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全力でがんばりたかった話

2020年になりました。あけましておめでとうございます!
2020年ひとつめのnote、ちょうどお題の募集もあったので働くことについて書いてみます。

■今の私のお仕事

私は現在、週に2日だけある企業さんで校閲の仕事をしており、それ以外の日は基本的に小説家のお仕事をしています。

小説家と聞くと想像力を働かせてひたすら原稿を書く、みたいなイメージがありますが、それ以外にもやることはたくさん。原稿の執筆・推敲・改稿のほか、企画書・プロット作成、取材、校閲、打ち合わせ等々。クリエイターの集まりに行ったり、勉強会や講演に行くことも。
まったく違う業界の友人にこういう話をすると、「企画書なんて作るんだ!」とよく驚かれます。

■会社員時代の話

大学卒業後から7年強、IT企業で会社員をやっていました。ITライターの会社だったので、一応文章を書くお仕事です。
中学時代からずっと小説を書いていて、就職のときも文章の勉強ができる会社に就職しようと思ったのがその会社を志望した一番の理由。

入社後、期待どおり文章の勉強もでき、自分の書いたものが成果物になる部分にはやりがいもありました。反面、自分の文章が「●●社の成果物」として納品されることに、どうしようもない歯がゆさもありました。
やはり「これは自分の文章だ」と胸を張って言える仕事がしたかった

そんな鬱屈を抱えつつ会社員を続けました。文章を書く仕事は自分が本当にやりたいこと(小説を書く)に近いけどやっぱり違う、という意識は日増しに強くなり、また入社2~3年目にかけて持病の喘息が悪化したこともあって、私は全力で働くことをやめました
できるだけ残業はしない、オフに仕事は持ち込まない、時間があれば小説のことを考える、会社の人間関係に依存しない、と自分の中でルールを決めました。全力を出すのは小説を書くときだけ、と決めたのです。

ただ、これが新たなるフラストレーションを生む結果になりました。

■全力でがんばれない苛立ち

自分で言うのもなんですが、根が真面目な性格です。中学時代に練習の厳しい吹奏楽部に所属して以来、勉強も部活も全力で取り組むのが習慣でした。
なのに社会人になって数年目、会社で全力で働くのをやめることに決めた結果、全力でがんばれないジレンマが生まれたのです。

会社の仕事が本当に好きだったり、出世を目指していたり、資格をたくさん取ったり。そんな風にがんばっている同僚を横目に、全力でがんばれてていいなぁと思うようになりました
私だって全力でがんばりたい、でもがんばりたい小説は仕事じゃないと、フラストレーションが日々蓄積されていきました。何ものにもなれない自分を常に意識していたように思えます。小説を書くのは好きでも、仕事に、お金になっていない時点で他人から見たら趣味以外の何ものでもなく、それもまた引け目になっていました。
ちなみにあの頃書いた小説はとてもじゃないけど作品と呼べるレベルになく、でも忙しさや疲れを言い訳に小説技法を学んだり文学賞について勉強したりすることもあまりできず、とにかく何もかもが中途半端でした。

そんな中、このまま歳を取って死んでくのヤだなと思ったのが25歳の頃。25歳になり30歳が遠くに見えてきて、本当にふと思ったのです。
そうして一念発起。会社員をやりながら小説教室に通ったり、クリエイターの交流会に顔を出したりして、多くの世界を見聞きし友人を増やし、小説のために割く時間を増やしていきました。
何かになれたわけじゃないけど、でも全力でがんばった。あの頃できた友人や見聞きしたことは、会社では経験できなかった財産です。
そして会社員になって7年と3ヶ月、遂に退職。

なお、悪化していた喘息など諸々の症状は会社を辞めて早々に改善。やはりストレスは万病の源。

■全力でがんばれるようになった

会社を辞め、フリーランスでライターや校閲仕事を請け負いつつ月1ペースで新人賞に送るようになって数年、出版社とご縁ができ、念願の作家業に就けました。
最初の1冊が出るまで1年半かかったりと順調なことばかりではなかったものの、ありがたいことに作家生活2年と4ヶ月目の現在、日々やることには困らないくらいの作業を抱えています。

頭の中は、常に取りかかっている作品のことでいっぱいです。
仕事にできた今なら引け目もなく、小説を書いていると堂々と言えます。
誰にも遠慮することなく、好きなことで頭をいっぱいにできる、全力でがんばれることが本当に幸せです。
ずっとこんな風に仕事がしたかったと毎日思っています。

■全力でがんばり続けるために

全力でがんばれるようになった一方、会社員時代の経験も踏まえ、今のこの状態を長く続けるために必要なことも考えるようになりました。

好きな仕事だからこそのストレスも溜まります。好きだからこそ譲れないポイントがあったりもします。
けど、そこでストレスを溜めると如実に体調に影響するのは経験済み。
腹が立ったらテキストデータに吐きだして消去する、人に愚痴る、寝る、漫画を読む、走るなど、意識してストレス解消を図っています。
今思うと、会社員の頃は全力でがんばらないと決めた一方、溜めたストレスもそのまま放置していた気がします。

そして、資本は健康な身体
昔からの運動嫌いですが、ここ数年、低頻度ではありますがジムに通っています。通う元気がないときでも散歩は心がけています。
あと寝ます。すごく寝ます。毎日8~10時間寝てます。会社員の頃は帰宅してから午前4時まで執筆→出社みたいな短時間睡眠のときもありましたが、元から体力もないしやはり身体がもちませんでした。
寝るとそれだけでストレスもある程度解消できるし、健康もある程度維持できます。睡眠時間だけは優先です。

■意識して休む

そんな風に色々自分の調子に気を遣ってはいますが、やはり好きな仕事なので時間があるなら原稿見たいし、忙しいと土日とか関係なくなってきます。気がつけばこの半年は週休1日あるかどうか。毎日寝ているので一応元気ですが、肩こりとか霞み目とかやはり影響は出てきます。

そんなわけで年末年始は1週間、原稿から離れて台湾に行ってきました。
(墾丁という台湾最南端の地に行きましたが常夏で海がめっちゃ青かった)

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現地に着いて早々、2日ほどで霞み目は解消。毎日5キロ平均で歩いたので全身くたくたになりながらも運動不足は解消、よく眠れました。

全力でがんばれる仕事が好きです。ですが、好きであるがゆえに休みがなくなりがちです。なので意識して休むのも大事だなと思ってます。
全力でがんばっていくために、がんばらない日を作る。そう思えるようになった今がとても楽しい。

……こうして昨日帰国し、リフレッシュして柔らかくなった脳みそのリハビリのためにこのnoteを書いてみました。
徐々に仕事モードに脳みそを戻しつつ、2020年も無理せず全力でがんばっていきたいと思います。

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P.S.
2020/1/17新刊『きみは友だちなんかじゃない』(集英社オレンジ文庫)発売予定です!


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