでいました。
全て同じ形で、同じ色でできていました。
正解が決まってて、その通りに作るようなものでした。

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それを見て決めたことは、
息子の持つ感性をそのままに大きく育んであげることでした。
そのために、
表現は自分の思うままに好きにしていい、正解なんてない、
そんなことを伝えたいなと思いました。

きっとこれからは、
正解を導く力よりも、自分の感性を信じてそのままに表現する力がもっともっと大切になり、
誰にも文句を言われないよう当たり障りなく正解を追ったり探したりして生きていくよりも、
そのままに自分を表現することで、それを好きだと言ってくれる仲間と繋がっていくほうが楽しいだろうなーと思います。
なので、もっともっと息子らしさを一緒に育んでやりたいなと思いました。

もちろん、保育園での活動それ自体は
先生たちが限られた時間の中で色々工夫してくれてるのだとも思いますし、
それ自体を息子も楽しんでいます。
なので、僕たちが息子自身の感性を伸ばすことをプレゼントしていってあげようと決めました。

その日から、息子は陽気なアーティストになりました。
初期は本当にシンプルな作品からスタートし、
どんどんいろんな材料や表現を一緒に探し、遊ぶように作っていきました。
大人ではためらってしまうことも、おもいきりよく表現します。
大人では選ばないような色の組み合わせや、材料の組み合わせもします。

そして、その創造は長期の入院中にも続きました。
毎日狭い空間の中で過ごすことも多い日々、
楽しめる遊びもたくさんあるわけではなかったですが、
本当に毎日のようにアートやものづくりをしていました。
電車に乗ったり、ピクニックしたり、魚釣りしたり、飛行機で空を飛んだり、ロケットで宇宙に行ったり、そんなものを描いてつくっていました。
見えているものや場所に縛られず、病院では無理だと思っていたことを軽々やってのけます。
息子の頭の中は宇宙のように広い想像力を持っています。

そこには大人たちの優しい応援もあってこそでした。
絵の具やいろんな材料で手や部屋を汚すこともありましたが、病院の皆さんは温かくそれを見守ってくれました。
いつもたくさんの愛情こもった言葉で応援して、楽しんでくれました。
作りすぎた作品を展示するスペースまで作ってくれました。
多感な3歳という時期には、とても大変な状況でしたが、
自分の想像を自分の中に閉じ込めず、ふさがず、
自分の世界をそのままに表現して、大きくしていけたことは、
病院の皆さんの愛情があってこそだったなと思います。
そこで頂いたたくさんの愛情は、息子の想像力を広げ、息子の温かな根っこのようなものを作る糧になりました。
そういった素敵な大人の姿を見て、僕たちもそんな風に応援できたらいいなと、とても多くのことを学ばせてもらいました。

最近ではいつの間にか息子のアートのファンも増え、
友人たちが自分の子供にも体験させたいと、声をかけてくれるようになりました。
そして、一緒にやると、親たちは自分たちの子供の今まで見たことのないような表現や可能性に気づきます。
子供によってもちろん表現は違っていて、それぞれがそれぞれに面白い作品を作ります。
大人は、そんな子供の可能性を楽しむように一緒に楽しみます。
子供は、自分の思うままに描いたものを受け止めてもらい、照れながらもとても嬉しそうな顔をします。

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子供たちの個性がそのまま大きく、
そして思うままの表現ができるように、
そんなことを広げられたらいいなーと思います。

子供はみんな偉大なアーティスト。
その想像力を大人が閉じ込めてしまわぬように。
そんなことを息子から学びました。

大きく大きくなーれー

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