見出し画像

終わらない夏休み

2学期が始まってすぐ、娘が学校に行かなくなった。
特に驚きはなく、「よく3年生まで頑張ったな」というのが正直な感想だ。

今までnoteでも書いてきた通り、娘はHSC気質の繊細さん。

週5日、他の子どもたちと同じスケジュールをこなすのは、以前からしんどそうだった。

3年生になり、6時間授業の日が週3回に増えて、よりハードになったのが原因かもしれない。
夏休みを挟んで、気が抜けてしまったのもあるのだろう。

2学期の給食がスタートする月曜日の朝、布団のなかで「ママがいい」と泣きじゃくり、起きてこなかったのが始まりだった。

***

無理やり登校させる気はない。
頑張っても体が動かないときってあるんだよね。

私自身、3度不登校になった経験があるから、家にいたい気持ちは何となく分かる。

学校に行かないと、それはそれで辛いのも知ってる。

「勉強に遅れるんじゃないか」
「教室に戻ったとき、自分の居場所がなくなっているかもしれない」

欠席したところで、心が休まる時間は、ないに等しいのだ。

それを知っている私は、「休む=怠けている」とは思わない。

だから決めた。
「今は休みが必要な時期」と受け入れて、彼女を見守ることを。

***

だけど、実際に娘の欠席が続くと、思っていたよりしんどい。

先生の提案で、1日のうち多くて4時間、オンライン授業を受けられるようになった。

今週は1日1~2時間程度、登校もできた。
けれど、それ以外はフリー。
つまりYouTubeタイムだ。

本当は1日1時間でも登校できるようになったことを素直に喜ぶべきなのかもしれない。

だけど、理想の子育てとは程遠い現実に、モヤモヤとイライラが積もる。

そしていつの間にか、無理に登校させず、子どものペースを優先するスタイルに疑問を感じるようになってきた。

娘からは、不登校のときに私を苦しめ続けた、焦りや不安が見受けられない。

オンライン授業を受けたら「私のミッションは終わり!」と、満足してしまっているご様子。

充実感に満ちあふれた顔をして、テレビの前でダンスを踊りまくっている。

そんな姿を見ていると、「自分にとって面倒なこと」から逃げているように思えてしまうのだ。

もし、元気に見えるだけで、本当は心に何か抱えているのだとしたら、こんなことを考えている私は、最低な母親なんだけど……。

***

何冊か不登校に関する本を読んでみると、娘が私に依存している可能性があるのも分かった。

私の育て方が間違っていたのかな。
娘に寄り添いすぎたのかな。
だから、ストレスに耐えられる力が育っていないのかな。

ライターになって、ずっとモットーにしてきたのは、「自分と家族を大切にする働き方」。

「子どもであっても、娘は私じゃない。だから、自分とは違う考えをもった”人”として、尊重しよう」と意識してきた。

過保護に育てたつもりはない。
私自身が親の甘やかしによって、大人になっても苦しんできたから。

ただ、娘に「こうしてほしい」と求められたら、内容によっては応えてきた。

「~買って!」とか、そういう物質的なものじゃなく、「途中まで学校についてきて」とか、気持ちに関わる部分に対しては。

でも、実際には彼女の自立を邪魔していたのだとしたら......。
自分の両親と同じように、過干渉な母親になっていたのだとしたら……。

ショックだった。
私は今まで何をしてきたんだろう。
子育てって、想像以上にむずかしい。

いろんなモヤモヤに気付いていくうちに、何かが崩れ始めた気がする。

娘が学校に行っていたときは、タッパーに入った残り物をそのまま食べたり、昼休憩に好きなアニメを見たり、締め切りラッシュが落ち着いたら、一人で映画館に出掛けたりしていた。

そういう適度な息抜きと、距離感があったからこそ上手くいっていた部分が、ずっと同じ家にいることで、変わってしまった。

娘からの「ママ大好き」って言葉を、素直に受けとれない。
本当は今までと同じように「ママも大好きだよ」って答えたい。
でも、私への依存心を強くしてしまうかも……。

以前なら幸せを感じていた娘の言動に、モヤモヤを感じてしまう。
そんな自分がイヤになる。

だから、娘からの「大好き」に「ありがとう」と答えるだけ。

子どもを大切にするってどういうことなんだろう。
何が正解なんだろう。

不登校の本には、「原因は親子関係にある。母との依存関係を修復するために、親が対応を変えなければならない」と書かれている。

学校の先生は「今はプレッシャーをかけずに、彼女のペースを大切にしましょう」と言う。

私が抗うつ剤を処方してもらっている心療内科の先生からは、「焦っていないように見えるだけで、本人は悩んでいるのかもしれない。寄り添ってあげてください」とアドバイスされる。

一緒に住んでいる母は、「もう学校に行かなくなって1か月経つんだから、一回厳しく話したら?」と言ってくる。

誰かの意見を聞くたびに、私の心は揺れる。
そしてグチャグチャに絡まって、考えるほど、もつれていく。

そうだよね。
みんな他人事だもの。
そして私も。

そうか。
どれだけ親が悩んだって、学校に行くかどうか決めるのは娘だ。

じゃあ、私はどうすればいいの?
周りが言うこと、全部正しくて全部間違っている気がする。

働き方や暮らしの形、親子の関係を見直す時期なのかもしれない。

カレンダーは10月。
だけど、どうやら私と娘の夏休みは、まだ始まったばかりのようだ。

#この経験に学べ

この記事が参加している募集

#この経験に学べ

53,901件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?