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波累の話④

〜続・母と私〜

小学校の卒業式が近づいてきた頃の、参観日。
授業参観後に中学校の制服採寸があった。
私の保護者は誰も来てくれないが、一人で挑むつもりだった。
一時間目の授業中、私は石油ストーブの前の席。
誰も観に来てくれない。
ストーブが熱い。石油臭い。吐き気がする。気持ち悪い。
六年間で初めての保健室のベッド。
顔面蒼白。
何回も吐いた。苦しかった。
少し落ち着いた頃、保健室の先生と話す。
どうやら、今、私の家族に何が起こっているのか知っているようだ。
「自分の気持ちに素直になって。」
と声を掛けられる。
この人は私が母についていかない事について言っているのだろうか?
身体がだるくて、ぼーっとしてる頭で考える。
なんて答えたのか覚えていない。
しばらくして、祖父が迎えに来てくれた。
結局、制服採寸出来なかった。

卒業式の予行練習。
休み時間に同級生に囲まれる。
親が離婚する事をみんな知っていた。
制服採寸に私が行かなかったから、母に付いて引っ越して行くと思われていたらしい。
心無い子供の言葉と好奇心に傷ついた。
一番仲が良かった子は、何も言わなかった。

この辺りから、母と私は少しづつすれ違う。
電話の回数も徐々に減った。
母に言うべきなのか悩むこともあった。

卒業式。
父だけ参加する。
私の卒業式用の服は母が、用意してくれた。

弟の引っ越しの日。
母の荷物もすべて運び出す。
大きな婚礼箪笥がなくなった。
弟とは、同じ部屋だったので、私は一人部屋になった。
この時は、泣かなかった。
一人部屋になって嬉しかったくらい。
食事の時も泣かなかった。
母と弟がいなくなった。

私は、寂しさや悲しさに少し慣れたみたいだ。



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