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久しぶりにマスクを外したら、嗅覚が覚醒したはなし


本格的なおこもり生活をはじめて、もう1か月以上が経とうとしている。

はるかぜは学生なので、基本的に買い出しとごみ捨ての他は、まったく外に出なくて済む生活を送っている。

イベントの自粛なんかが叫ばれはじめて、マスクは絶対しなくちゃな、、なるべく用事ない時はお家にいよう、、と思いはじめてからは、もう2か月以上が経つ。遠い昔のようで、実はそんなに遠くもない。

はじめのうちは、どこに行ってもマスクがないな!!!!!と思って、戦々恐々としていたけど、そのうち家に引きこもっていれば、マスクも消費されないことに気がついた。健康なひきこもり学生へのマスクの優先度は、今の社会ではたぶんぶっちぎりで低い。


そんな私にも、とうとうどうしても大学に行かなくてはいけない用事が出来てしまった。これは行くしかないと腹をくくり、ごみ捨て外出用と化して久しい貴重なマスクをだいじに装着する。


ものすごく久しぶりに自転車に乗って、まちに繰り出した。

もう何年も通ってきた街は、様変わりしているかと思えば、意外とそうでもなかった。たしかにお店はみんな閉まっているし、人も全然いない。もともと学生の多いまちだから、みんな考えることは同じだ。

川沿いを走っていると、たまに寝そべってるおじさんとか、水遊びしてる小さい子達がちらほらいた。毎年これでもかというほど咲く桜は、いつのまにかみんな緑になっていた。


ふと周りを見渡して、

これは久方ぶりにマスクを外すチャンスでは?!?!

という思いが頭をよぎった。

自転車絶賛走行中。まわりに全然人がいない。たまに向こう側を、ウーバーイーツのお兄さんが自転車で走ってるくらい。信号待ちもわたし1人。しかもそろそろ暑い。


これはさすがにチャンス!!!と思って、マスクをちょっとずらして鼻を出してみる。


全然知らない匂いがした。


あまりにも嗅いだことのない匂いでびっくりした。

20分ほど走って、もうだいぶ見慣れた大学のまわりの景色のはずだった。

真横を通った車の排気ガスの匂いと、いつもめちゃくちゃ甘い匂いのする金平糖屋さんのいい匂いだけがかろうじて判別できた。あとは全然分からない何かが、ものすごく色々混ざった、「お外」の匂いがした。ここってこんな匂いしたっけ????

マスクをまたちょっとずらして鼻を覆うと、普通にいつもの匂いがした。マスクの中の匂い。そろそろ替えたい時期ではあるけど、次がないのでそのまま、みたいなマスク。そろそろ布マスクの検討も始めないといけない。

普段なら迷子の新入生やらでごった返してたはずの大学構内には、当たり前に人がほとんど居なかった。ほったらかしの自転車ばかりが一丁前に列を成していた。

構内を自転車でのんびり走りながら、またちょっとマスクをずらしてみる。さっきとは全然違う匂いがした。大学って、こんな匂いがしたんだァ、と感慨深かった。

爆速で用事を済ませ、そそくさと帰途につく。さっきとはちがう道を通って帰ろう、と思って、別の道の匂いを嗅ぎに行った。期待通り、一本角を曲がるたびにちょっとずつ違う、まちの匂いがした。川沿いに出ると、新緑の草木の匂いや咲き始めのツツジの匂いがめいいっぱいに広がった。ちなみにさっきはマスクの匂いしかしなかった。

ぽつんと1人まちを走りながら、めいいっぱいに色んな匂いを吸い込んだら、なんだかものすごく心が生き返るような気持ちになった。この2か月近く、家の匂いと、マスクの匂いとの二択を迫られていた私の嗅覚が、ウワー!!!となって、めちゃくちゃ喜んでいた。色んな匂いを取り込もうと必死な自分の嗅覚に、わたしもびっくりである。


家に帰ってドアを開けると、めちゃくちゃ自分の家の匂いがした。初めて引っ越してきて、うちのドアを開けた時に嗅いだ匂いがした。


今度こそ思いっきりマスクを外して、晴れて外に出られるようになった時、私のまちはどんな匂いに変わっているんだろう。それをかぐのを楽しみに、また嗅覚にはしばらくお休みしておいてもらおうと思った。












とびきりにおいしい紅茶を買います