岩崎春夫

HOP株式会社代表取締役。総合商社で香港、イタリアに駐在し、組織経営や事業投資に当たる…

岩崎春夫

HOP株式会社代表取締役。総合商社で香港、イタリアに駐在し、組織経営や事業投資に当たる。ベンチャー企業や第二創業期の企業を対象に「強く美しい会社」創りに取り組む。人と組織の学校「人事の寺子屋」を主宰。訳書に「人間主義的経営」(ブルネロ・クチネリ著、クロスメディア・パブリッシング)

最近の記事

ブルネロ・クチネリの経営にみる「豊かな資本主義」

(写真はソロメオ村の夜明け(出所:BRUNELLO CUCINELLI 提供)。この論考は、株式会社東レ経営研究所の発行する「経営センサー」2024年9月号への投稿記事に若干の加筆修正を加えたものです。) 1.21世紀の資本主義の課題~会社は必要悪か 著しい格差、社会の分断、地球環境の破壊が進む中、近年、資本主義に対する厳しい批判の声が高まっている。 実際、格差や気候変動の問題は極めて深刻である。21世紀のほぼ4分の1が終わった現在、この地球では1%の富裕層が世界の富の

    • 『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第13回  第十章 コッホの雪片と最初の正三角形

      第十章  コッホの雪片と最初の正三角形 ~個人と世界の美しい関係 <本章の内容> この章では、個人と世界の関係を探求し、コッホの雪片という数学的な比喩を用いて、その複雑性と美しさを描写しています。個人の役割とその影響力について深く掘り下げています。 地球が誕生したのは約46億年前です。太陽の周りにできたガスと塵の円盤の中で、微小な粒子が衝突し、大きな塊である微惑星となりました。この微惑星がさらに衝突と融合を繰り返しながら成長し、原始惑星が形成されたと言われています。地球は

      • 『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第0回 連載概要

        市場のかごに閉ざされ、ひたすら車輪を回し続けるハムスター。疲弊した現代の会社に生命を吹き込む新しいマネジメント論 <目次> https://note.com/haruo_iwasaki826/n/n8f95cf9bc1a6 はじめに  発端 ~『歴史の終わり』と市場の時代の始まりhttps://note.com/haruo_iwasaki826/n/n8e979eadaa67 序 章     傾いた資本主義の家 ~自由を市場に買いに行くhttps://note.com/h

        • 『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第12回  第九章 自由と連帯の交差点

          第九章 自由と連帯の交差点 ~マネジメントが紡ぐ人間の誇り <本章の内容> この章では、自由と連帯の関係性と、その中でのマネジメントの役割を探求しています。自由と連帯のバランスを取り戻すための具体的なアプローチを提示しています。 ここまで会社、労働、組織、資本、そしてマネジメントと正義の関係について、普段私たちが見落としている見えないものを把握し、均衡ある全体像を持つことを目的としてさまざまな角度から考察を加えてきました。 対象はいずれも人間が概念として把握しているもの

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        • 『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第0回 連載概要

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          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第11回 第八章 マネジメントと正義

          第八章  マネジメントと正義 ~市場では買えない人間社会の基礎構造 <本章の内容> この章では、マネジメントと正義の関係について詳しく解説しています。市場では買えない人間社会の基礎構造を探求し、マネジメントの倫理的側面を強調しています。 正義と対立するのは悪ではなく「もう一つの正義」である。そんな言葉を聞いたことがあるかもしれません。 本章では、正義とは何か、正義とマネジメントとの関係、そして、マネジメントにおいて正義がなぜ大切であり、どのように適用されるべきかについて

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第11回 第八章 マネジメントと正義

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第10回 第七章 資本とは何か

          第七章  資本とは何か ~貧しい資本主義、豊かな資本主義 <本章の内容> この章では、資本の本質とその社会的価値について探求しています。貧しい資本主義と豊かな資本主義を対比し、資本の新しい理解を提供しています。 トマ・ピケティは、『21世紀の資本』において、膨大なデータの分析を通じて資本主義が長期的に富の集中と不平等を拡大させることを明らかにしました。 資本主義は私的利益の追求を原動力として豊かさを実現する経済システムであり、私有財産制と自由市場をその両輪としています。

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第10回 第七章 資本とは何か

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 最終回  あとがき

          あとがき  個人的な体験 ~市場の時代と歩んだ40年 本書は、会社や人や組織の見えない部分を含む全体像を視野に収め、マネジメントという仕事の役割を再定義することで、市場化した社会の課題に向き合おうとする試みでした。 人々が市場に絶対的な価値を置く契機となったのが、ベルリンの壁の崩壊でした。 第二次世界大戦後、ドイツは連合国側の4つの占領地域に分けられました。ベルリンは共産主義国家ソビエトが統治する東ドイツに位置していましたが、東側はソビエト、西側は、アメリカ、イギリス、

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 最終回  あとがき

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第14回 終章 資本主義の家の管理人

          終章 資本主義の家の管理人 ~ベンチマークとしてのブルネロ クチネリ、パタゴニア、石見銀山群言堂グループ <本章の内容> この章では、具体的な企業事例を通じて、資本主義の家の管理人としてのマネジメントの役割を探求しています。ブルネロ クチネリ、パタゴニア、石見銀山群言堂グループといった企業の事例を詳細に分析しています。 ここまで、格差や分断という深刻な歪みをもたらした「社会の市場化」という現象が、いつ頃からどのように世界に広がっていったのかを振り返り、格差や環境問題など、

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第14回 終章 資本主義の家の管理人

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第9回 第六章 組織を動かす2つの力

          第六章 組織を動かす2つの力 ~普遍的な重なりを作る <本章の内容> この章では、組織を動かす2つの力について詳しく解説しています。特に、「普遍的な重なりを作る」という概念を通じて、組織のダイナミクスを探求しています。 イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは、2011年に出版した世界的ベストセラー『サピエンス全史』において、人類が地球の支配者となった理由を、人間の組織を構築する能力に求めました。ハラリの見解は、身体能力で勝る他の動物を凌駕し、圧倒的な力を持つ存在とな

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第9回 第六章 組織を動かす2つの力

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第8回 第五章 人はなぜ働くのか

          第五章 人はなぜ働くのか ~3人のレンガ職人とメキシコの漁師 <本章の内容> この章では、労働の意義とその社会的価値について探求しています。3人のレンガ職人とメキシコの漁師のエピソードを通じて、労働の意味を具体的に描写しています。 この章では、人が働く理由と、労働が誰にどのような価値をもたらすのかについて考えてみます。 1.生産の三要素としての「土地」、「労働」、「資本」 経済学の基本に「生産の三要素」という概念があります。経済活動は、大地の恵みに人間の労働が加わるこ

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第8回 第五章 人はなぜ働くのか

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第7回 第四章 事業と経営

          第四章 事業と経営 ~時を告げるのではなく、時計を作れ <本章の内容> この章では、事業と経営の違いを明確にし、その本質的な価値について探求しています。特に、「時を告げるのではなく、時計を作れ」という比喩を通じて、経営の本質を深く掘り下げています。 1.発明と事業、事業と経営 21世紀の世界を大きく変えたアップルのスマートフォン。その原型は、1960年代後半にコンピュータ科学者アラン・ケイが構想した「ダイナブック」でした。当時、大型の汎用コンピューターしか存在しなかった

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          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第6回 第三章 フィクションとしての会社

          第三章 フィクションとしての会社 ~目に見えない大切なもの <本章の内容> この章では、会社という存在をフィクションとして捉え、法律や会計だけでは見えない価値を考察しています。会社の見えない価値を見極めるための視点や方法を具体的に提示しています。 私たちは普段何気なく「会社」という言葉を使っていますが、いざ「会社とは何か」と問われると、明確に説明するのはなかなか容易ではありません。 例えば、会社はどこにあるのでしょうか。本社や工場の建物が会社そのものではありません。本社

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第6回 第三章 フィクションとしての会社

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第5回 第二章 企業活動の全体像 

          第二章 企業活動の全体像 ~利益は何のために <本章の内容> この章では、企業活動の全体像と利益の意味について詳しく解説しています。企業の利益が何のために存在するのか、その本質的な価値について深く掘り下げています。 1.企業活動の入口と出口 大阪にある株式会社金剛組は、聖徳太子が招聘した宮大工によって西暦578年に創業され、1,400年以上の歴史を持つ世界で最も古い会社とされています。 江戸時代には、三井組や小野組など、会社制度の先駆けといえる共同企業が存在していまし

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第5回 第二章 企業活動の全体像 

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第4回 第一章 見ることと考えること

          第一章  見ることと考えること ~ガラスの窓が見える鳥 <本章の内容> この章では、マネジメントの基本として「見ること」と「考えること」の重要性を強調しています。視点の違いが生む誤解や対立の解決策として、多面的な視点を持つことの必要性を説いています。 1.世界の解像度を上げる マネジメントは、人と人、自分と「自分以外のすべてのもの」との間で最適な関係を創り出し続ける仕事です。自分以外のすべてのものとは、自分の周りのあらゆるもの、自分が存在する世界そのものを指します。

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第4回 第一章 見ることと考えること

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第3回 序章 傾いた資本主義の家

          序章  傾いた資本主義の家 ~自由を市場に買いに行く <本章の内容> この章では、現代社会の市場経済の影響を深く掘り下げています。市場経済の自由とその裏にある格差拡大、環境悪化、金融危機などの問題点を指摘し、そのバランスの崩壊を描写しています。 1.市場で暮らす香港の人々 東京都のわずか2分の1ほどの広さしかない香港は、騒々しい雑踏に人々があふれかえり、空中を埋め尽くす大きな広告看板の下を二階建てバスや路面電車が絶え間なく行き交う、熱気と喧騒に満ちた町でした。昼間は巨

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第3回 序章 傾いた資本主義の家

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第2回 目次

          目次 はじめに  発端 ~『歴史の終わり』と市場の時代の始まり 序 章   傾いた資本主義の家 ~自由を市場に買いに行く 第一章   見ることと考えること ~ガラスの窓が見える鳥 第二章   企業活動の全体像 ~利益は何のために 第三章   フィクションとしての会社 ~目に見えない大切なもの 第四章   事業と経営 ~時を告げるのではなく、時計を作れ 第五章   人はなぜ働くのか ~3人のレンガ職人とメキシコの漁師 第六章   組織を動かす2つの力 ~普遍的な重なりを作る

          『資本主義の家の管理人』~市場化した社会を癒す希望のマネジメント 第2回 目次