杉山文野さんの世界一受けたい授業を観て
杉山文野さんの名前は東京レインボープライドに参加したことがあれば一度は目にしているし、今では度々テレビでも見かけるようになった。
去年あたり、子育てをはじめたドキュメンタリーも放送されていた。
現在、日本で一番有名なトランスジェンダー男性であり、そして日本でほぼ唯一の著名なトランスジェンダー男性だ。
彼の学生時代の写真もたびたびメディアで見かける。彼がテレビに出る時は「元女子です」という紹介が必ずセットだからだ。
彼は僕よりも10歳ほど年上で、写真に写っている高校生たちのミニスカートにルーズソックス姿というのが時代を感じる。
最近知ったことだけど、杉山さんと僕は同じ高校に通っていたようだ。
あの女子校は10年スパンで少なくとも二名のトランスジェンダー男性が入学していることになる。
あの高校は通学服はズボン着用OKなはずだ。
それなのに、どうして杉山さんはスカート姿だったんだろうか。
単純に10年前(僕が卒業して10年経つので実質20年前)にはスラックスOKの規約がなかったのか、それともいろんな理由で杉山さんはスカートで通学せざるを得なかったのか。あるいはスカートは別に気にならない派だったのか。
いずれにしても、杉山さんが高校生だった頃と、僕が無限に毎日スラックス通学でも何も言われなかった高校時代とは、大きく時代が変わっていたということなんだと思った。
たとえば、僕は中学生の時点で性同一性障害という言葉を知っていた。
そして、中学生当時、僕はほぼその当事者だろうという直感があった。
中学生の僕が、そんな風に情報を自ら集めて選択することが出来たのは、先人たちが情報を発信し続けてくれたから、そして少しでも生活環境の在り方を変えようとし続けてくれたからだ。
高校生の僕が、周りがスカートを履いた女子生徒ばかりの中、最後までスラックス通学を貫き通せたのは、先人たちが直接ではなくてもお前が誤りなのではない、お前は一人ではないのだと、僕に勇気をくれたからだ。
結局その10年後の現在、僕は未治療なので普段女性として生活している(未治療であるという点について何か言いたい人たちがいるのも分かるけど、それはまた別の機会に)。
特に社会活動もしていないし、トランスジェンダーの観点から書き物をすることもあまりない。
だけど、僕が今まで通ってきた道というのは、僕の現在の生活環境というのは、どこか必ず先人であるトランスジェンダーの誰かが切り拓いてきた道なのだ。
今夜の「世界一受けたい授業」の放送で、それを改めて思い出した。
だから、杉山さんはじめ、先人たちに改めて感謝を。
そして、僕より未来を生きる若者たちに、幸多からんことを。
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