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【小説】たぶん、きっとそれは愛。

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<あらすじ> 28歳の美奈子は仕事に忙しい毎日を送っている。美奈子には、涼という定期的に身体を重ねている男性がいる。涼の他にも複数人。彼らは美奈子の彼氏でもなければ、結婚したい相…
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【小説】たぶん、きっとそれは愛。最終話(第6話)

【小説】たぶん、きっとそれは愛。最終話(第6話)

ポンと鳴って沸いたポットの合図を聞いて、ポンポンと私の頭を撫でていた涼の手が、私の頭から離れる。
気を遣っているのか、涼は、泣いている私の方向を見ないように背を向けて、ポットの方へと移動してくれた。

その背中を見ながら私は思った。

「たぶん、きっと私は涼のことが好きだ。」と。

涼がポットのそばに置いてあった茶葉を取り出して、あたたかいお茶を淹れようとしてくれている。

*******

世の

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【小説】たぶん、きっとそれは愛。(第5話)

【小説】たぶん、きっとそれは愛。(第5話)

「今、仕事終わった!今何してる?」

時刻は19時半を過ぎた頃、涼から連絡が来た。

「今私もちょうど、友だちと夕飯食べ終わって、友だち駅まで送るとこ!」

そう返信して、私は食べていた作り置きのカレーを、急いで口にかきこんだ。結局、喫茶店で過ごしたあと、特に行く当てもなかったので私は一度家に帰宅した。お腹もすいたところだったので、数日前に作って冷凍しておいたカレーを温めて1人で食べていた。
と、

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【小説】たぶん、それはきっと愛。(第4話)

【小説】たぶん、それはきっと愛。(第4話)

「久しぶりー!やっと会えたうれしい♪」

「うん、私も!ほんとめっちゃ久しぶりだよね♪」

土曜日の昼前、予定通り、私は由奈と約束の場所で合流した。

「由奈また綺麗になった?」

「えー、そんなことないよー。けど、うれしい笑 美奈子はちょっと痩せた?」

「うん、ちょっとここのところ仕事忙しかったからあんま食べれてなくて、確かに痩せたかも。」

「そっかそっか。大変だったんだね。」

「ううん、

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【小説】たぶん、きっとそれは愛。(第3話)

【小説】たぶん、きっとそれは愛。(第3話)

「ねぇ、明日近くに行くんだけど、夜会えない?」

最後に会ってから、約3か月が経とうとしていた頃、涼からメッセージがきた。

「あぁ、あれ以来か。」

私は昼休憩中の職場の周りの人に聞かれないように、ボソッと呟いて、携帯の画面をくるりと裏に向けてデスクに置いた。

あの生理が来なかったときのことを思い出して私は身震いした。
結局、あの後、病院からもらったピルを飲んではみたものの、全くと言っていいほ

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【小説】たぶん、それはきっと愛。(第2話)

【小説】たぶん、それはきっと愛。(第2話)

涼に会ってから10日が経った。そして、私の生理は来なかった。ほぼほぼアプリがお知らせした日時よりいつも少し前か、ぴったりで来ていた生理が来ない。

生きた心地がしなかった。
私が前月の生理が来たあとに会った男性は涼だけじゃない。
生理予定日より3日くらい前からそわそわと、別に用を足すわけでもなく私は何度もトイレに行った。けれど、下着の色は変わっていなかった。

どこで何を間違えたんだろう。
ゴムを

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【小説】たぶん、きっとそれは愛。(第1話)

【小説】たぶん、きっとそれは愛。(第1話)

「ふぅ」と大きく息をはいて彼はくるりと背中を向けた。その背中をそっと指で撫でてみると驚くほどに冷たかった。さっきまで、私の身体全体を包み込んでいた熱い体温はもうそこにはなかった。

彼の背中を指でなぞった後、その冷たさに寂しさを感じて、それと同時に悲しみも感じて、哀愁に浸っていられるほどの心の余白なんて私にはない。

だから私だって、くるりと背中を彼に向けて、ベッドの下にあるバックからおもむろにタ

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