見出し画像

ぜいたくな悲しみ方


しまなみ海道のもうひとつの名前は、西瀬戸自動車道っていうらしい。無骨な響きだ。急にインフラ感が出る。
広島県の福山駅から、せとうちバスに乗って1時間半、しまなみ海道を渡って愛媛県の今治をめざす。

平日の夕方の車内は、人がまばらだった。2600円のチケットを買って、いそいそと乗り込む。

福山駅からひとつ目の島、向島までは30分。その後因島、生口島、大三島、伯方島、大島、そして今治と続くが、最初に着く向島以降は、4〜5分に一度停車する。
平日のせいもあって観光客は少ないのか、あまり降りる人はいなかった。


画像2


夕方の瀬戸内海は穏やか


画像1

いくつも橋を渡ってゆきます


画像3

大きい船もちらほら停泊している。造船所やドックなんかもありそう。



家から目的地に着くまで、乗り換えなんかも含めて、7時間ぐらいかかった。実は今回、諸般の事情で鹿児島の実家から松山まで、陸路で向かったのだ。
鹿児島〜福山まで新幹線、福山〜今治と今治〜松山をバス。


移動の最中、昨日までの悲しいシーンを何度も再生して、今の状況を、自分の中に少しずつ取り込んでいった。

穏やかな瀬戸内海を眺めながら、バスに揺られて、ただ1人で悲しみに浸かっている。誰にも愛想を振りまかなくていい。
あれはある意味、贅沢な時間だったのかもしれない。


でも、小さな島々に降り立って歩き回ることができたら、どんなに素敵だっただろう。
しまなみ海道はサイクリングの聖地らしいけど、途中までバスで行って、そこから自転車に乗るなんてこともできるのかもしれない。いつかゆっくり時間をとって、またこの場所を訪れたい。


次にしまなみ海道に来る時も、わたしはこの日のことを思い出す。でも、この出来事を自分の一部として飼い慣らしていられるくらい、きっと元気だといい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?