思い出には青色のフィルターがかかっている
机も椅子もないただ人が密集している教室。
酸素は薄いけど、窓ガラスは湿気で水滴ができていた。
ギターとベースの音の余韻が残っている中、マイクに向かって話し始めた。
そんな高校3年生の文化祭。
できれば人前で話したくないし、むしろ人前で話すことが苦手だから”音”に頼って言葉と気持ちをそこにぶつけていた。
それにMCで時間を稼ぐならその分”音”を鳴らしていたかった。
それでも目の前にマイクがある以上、何かは話さなければいけないわけで、前日の眠る前に、ライブが開かれる教室を想像しながら必死に考えた。
まあそんなことは酸素の薄さから全て忘れてしまうわけで、訳もわからず頭に浮かんだ言葉を話していた。
いかにもロックらしい。
その当時のビデオが残っていて、恥ずかしいと思いつつも気づけば再生ボタンを押していた。
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青春という言葉について。
別に春になっても”青”を感じないし、どちらかといえばピンクというか桃色というか。
年上の人は、今みたいな高校生活を青春と言って物思いにふけているけど、その生活を送っている今この瞬間に”青”は感じたことがない。
むしろこの空間は暑過ぎて、爽快感なんてものは皆無だね。
だから青春というものは、その箱の中で生きている人は気づかないけど、
その箱から出てきた人は、その時に初めて箱の色が”青色”だったと気づくのかな。
5年後や10年後に振り返ったときに、この瞬間が青色に見えていたらいいな。
そんな”アオキハルヘ”
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もっとグダグダで、決してかっこいいとは言えないようなMCだったけど、まとめるとこんなことを言っていた。
次の曲に繋げるには違和感がないし、それに自分自身が”箱”の秘密を知ってしまったような、達観したような考えを持っていたことに驚いた。
今となれば本当に、当時の思い出は全て”青色”のフィルターがかかっている。
未だに残っていた、高校生の時に作った”This is 高校生”というApple Musicのプレイリストを、
”This is Blue”に修正した。
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