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療育花育の記録 ともくん#9

ともくんは、平成25年生まれ。障害名はついていません。いわゆるグレーゾーン。普通学級に1年通い、勉強も頑張りました。2年生からは、障害クラスに入り、お母さんもともくんものびのびたのしく生活できるように少しづつなってきました。

いきものが好きで、カマキリを飼ったり、抜け殻を収集したり、遺跡を掘りに行くのが好き。いろんないきものにとても興味があり、調べるのも得意。おともだちからは、いきもの博士と呼ばれることも。

ともくん 2024026 「1本」



終了後の経過について 親御さんから

朝、「今日は疲れてるからお花やりたくない。」と言い、
学校に行く車の中で「今日はしたくない。」と言い、学校の帰りの車の中で

「今日は疲れているからしたくない。するんだったら1本だけにするわ~。」というので

「お花どうする?」と聞くと「庭の花にする。」と言うので
今回は庭のお花にすることになりました。

家に着いたら、しぶしぶ庭に行ってぺんぺん草を二本とってきました。内心「えっ、それだけ?」と思いました。

多分ここのところ学校(オルタナティブスクールに通っています。)で作業をすることが多いのか疲れ気味なのかなあとは思いました。

ペットボトルを花器にするというので、私が切ったペットボトルの器に、とも君が自分で切った吸水性スポンジを入れて花器を作りました。

教室が始まってもずっとだるそうな態度で、先生が札幌での雪が降ってる様子を話してくださった後、
「今日の花は何?」と聞いてくださると、
「今日は少ないよ。二本だけ。ペンペン草」
「花咲いてるの?」
「生き物は何もいないよ。」そんな会話が続き、
「今日は何に生けるの?」と聞いてくださったのでペットボトルの花器を見てもらった後、お花を生けました。

「土から生えたみたい。」と言いながらあっという間に生け終わり「もう生けた。」と報告。

先生は「春らしくていいわ~。」と言ってくださいました。
すると「鉱石飾りた~い。」と言い出し鉱石を飾りました。

とも君は、石や骨、化石が好きな子で、このところ鉱石にはまってて、その流れがお花にも来たなって感じでした。

先生は、雪の中に生けた作品を見てくださいました。それは川のそばで生けたもので、つぼみばかりでこれから咲くということ。
そこにあるものを生け花にするというお話をしてくださいました。

すると飾り物変えたいと言って、かんらん石、ローズクオーツ、蛍石、アメジストと鉱石の名前を言いながら次々とその鉱石を飾っていきました。

何でいっぱいあるのか聞いてくださったので誕生日に買ってあげたという話をさせてもらいました。
先生は、疲れた時は疲れた花で良い。それが自分の表現だから
と話してくださり、なるほどと思いました。

「すごく良い! 疲れた時ペンペン草良いわ~。」と言ってくださり、とも君も良い感じで自分でお花の写真を撮ったり、図鑑の地球のページを読みだし、
それに対して先生が「地球の真ん中は何でできているの?」と聞いてくださったり、 「岩石・鉱物・化石」の図鑑を持って来て、岩石の話をしたりして、次々と引き出されていく感じを受けました。

探求していくってこういう感じなんだなあと思いました。最後挨拶をして終わりました。バイバイと手を振ってました。

少し前、おばあちゃんが椿の花の枝を切っていると、その花のついた枝をバケツに挿して「僕、花育好きなんだよね~。」と言ったので、
そうなんだ~とびっくりしました。

花育好きなんだ~と再確認できました。



やっぱりあの時は疲れてたんだなあと思いました。素直にお花に出る子なんだなあって思いました。

それから、今までの花は未だずっと飾ってあってドライフラワー化しているんですが、久しぶりにどうするか聞いてみると「燃やしてあげて天国にバイバイしてあげたいな。」と言ったので、そうしようと言ったのですが結局まだしていません。花瓶がなくなってきたので困ったなあと思う今日この頃です。




とも君のお花が終わった後の先生の制作と創作は違うというお話は勉強になりました。
制作は同じものを作ること、悲しい時も同じものを作ること。花育は創作である。
疲れた時は疲れた作品。悲しい時は悲しい作品。心の表現がアートなのだということ。

今日のとも君はやりたくないけど1本生けようと思ったのは、お母さんを喜ばせれるから、お母さんの喜ぶ姿を見たいから、先生褒めるから鉱石持ってきたとしたら創作を作る段階にいっていないというお話は鋭い視点でした。


今回は特に今までになくお花を通して子どものその時の心情や行動を知ることができたように思います。


ついつい親は子どもにもっとこうしたらいいのにと思いがちですが、花育をすることで、今日のとも君はそういうとも君なんだなあと受け入れて肯定することができます。

花育は子どもが育つだけでなく親も育ててもらってるなあと、今日はより実感しました。
今回もお花から広がるとも君ワールドはおもしろいなあと思いました。
そうなっていくことができるのは、とも君の引き出しを先生が開けてくださっているからこそだと思いました。

今回もありがとうございました。

写真記録





1本ぺんぺん草と鉱石

前回を踏まえた検証と考察

次回はあきらくんと別日になり、ひとりきりなので、時間を区切らず、彼が納得するまで久しぶりにお付き合いしてみる。

お疲れモードと眠たいということで、短い時間で早々にご挨拶をして休むよう促した。

印象記録

何にお疲れなのかは不明だが、
「今日は1本しかいけないからね」と親御さんに事前に言って、庭のぺんぺん草を切って用意していたそうだ。
それでも花をいけようと決めることが、素晴らしい向き合う姿勢と感じた。

現場から

お疲れと眠たさとが相まっていたが、花をいけだすと目がキラキラとしてきて、誕生日に買ってもらったという、鉱石のたくさんの標本から、アメジストや鉄、等々を花とともに飾りだしていた。

最後には自ら率先して、自分で写真に作品を撮り、「先生に送って」と親御さんに話していた。

終了後、親御さんには、花の「創作(自己表現)」と「制作」は全く別物であるという詳しいお話をした。

「好き嫌いとその日のモチベーションは別次元」、ということを、親御さんに知っていただけたことは成果である。


次回考察

自分の今のこころや感覚を花で表現できるようになってきているので、引き続き、観察しながら信頼関係を構築していきたい。

―to be continued


2003年から一万人以上の方に花育をしました。現場でどんな風に、どうしたか、結果どうか等、遺さないまま頭の中にあり、書きのこして、いつか誰かの役にたったらいいな、と思い書き始めました。サポート励みになります。活動費として使わせていただきます。よろしくお願いいたします。