探偵はBARにいる
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
2011年の日本映画。北海道を舞台に、大泉洋と松田龍平がコンビを組み、ハードボイルドなタッチで事件の真相を追う探偵ミステリー作品です。原作は、東直己のハードボイルド小説「ススキノ探偵シリーズ」。
共演は、小雪、西田敏行、田口トモロヲ、松重豊、高嶋政伸、吉高由里子、ほか。
原作はハードボイルドな小説シリーズ
本作は、東直己(あづま・なおみ)の小説『バーにかかってきた電話』が原作。札幌の歓楽街ススキノのバーを根城に〈探偵〉兼〈便利屋〉を生業としている〈俺〉を主人公にした「ススキノ探偵シリーズ」の第2作です。
東直己の「ススキノ探偵シリーズ」は、第1作『探偵はバーにいる』から第13作『猫は忘れない』まであるようです。わたしは未読ですが、1992年~2011年と長く刊行されている人気シリーズなんですね~。
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一方、大泉洋&松田龍平コンビの映画もシリーズ化されていて、現在「3」まで公開されています。
〇 映画・1作目
『探偵はBARにいる』(2011年)
〇 映画・2作目
『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』(2013年)
〇 映画・3作目
『探偵はBARにいる3』(2017年)
ちなみに、映画シリーズのタイトルは「BAR」と英語表記なのに対して、元の小説シリーズのタイトル(第1作『探偵はバーにいる』)は「バー」とカタカナ表記になっています。微妙な違いではありますが、マメ知識としてどうぞ。笑
映画と小説シリーズの関係をちょっと整理してみると、こんな感じ。
子どもの頃から、わたし、図や表にして情報を整理するのが大好きなんですよねぇ。モノゴトを理解する時に優位な感覚が “視覚派” なのでしょうね。ほんと、笑っちゃうくらい断然 “視覚派” です。デザイナー向きといえば、そうかもしれない性質ですね。
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あっ、それから、もっと区別しやすい方法が!
各作品ともヒロイン役の女性がいて、1作目から3作目まで、それぞれこちらの女優さんが演じています。
〇 映画・1作目: 小雪
〇 映画・2作目: 尾野真千子
〇 映画・3作目: 北川景子
わたしは小雪さん出演の本作だけ、観ています。2作目、3作目は未見。オノマチ(尾野真千子)さんは個人的に好きな女優さんなので、「2」はちょっと気になるかなぁ。
主な登場人物(ネタバレなし)
〇 探偵(大泉洋)
主人公。原作小説では「俺」と書かれ、映画でも名前は明かされていない。探偵を職業としている。札幌市の歓楽街ススキノにあるバー「ケラーオオハタ」が行きつけの店。携帯電話は持たない主義。そのため、仕事の依頼や連絡などにはバーの黒電話を使っている。
〇 高田(松田龍平)
探偵の〈相棒〉兼〈運転手〉。北大の農学部で助手をしている。空手の師範代で腕っぷしが強いが、普段は覇気もヤル気もない怠惰な性格。まともに走らないボロボロのビュート(車)に乗っている。
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主人公の二人が本拠地のようにしているのが、ススキノのバー「ケラーオオハタ」(KELLER OHATA)。
ここで、ひとつ疑問が。
店名「ケラーオオハタ」の「オオハタ」は、バーのオーナーの名前かな?――と想像がつくのですが、では「ケラー」(KELLER)って何??
というわけで、調べてみましたよ~!
〇[keller]
ドイツ語で「地下」や「地下室」を意味する。
英語では "cellar"。「ワイン・セラー」の "cellar"。
なるほど~。確かにこのバー、地下にあるお店でした!
"KELLER" って、ドイツ語だったのね~。
作中のバー「ケラーオオハタ」のモデルは、原作者の東直己さんが若い頃に足繁く通った「サントリーケラー」というお店なのだそう。(現在は閉店)
ある時期、東氏に仕事の連絡を取りたい時は、皆、サントリーケラーに連絡を入れていた――というエピソードから、本作の探偵にもそのような設定が使われた、とのこと。
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ある夜、このバーの黒電話に、奇妙な依頼が舞い込みます。依頼主は「コンドウキョウコ」と名乗る女性。いぶかしがりながらも、簡単な依頼だったため、探偵は引き受けることに。
ところが、その依頼を受けたことがきっかけで、探偵は「どう見てもその筋の人たち」に拉致され、雪原に生き埋めにされてしまい――。
というのが、本作の導入部分。
高嶋政伸が怪演!
本作において出色な俳優さんを挙げるとしたら、もう、一も二もなく高嶋政伸!
「えっ…… 誰!?」って思いませんか?
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普段の高嶋政伸さんは、こんな感じですよね。
悪人の役にせよ、善人の役にせよ、耳やおでこを出した “きちんと感” のあるヘアスタイルに、スーツ姿(あるいは白衣)―― というイメージ。
それが本作では、ストンと髪をおろし、耳が完全に隠れるダウンスタイル。前髪も目に掛かるくらい長くて、“ナゾ感” 高め。(米津玄師をはじめとする、最近の若手アーティストのようだ……笑)
おまけに、黒のレザーコートを着て鼻ピアスですから、本当に普段の印象とはガラリと違う!
これには驚きました。高嶋政伸さんって、演じる役柄はいろいろだけれど、外見の雰囲気については、あまりコロコロ変わらない(観る側としては)わりと定着的なイメージがあったので。
衣装さん、メイクさん、グッジョブです!
もちろんお芝居の面でも、外見の不気味さも相まって、作品の中で際立って強いインパクトを与えています。
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一方、主役の大泉洋ちゃん(なぜか、この人だけ “ちゃん” づけ。笑)は
「うん。いつもの洋ちゃんだね!」
(良くもなく、悪くもなく)
という感じで、ほとんど印象に残っておらず……。役のキャラクターにハマっていない訳でもないし、お芝居もソツなくこなしているのですが、なぜだろう? わたしの心に刺さる部分は特にありませんでした。(ごめんね)
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バディ役の松田龍平くん(こちらは “くん” づけ。笑)についても、『まほろ~』の時の「行天」と似た感じで、う~ん…… あまり覚えていません。(ごめんね、ごめんね)
松田龍平くんの出演作なら、どちらかというと『まほろ駅前多田便利軒』の方が好きかも。
わたしが一番に推したいのは『舟を編む』の時の「馬締」(マジメ)くんだけどね!♡
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一応、誤解のないよう申し添えておきますが、
西田さん、洋ちゃん、松田くん、と出演陣は好き。
と感想ツイートにもあるように、本作に出演しているどの俳優さんも、基本的には好きなのですよ♩
テレビの延長ではない、「映画」が観たい!
わたしの note では、これまでにも、たくさんの邦画(日本映画)をご紹介しています。
邦画について書く時いつも、どうしてもわたしが行き着いてしまう、ある “不満” というか “懸念” のようなもの――。
近年(主に1990年代~)の邦画は、テレビ番組の延長のようで、作品としてのクオリティが落ちているように感じる。
〇 ただ刺激的な要素だけが強調されている
〇 内容が浅い(脚本が原作に見劣りする。原作のないオリジナル脚本の映画も稀)
〇 お芝居が学芸会のよう(壁ドン系の恋愛映画など)
〇 多企業タイアップでの利権優先路線が透けて見えて、あざとさが拭えない(製作委員会方式など)
……といった、残念な点ばかりが目立ってしまう。
洋画や、昔の邦画は、観ていてそんなふうに感じることはないのに……。近年の邦画を観ていると、悲しい気持ちになることが多々あるのです。
このあたりの記事でも、少し触れています。
本作『探偵はBARにいる』の感想ツイートにも、このように書きました。
2時間ドラマっぽいなーと思ったら、『相棒』の制作陣なのね。面白い撮り方だった。美しい映像ではないけど。
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昔(主に昭和の時代)は、松竹、東映、東宝、日活、大映、などの映画会社が存在し、各社がそれぞれ専業の監督、脚本家、カメラマン、俳優を抱え、自社スタジオで映画を撮影していました。
黒澤明、小津安二郎、溝口健二、野村芳太郎、山田洋次――。監督の名前を挙げただけでも、錚々たる顔ぶれの名監督ばかり。彼らが生み出した映画たちは、後世に残る名作のオンパレードです。
今は、映画監督だけを専業にされている方って、何人いらっしゃるのでしょうか?
数十年前は映画会社のスタジオがその役割を果たしていた “後進の映画監督が撮り方を学び、育つ「場」” というのも、少なくなってしまっているのかもしれません。
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もちろん、近年の邦画の中にも、心に残る素敵な作品はあります。わたしが観ていないだけで、まだ知らぬ良作--そんな映画との出会いもゼロではないでしょう。
けれども、願わくば、こちらのツイートに挙げたような
「!!!」
という “喜びに満ちた衝撃” を、これからの邦画でも、もっともっと味わいたいのです。
「これぞ映画!」♡
と満足しながら、ひとりの映画ファンとして、その作品について語りたいのです。
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