『海の向こうでこんなこと言われた』#18
「目を見てお詫びを言ってやって」
ベルギーは人間の次にワンちゃんが多い。
道行く人の3人に1人は愛犬同伴だ。
ショッピングモールやスーパー、街の各店舗の前にはリードを固定出来るリングがずらりと並んでいる。
人間の意識もしっかりしていて、道の何処にもワンちゃんの「落し物」なんてない。
店舗の前にはパートナーを待つワンちゃんが数匹、時には数十匹、喧嘩もなければウロウロもせず、整然と座っている。
その日僕は大失敗をした。
歩道上で教会の建物をカメラに収めようとして思わず後ろへ下がった時、
『キャッ』と犬声!
「アッ」と振り返る。
ラプラドールの成犬だった。
脚を踏んだらしい。
怒ったというより叫んだ自分を恥じるような表情でこちらを見上げている。
「すみません‼」
僕は慌ててリードを握っている中年婦人に謝った。
婦人は軽く微笑んで
『道を歩いてる時のリスクのひとつよ。よそ見をしていた私もいけなかったわ』
「えっ、いやその‥」
『でも、目を見てこの子にお詫びを言ってやってね』
僕は腰を屈めてそっとラプラドール君の頭を撫で、目を見て「ごめんなさい」を言った。
『よく出来ました』
みたいな表情が返ってきた(気がした)。
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