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あれから1年が過ぎた。



約何年たったろう?


いや、本当はたったの1年だけだ。



1年前の6月12日。

親友が21歳の誕生日を迎える。



この年のこの日は彼にとって
苦しい日々の始まりになる。



2限目の授業前に、いつものように
いや、いつもより増し増しで
だる絡み込で誕生日のお祝いの言葉をかける



僕も夜勤明けで、テンションがおかしい
捻りのない雑いボケで彼に絡みまくる。



いつもなら付き合ってくれる彼の反応がない。



1限目は彼は来ていなかった。
2限目から登校していた。

何かあるかもしれない。


そんな嫌な予感が僕の中によぎる。



授業終わり。彼の姿がない。



授業があった教室の近くのロッカールームが
ザワザワと騒がしい。先生の慌てる姿がある。



僕も見に行くと
親友が倒れていた。


脱力状態で、だんだん冷たくなる。


だんだん焦りが出てくる。
うぅぅと言いながら、荒く早い呼吸を続ける。


僕と先生が近くにいて
様子を見ながら声をかける。



だんだん呼吸が落ち着き、体温が戻る。



2人がかりでイスに座らせ
車椅子に移して、そこからは先生が
学校の休める場所に連れて行ってくれた。



昼休みなども様子を見に行き。
少しだけ会話を交わした。


放課後まで教室には戻ってこなかったが


放課後も様子を伺ったら
ある程度、回復したような顔を見せてくれた。




その日は、そんな感じで終わる。





それから何週間後。


1限目の途中。授業中の出来事だった。



また、親友が倒れた。




突然の「バタッ」と倒れる音。
誰だと思って、振り返ると親友が倒れている。



周りは突然のことに呆然としている。




当たり前だろう。
誰も見たことがなかった。




考えることもなく体が動いていた。

何故か、考えるよりも先に反応していた。



説明ができない感覚。
行かなければ何か失う気がした。




うずくまり苦しむ親友を目の前に
僕は何もすることが出来なかった。




ただ、そばにいて体をさすり
手を握ることしか出来なかった。



もう意識はない。
それだけは感じて分かっていた。




連絡を受け、駆けつけた担任の先生に
離れていいよと言われても
離れなかった。離れたくなかった。



何かに抗うように苦しむ姿


その姿を眺めながら手を握り



「大丈夫!大丈夫!」
「大丈夫や!大丈夫やから!」
「俺がついてる。俺がおる。」



それだけしか言うことが出来なかった。



時間が経つにつれて
落ち着く瞬間と苦しむ瞬間を行き来する



その時に、彼が小さな声で


「助けて……助けて……」


「奪うな……俺からこれ以上奪うな……」



そう呟く声が聞こえた。



それを聞いた俺は、何の確証もないが



「俺が助けたる。大丈夫や!助けたる!」


「何も奪われんぞ!ここにあるぞ!」



そう声をかけていた。


あれから僕が何かできたかは分からない。




彼は、今までも沢山失ってきたんだろう。


小さい頃からの夢だったり。

目指していた目標だったり。

その為に費やしたかった時間。

"当たり前"の生活をする時間。



沢山の事を諦めて、やっと手に入れた
"時間""環境""可能性""目標"を
またしても、奪われることになる。



そう無意識に感じて、それを彼は拒んだ。
だから、あの言葉が意識のない中でも
唯一、彼の口から振り絞って出たんだろう。




最初に1年前と話したが、
彼は約10年前から同じ症状に悩まされていた。


なんなら、僕達が当たり前のように見ていた
それまでの学校生活の中でも起きていた。



あの時に、ついに僕達の前に現れた。


ただ、それだけなんだ。



なんなら、よくあの日まで耐え抜いた。



彼はずっと戦ってきていた。
誰にも理解されない、話すことも出来ない中、
1人で逞しく強く、精一杯の努力し続けていた。




少し落ち着いてから担架に乗せ
教室の外へ連れていく。



男子の何人かで連れ出し
少し広いところで寝かせると
生徒は授業に戻りなさいと言われる。



僕も戻ろうとした。



ずっと握っていた手を離そうとしたら
意識の無いはずの彼の手が僕の手を握り続けていた。他の部分は完全脱力状態だった。
それを見て、先生も僕だけ
しばらくの間、そばに居させてくれた。



彼はこんな時でも優しい。
しばらく経つとゆっくりと握る手を
緩めて僕の手を離した。


お前も授業に戻れ。



そういうことだろう。



いくらでも居てやるのに。
ツンデレ野郎め。



その後は、僕も授業に戻った。



1限目が終わった後、1階におり、
先生を尋ねると、さっき救急車に乗って
検査を受ける為に近くの病院へ行ったと言われた




てんかんの疑いがあるようだ。



脳波、MRIなどの検査。



その日のうちに連絡が取れた。



やはり、てんかんのようだ。



彼も今まで原因不明だったものが
少し分かって安心したと言っていた。




ただ、それは今までの不安の解消とともに


沢山の活動の制限を意味した。


彼の場合、てんかん以外にも
色んな症状が重なっており
普通の生活を送ることも難しい面があった。



詳しい内容は、彼もこのアプリで
ブログを書いているので、そちらを読んで欲しい。


サングラストレーナー藤原



これで、ぜひ検索してみて。
彼の体験から語られる言葉は、すごいエネルギーが感じられる。ぜひ読んで欲しい。
なぜ、サングラスかも分かるから。




倒れた日から彼は物凄い努力を重ねた。




1度、学校へ復帰するも
再び倒れ、救急搬送。



絶望が彼を1度は覆い尽くしただろう。



それでも、彼は諦めなかった。


環境が変わっても、条件が変わっても。

彼の信念がブレることはなかった。



自分で社会復帰するための目標を考えて
着々とその目標を驚異的なスピードでクリアしていき、驚異的な回復スピードで戻ってきた。



自分で考え、できることを最大限活用して
ハンデとなったサングラスも武器にして


持ち前の発想と発信力で
みるみる新たなキャラクターを確立した。




その中でも、色んなことが起きたが、
入学した当初からやってきたように
2人で考えてることを話しながら
未来の野望を語り合って、必要なことはなにか。


また切磋琢磨する日々が帰ってきた。




彼は今は、トレーナーとして活動する為に
勉強を1からやり直している。




そして、1年経った今日。

彼は、22歳となった。



今年は、苦しい日々の始まりでは無い。


僕と彼の挑戦の始まりとなる日。



明日がその第1歩となる。



1年前からの血の滲むような努力をした
彼が持つ実力を解き放つ素晴らしい門出だ。





しかと見ときな格の違い。



それくらいのつもりで行く。



その為の準備を僕達はしてきた。


見てなくても分かる。
彼はアホほどしているよ。





これを読んでいる同級生。



あの日を思い出せ。


彼の姿を、最後の言葉を。



何をしている?



知識を得るだけで満足するな。


その先を見つめよう。


あまり比べるのは好きじゃないが
彼の状況に比べれば、大したことないだろ?


甘えたこと言ってんじゃないよ。



あと、相手の気持ちを考えようぜ。

相手の状況、背景を想像しようぜ。

自分が知らない部分なんて山ほどあるよ。

決めつけて意見を決めるな。



言動に責任を持とう。


僕もできてないこともあるから
そう思ったらボロくそに言ってくれ。



そうやって切磋琢磨しようぜ。


負けるな。


あんたならできるから。





じゃあね。

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