動画スタートアップが着物リメイクのファッションブランドをインスタで立ち上げたら30日で本業よりも売れてしまった話
※編集 Feb 15th。ポッドキャストで学びをまとめました。
タイトルイコール結論なのですが、2022年9月末から3ヶ月、自社の顧客理解のために90日でゼロから事業を立ち上げるというチャレンジをしてました。90 days challengeを通しての学びがとても深かったこと、また想定通り(それ以上?)結構売れたこと、さらに次の事業のネタに繋がるという思ってもないものを手に入れたので、せっかくなのでシード起業家の方、もしくはToCマーケをこれからされるような方の参考になるかと思ってブログでシェアすることにしました!
そもそも我々のチャレンジを初めて聞く方が多いと思いますが、その場合はこちらのブランド@etsuka_fashionをチェックしてみてください。
https://www.instagram.com/etsuka_fashion/
顧客理解のためにブランドを立ち上げてみた(週末副業で)!
年末に、こちらのnoteブログでも振り返りを書いたのですが、典型的なシード起業家として、”リリース直後に事業がグッと伸びたり、そのあとはなかなか伸びなかったり”を経験した一年でした。
6ヶ月くらい伸び続けていた右肩上がりの成長が止まり、やるべき施策もほぼやり切ったくらいのタイミングで、改めて原点に立ち返りました。
「よし、顧客理解のために顧客と同じようにゼロからブランド立ち上げて全部学びなおそう!」と。
普通なら、顧客理解のために顧客に会いに行こうとか、インタビューしようとかだと思うのですが、それはもうもちろんずっとやっていて、100社以上はゆうにインタビューしてますし、創業前も入れるとおそらく200社以上。これ以上、理解するならもう「自分たちでやる」が一番だろうと。
多分意外と、ここまでやるスタートアップはなかったりするかなと思いますが、BToBで対象がSMEsということもあり、これが顧客理解のために最短だと思いつきました。
Co-founderミミが90日間で10M Peso(2,500万円)の事業づくりにチャレンジ!
インスパイアされたのは、本家のUndercover Billionaire。めちゃくちゃ面白い。「100ドルの資金を元手に90日間で100万ドルの価値がある会社を作り上げることはできるのか?」 を億万長者になった人が、正体隠したゼロから事業をつくっていくドキュメンタリーです。
こちらの動画、一時期、スタートアップ界隈でちょっと流行ったと理解してます。自分たちも日本語訳版が出たタイミングでfacebookで知りました。こちらのダイジェスト版いいです。
本家のルールは以下です。
かなりのサバイバルモードで初日はトラックで寝泊まりからスタート、最初はビジネス云々よりも、まずは家を探すことからみたいな設定です。
流石にこれはただでさえ体が弱い共同創業者のミミにはハードすぎるので、以下で設定しました。
家と食料は確保する代わりに、時間に制限をかけました。
なぜなら、ほとんどのスモールブランドのオーナーは、まずは副業として始めながら、事業が軌道に乗ったタイミングでフルタイムに切り替えます。
なのでそこはリアルな設定で再現しました。
Phase 0 :最初は事業を始めるための原資づくり
10K pesoつまり2万円ちょっとしかないので、まずは最低限のプロトタイプが作れるお金を集めます。セカンドストリートに行って、古着を売ってみたり、いろいろしてました(私はカメラマンとして追ってました)。
このステージは、忠実に本家の番組に乗っ取って、コンテンツ的に面白くなりそうだと思って撮影してましたが、途中で撮影やめてしまったのであまり意味なかった。笑
流石に事業を始めるのにこんな少額しか持っていない人はいないと思うので、今振り返るとショートカットでスキップしてもよかったなとも思います。
でも、実は結果的に、ここでミミが小遣い稼ぎをしていたアクションが後の事業アイデア着物リメイクファッションに繋がります。
どういうことかと言うと、実は小遣い稼ぎに、日本のドンキホーテでライブをして、欲しいものを聞いて物を買い、シンプルにそれをフィリピンに持っていくという方法で結果7万円くらい稼いでました。この時に、日本が大好きで熱狂的なフィリピン人コミュニティがあることに気づきました。びっくりしたのですが、旅行で来た人がドンキのものをfacebookにポストしてそれを普通に買ってたりするんです。
ちなみにどんなものが買われるかというと、それこそネスカフェのコーヒースティックだったりとか僕らからすると、「え、それ?」みたいなものが多かったです。
ここで”日本”という事業アイデアのキーワードをミミは見つけました。
Phase 1 : 「そもそもアイデアで勝負あり」ということに気づく
正直このチャレンジは、ミミのセンスである程度成功したと思っている。成功の定義にもよるが、二つゴールはあって、「ゼロから一つは立ち上げて学ぶこと」もう一つは、コンテンツとして「1000万ペソ」のバリエーションを目指すこと。
前者がしっかり学べたのは、ミミのスピードの速さである。90日で事業を立ち上げる、しかも副業縛りであることは相当難しい。
私は簡単に「はい、やって」とお札だけ投げたけど、簡単なことではない。
ミミが何をしたかというと、すごくシンプルで、自分が課題だと思うことを世に問うてみて、リエクションを見ていけそうと判断したら事業化する。このスピード感と勘と思い切り。
Pinterestなどでリサーチを兼ねつつ、インスタを活用してインタビューを取り、投稿のエンゲージメントをチェックしたり。
自分たちの顧客を見てみた際に、そもそもこのアイデア段階で”失敗”しているブランドが多いことに改めて気づいた。
正直、我々の顧客の中でも、「流石にこのブランドはどんないい動画を我々がつくっても難しい、、」と思うようなブランドは見かける。もちろん、我々もベストは尽くす。でも「語るものがないブランド」は正直難しい。
中には語れていないだけ、言語化できていないだけのブランドもあるかもしれないが、そもそもコモディティ化しやすい美容領域や、フード領域で何も特徴がないブランドは苦戦しやすい。
Y combinatorでも「"Build something people want”」という言葉があるが、まさにそれ。
Make something people want。
例えToCであってもしっかり課題が解決できるものか、もしくは本当に熱狂的に欲しくなるものか。
ここは変わらない。
当たり前だが、ブランドの成長度合いって意外とむしろここでほぼ決まるんじゃないかと思えた。
このブログでは触れないが、この気づきは今後のディシジョンメイキングの、すごく大きな要素になる、と伏線を張っておきます。
Phase 2 : めちゃくちゃ非効率でストレスの溜まる製作フェーズ
一番ストレスが溜まったのがこのステージ。いざ、製作しようとなるとまずは服を製作してくれる人を見つけないといけない。これが本当に大変だった。
どうやって見つけたか?
まずはFacebookのグループに行きます(フィリピンは何でもFacebook)。
そこで「縫い手さんを募集してます!」と投稿するとコメントやDMが50件くらい届く。
そこから精査。サンプル出してもらって、
一見、ここはすごく非効率でDX化しがいの領域だと思った。が、よくよく考えると我々の既存事業のビデオマーケティングと似ている。
FB投稿して、コメント来て、それを一見一見チェックして、、、
そう、これはまさに我々がDXしようと取り組んだこの一年の課題とまさに同じ。
クリエイター探しと全く同じプロセス!
つまり、我々からすると「めちゃくちゃ非効率で改善しようがある領域に見えるけれども、それに慣れているという現状」がすごく似ている。
多分我々が参入しても、同じことが起きそうな気がしている。いや、絶対に起きる!
ここは少なくとも”今は”行ってはダメな領域のはず。
(インドネシアなどにはそういうスタートアップはある)
ちなみに結局どうやって、縫い手さんを探したか?
顧客からの紹介でした。
フィリピンでは、最終的に紹介が一番信頼できるということです。
Phase 3: 実は思ったほど自分たちが自分たちのサービスを活用してなかった
さて、ここからはローンチへ。
具体的なキーワードとしては、”ブランドストーリー”。ストーリーが全て。
写真でも動画でも、ストーリーのあるコンテンツがエンゲージメントが高かった。例えば、こちらは、どうやってEtsukaが始まったのかみたいなコンテンツ。
エンゲージメントが高い、すなわちバズったかどうかは、10K viewあるかどうかを基準にしているが、大体8回に1回の割合で、オーガニックにプチバズっていた。
一つ気づいてしまったこととしては、自分たち自身が思ったほどショート動画を作らなかったこと。これは大きな学びだった。気づけてよかった。もちろんショート動画はあったらあったでいい。でも、一人で全部10個の仕事をこなさないといけないようなスモールブランドにとっては、そこまで手が回らない。仮にミミが数名チームがいたとしても、動画はあくまでBetter to haveだ。
Etsukaでは、どうしたかというと、写真7割ほどに対して動画3割ほど。1週間に3回ほど投稿するので、週の動画は1本ほど。
むしろプロダクトが届いてから、クイックに写真を撮れるというところに、我々のクリエイターの強みを感じた。
実際に感覚派のミミが、ショート動画をたくさんオーダーできるはずなのにしなかったこと。この学びは深い。
キングダムに例えると、ミミは直感型の武将麃公だと思っている(少しマニアックですみません)。嗅覚が鋭い。自分でも自分の行動を論理で語れない。だが、だからこそ強さを発揮するタイプ。
仮に自分がこのチャレンジをやっていたら、おそらく意図せずに意図的にショート動画を多めに使ったりしていたと思う。改めてミミにやらせてよかった。
そして、ここがポイント、スモールブランドの多くはこの感覚型のプレイヤーが多いはず。中には理論派もいるだろうが、日本と同じようにかそれ以上に優秀な人間が企業に行くことを考えれば多くは感覚型だと思う。
ちょっとマニアックは話にしてしまったが、結論、感覚的にやってショート動画をあまり作らなかった。これが全てだと思っている(とはいえ使うところは使った)。
Phase 4 : 気づいたら、本業よりも売れてしまったKimono Pants
ちゃんとやれば売れる
9月後半から始めたものの、アイデアが固まったのが11月頭、そして実際のプロダクトのリリースは、11月半ばでした。90日間のうちの最後の30日間くらいでほぼ集中して売ったことになります。
ローンチ前後のアクションと気づきをまとめると以下のような感じ。
アイデア段階ではAIでサンプルをつくってもOK。実際にMimiもそのようにインスタで投稿した。AIもっと使える。
初期のプロダクトにお金をかけすぎない。最小限のロットで最小限の検証。お金をここでかけすぎ現象多発。
バザーに出て、プロダクトが本当に売れるかどうかを検証するのは大事。バザーは売るところだと勘違いしている人多い。
まだバザーはセールス売るところでもあるけど、試すところ。特にプライシング。
バザーでは、愛嬌よく声を掛ければ客は捕まる。ほぼ確実に。でも99%のブランドがそれができてない。
こうやって振り返ると改めて、我々の顧客が面していることがわかり、そして何が苦手なのかも事細かく分かった。いかに自分たちの事業領域以外のところにペインが深いかもよく分かる。
こうしたプロセスを経て、Etsukaもローンチされたのだが、やったことはいたってシンプル。ちゃんと期限区切ってローンチして、ちゃんとコンテンツを定期的に投稿して、ちゃんとバザーに出て値段を検証し、ちゃんと売る。
これができればブランドは立ち上がることが検証できた。
一つのチャンネルに一点特化
ミミはWebサイトもつくってないし、インスタグラムだけ。何ならフィリピンでほぼみんな使っているfacebookページさえもつくっていない。このPodcast episode1でもミミと振り返ったが、「ワークするチャネルを見極めてそこでやり切る方が、いろいろ分散するよりもいい」と思っている。
今回はインスタとバザー。この二つに特化。リソースが限られる中で、どこにフォーカスするかは我々スタートアップと同じ。
プライシングは鬼門
また、アイデアと同時にすごく大事なのがプライシング。これはスモールブランドあるあるの間違いをミミ自身も経験した。何かというと、最初売れないことを恐れるがゆえに、低く値付けしすぎてしまって、そのまま変えないこと。気づいたら、実は原価の計算を間違えていたりして、思ったよりも利益率が低く、気づいたら全然儲かってないみたいな現象がある。
ミミの場合は、FREEレーバー(タダ働き笑)である「旦那」の私を休日のバザーに呼び(旦那彼氏が手伝わされるあるあるパターンとしてこれは容認)、私が初日の昼の時点で売れすぎていることに気づき、値段を上げさせた。実はkimono pantsは最初2500 pesoで売っていたのだが、今では4500 pesoないしはカスタマイズは7,000 peso(円安もあり18,000円ほど)にのぼる。
プライシングは意思だ。どのマーケットに売りたいのか。アイデアステージの次に大事でかつみんなが間違えるところだと改めて理解した。
ここも、ペインが深いということは、ビジネスアイデアになる可能性はあるのだが、スタートアップとしてこの課題を解決できるかはかなり難しい。
12月のクリスマス終えた時点でちょうどこの90 days challengeは終わりを迎えた。当初の10M pesoのバリエーションのためには、ミミがGoogleで調べたところによれば、700K pesoの月間の売り上げかつ40%以上の利益率で到達可能とのことだった。このあと、バリエーション算定を実際にしてもらう(1/16実施予定!)のだが、700K pesoは到達していないので、多分10M Pesoのバリエーションは到達不可。コンテンツ的には失敗、、になりそうですが、それでも400 pesoほどに到達した。つまり日本円で1ヶ月で100万円は売れたことになります。現在の我々の本業のビデオマーケティングの売り上げを超えてます。
しかも、一人が副業で立ち上げての結果です。
顧客理解のベストな方法は聞くよりも"自分でやる"ことだった
このブログでは、「顧客のことを知りたければ聞くだけでなく、自分で”やる”が一番だった」という振り返りを元に、学んだだけではなく思わぬ形の副産物も手に入れたストーリーを共有できたと思います。
今同じようにシード起業家として戦っている方の参考になるかなと思うと同時に、ToC領域でマーケティングに試行錯誤している方にとっても何かしらのハックを提供できていたら幸いです。
よくスタートアップでは、顧客理解のために「顧客の話を聞け」とよく言われるますが「顧客と同じことをする」が一番学べることを改めて実感できました。
我々は、UGC動画マーケティングの会社なので(2024年1月時点)、主にブランドをサポートする領域は、マーケティング領域です。
ですが、ブランドはマーケティング以外にもやるべきことがたくさんあります。私たち自身がピッチで言ってきたように、10個くらいの帽子を一緒にかぶってます。プロダクション、ロジスティクス、セールス、カスタマーサポート、ファイナンス、オペレーション、、などなど。
マーケティングのところだけやってても、本質的に顧客のことを理解するには限りがある、一旦我々の顧客と同じ設定で2023年にブランドを立ち上げるなら何をして何に困るのだろうかをもう一度見てみようと思いました。
そこで90 days challengeでした。幸いにも期待していた以上のラーニングになりました。
実は、kamilas4am株式会社の起業前に、Kamila’s 4am Artとして、スモールビジネスオーナーの経験はありました。そこで、マーケティングの力によって事業が成長することで、ビジネスオーナーが輝き周りの人を幸せにできる実体験をしたからこそ、スタートアップとしてスモールブランドを応援する側に回りました。
でも、それは数年前の話。今2023年にビジネスをしたらまた違う学びがあるに違いない、と思ってはじめました。結果、その通りでした。
また、自分たちでスタートアップを始めた後にスモールブランドを立ち上げることと、”始める前にやっていた”というのも、ラーニングの濃度を劇的に変えました。なぜなら、スタートアップ起業の前はあくまで遊びの延長、今は本気でなんとかしたいと思っているという自分たちのマインドセットの違いも大きかったと思います。
90 Days challengeを終えて、この先へ
本当は、90日を終えて、(できれば)売却をする予定でした。
売却できるかどうかはおいておき、あくまでラーニングとして考えていたので、しっかり区切りをつけようと。
でも、気づいてしまったのです。
ショート動画をつくるよりも、Kimono pantsを作った方が儲かるではないか、と。もちろん、クリスマスという時期も重なって売れたことは、間違い無いです。
それでも、フラットに数字を見た時に、どちらが売れているかは明らか。。。
あれ、、?これが僕らの本業?笑
そんな疑問を抱えて、コトに向き合っているのが私たちです。
今月新たな方向性に歩み出すかもしれません。
以前、Podcastでも2023年夏頃に一度ピボットを検討して(実際にMVPをいくつかローンチして検証した)、結局しなかったという経験をしてますが、今回は
実は、フィリピンを中心とした東南アジアでは、スタートアップだからと言ってテック系のスタートアップばかりではありません。50M調達しているLove Bonitoというシンガポールの女性向けファッションスタートアップや、40M調達しているPick up coffeeというフィリピンのスタンドコーヒーチェーンのスタートアップなど、人間の根幹である”衣食住”の範囲のビジネスをいくスタートアップの躍進もあります。
また日本に目を向けても最近ではyutoriの上場ニュースがあったり、コマース×東南アジアという領域には可能性を感じてます。
また、今回の90 DAY Challengeと昨年1年間の振り返りを合わせたときに、ToCの方が自分たちのビジョンに近づけそうだという別の視点の気づきもありました。
「波が起きそうなところに行く」
よくスタートアップの世界では、波とサーファーで例えられますが、同じところで1年間波待ちした上で、見切りをつけて、別のところに波を探しに行くかもしれません。
少なくとも、今月から私もEtsukaへのコミットを増やしていくことにします。
学びをこちらのSpotifyとYouTubeで4回に分けて共有しているので、フォローしてください!
また、90 DAY Challengeの詳細レポート(英語)をまとめてあるので、もし欲しいという方がいらしたらDMいただければ可能な限りで共有します!
以上です!
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