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理想の本棚Ⅱ ー謎多き魔法使いー 虎人舎・金剛の本棚





魔法使いと芸術家の二刀流を放つ青年



 前回のnoteで若林凌駕氏(22歳で「古本興業」を立ち上げた放送作家)の「理想の本棚」を紹介しました。今回は二枚目アーティストの金剛氏の「理想の本棚」の配信動画を紹介しましょう。それにしても、金剛氏とはいったいどういう人物なのでしょうか。
 金剛氏には二つの障害を抱えています。一つは解離性同一性障害(多重人格)。もう一つはクライネ・レビン症候群(眠り姫症候群)。
 多重人格とはいったいどういう症状を引き起こすのでしょうか。日本精神神経学会に所属する京都大学の岡野憲一郎教授によると、以下のように解説します。

< 解離性障害の中で最も深刻で、しばしば精神科の治療の対象となるのはいわゆるDID(解離性同一性障害、昔の多重人格障害)と解離性遁走です。DIDではいくつかの異なる人格が形成され、それぞれが自律的に行動を起こします。そしてしばしばお互いの行動を記憶していないということが生じ、そのことで自分自身も周囲の人々も混乱します。このDIDの背景には、幼少時の長期にわたるストレス体験が考えられます。というのもDIDの方の多くには、すでに幼少時に解離傾向や別人格の存在がうかがわれるのが一般的だからです。ただし幼少時の虐待などの経歴が明確に見られない場合もあり、この成立の過程にはまだわかっていないことが少なくありません。>

※太字は筆者強調

公益社団法人 日本精神神経学会『岡野憲一郎 先生に「解離性障害」を訊く』2024年9月24日

 では、具体的な治療方法はどうでしょうか。

< 解離性障害の治療としてはなによりも、専門家により正しい理解に基づいたアセスメントと診断を受けることが出発点です。解離性障害は決してその診断が難しかったり特別な専門的な知識を必要としているわけではありません。その意味ではほかの精神疾患と同じです。ただし治療者の側に解離性障害という診断を下すことに抵抗があったり、その疾患自体を受け入れがたいということがいまだに起きています。その意味では非常に特殊な精神疾患と言えるかもしれません。そのために自分の症状の話をしても怪訝そうな顔をされ、「誰に話してもわかってもらえなかった」という体験をする人が少なくありません。治療者がそれを正しく理解し、説明することはそれ自体が不安の軽減や将来への希望に繋がります。>

※太字は筆者強調

前記事 より

  精神医学の専門家でも一種の精神疾患によるものだと突き止めていますが、詳しい治療方法はまだ判明していない模様です。
 一方、眠り姫症候群はどのような病気でしょうか。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所のホームページによると、次のような説明がなされています。

< 過剰な眠気と睡眠時間の延長が、認知や行動の変化とともに、繰り返し現れるのが特徴です。数日から数週間続く過眠症状が、年に数回から10回以上みられます。夢を見ているように現実感が失われ、食欲や性欲が亢進し、抑うつ的となる場合もあります。>

国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部『中枢性過眠症』公式HP より

 さらにこの睡眠系の障害はnews23の報道番組で、ある中学生の生活を例に出し、中枢性過眠症の実態を報じています。世界全体で約600例しかない報告されていない稀少疾患です。

 金剛氏はこれら二つの障害を抱えながら日常生活を送っています。健康医学の世界では以上のケースが存在することを知っておくとよいでしょう。

 金剛氏は天才的なアーティストと呼称されています。普段は芸術家として絵を描きながら過ごしていますが、もう一つの顔は”魔法使い”だと自身を語っています。さて、”魔法”を極めるためにどんなことをしているのか。真相は動画の中で掴むことができます。

 ただし、金剛氏の本棚に飾る本はどれも学術系の専門書を保有しています。難解な文章で書かれているものがほとんどであり、我々一般の人々からすれば取っつきにくい分野だと思います。
 そこで私は動画からいくつかの興味深いテーマを取り上げ、それに関して一般の人々でも手に取りやすい書籍や四方山話を紹介していくことにします。本稿を読んでいただければ、金剛氏の関心のある学術分野についてグッと近づくことができると思っています。



金剛の本棚 ー音楽ー



 まず、先ほど腰掛けていた作業台の目の前には制作に使用する頻度の高い実用書、もしくは教則本が並べられています。一番右手は音楽の本。楽譜はもちろんのこと、作曲時に使用する音楽理論の書籍、楽典、音楽形式に関する書籍、またジャズ理論など音楽のジャンルによって良い音・悪い音など理論に細かな際があるので複数冊所持しています。ピアノの楽譜以外にも声楽・管楽器の教則本もございます。

YouTube 水道橋博士の虎人舎 【本棚紹介】杉並区在住 魔法使いの【理想の本棚】2024年12月18日

 金剛氏は楽器を演奏することがままあるようです。作曲時に教則本や音楽理論の学術書に目を通し、良い音と悪い音の分け方を把握し、楽曲つくりに活かしています。

 作業台に置いてあった音楽の書物の中にジャズ系の本があり、私も興味津々でした。私が所持している一般向けの書籍を取り上げるとすれば、ジャズ評論家の後藤雅洋氏が書いた『ゼロから分かる!ジャズ入門』(世界文化社)が手に取りやすいでしょう。テレビや映画、ラーメン店に流れるBGMのジャズはどんな音色を奏でるのかを本書で知ることができます。

 音楽家であり、ジャズ・ベーシストの巨匠として知られる鈴木良雄氏の『人生が変わる55のジャズ名盤入門』(竹書房新書)は参考になります。テレビタレントのタモリ氏も「”聴けばわかる!”」との推薦文を寄せています。

 一例を挙げるとすれば、Frank Sintra氏のDay By Day(1999 Remastered)は良い曲です。この曲を聴くと心がウキウキしてきます。私がこのジャズ曲を知ったのは英語学者の大杉正明氏による紹介でした。NHK連続テレビ小説の『カムカムエブリバディ』のラジオ英会話で一押ししていたからです。



ダンスとバレエ



 お次は、ダンスの書籍。一押しは、ワガノワ著の『バレエ教則本』。一つ一つの技術に丁寧な説明と挿絵付きで非常に役立つ本となっています。お次は、衣装の本のコーナー。こちらは和裁。寸法や生地の扱いも正確に書かれています。その横にはフランス刺繡。美しいフランスの刺繡のその技法。刺繡のデザインの品。また、刺繡糸と露番号の対応表まで。大きな型紙も付いております。こちらは女性の衣装がどのような変遷を辿ってきたか、一目で見てわかる資料と、その歴史について詳細に記載されている本となります。イラストを描くにも物語を書くにも非常に役立つありがたい本です。ここまでが衣装に関するお勉強などすれば、実際に使用されているシーンを見られるのはこのバレエの写真集。美しいですね。

水道橋博士の虎人舎 YouTubeより

 金剛氏はダンスやバレエの教則本を手に取りながら、創作活動に生かしているようです。衣装の寸法から刺繡に至るまで幅広く、ここから新しいインスピレーションを生む要素を含み込んでいます。

ワガノワ『バレエ教則本』 動画より

 バレエに興味のある読者はいることでしょう。舞踊評論家の海野敏氏の『バレエの世界史』(中公新書)でバレエの世界を歴史から概観することができます。かつて王侯貴族が楽しんだ芸術がいつしか舞台に発展を遂げ、十九世紀の西欧とロシアで成熟したという経緯が書かれています。



日本画の技法



 お次は、日本画の技法書です。日本画の絵具の種類、その扱いの違い、にかわき方や絵具の塗り方、画面に塗り込む時の技法まで。こちらは名作から日本画の技術を読み解く書籍。この二冊から、大変多くのことを学びました。

水道橋博士の虎人舎 YouTubeより

 日本画の技法も創作に取り入れているようです。タイトル名は小川幸治編著『日本画 画材と技法の秘伝集』(日貿出版社)。「幕末の狩野派に学んだ絵師が書き残し、大正末期に東京美術学校がまとめた日本画技法書『丹青指南』」との説明文が書かれています。値段はなんと7,700円。高価な書籍です。今年(2024)、新装第二版も刊行されました。こちらの値段はさらに高く、8,250円。芸術家や研究者が主に使用するテキストでしょう。

 私たちのような一般市民には到底挑めないものです。ただ、日本美術の素晴らしさを追体験したい読者もいるはず。そこで参考になるのは、美術史家の山下裕二氏の『日本美術の底力』(NHK出版新書)です。縄文・弥生から現代に至るまで日本美術がいかに進化してきたかを知る手がかりになるでしょう。美術館に足を運ぶ際には本書を持ち歩くと便利です。



季語・歳時記・近代詩文書基礎講座



 少し上を見上げてみると、俳句の季語、能や茶道の書籍、小型の図鑑が並んでいます。先ほどの本たちとこの文書基礎講座、また大型の歳時記はどなたかに手紙をしたためる時、手書きで文章を書く時、手元に置きながら確認するようにしております。冬場、年末、新年のカテゴリーだけでも大変に多くの文化がこの日本には存在していることが見て取れます。破魔矢や歌留多など見たことも聞いたことも遊んだこともあるけど、深くは知らない物事もしっかりと教えてくれるのです。文書基礎講座では同じ文字に対しても様々な時代の表現を確認することができます。変体仮名で文章を書く時に参考にするには持って来い。皆さんも是非、所持しておきましょう。

水道橋博士の虎人舎 YouTube より

 他者に対して御礼の手紙や冠婚葬祭の文書をしたためる際に、季語にも文章の作法にも気を配るようです。金剛氏の誠実さや日本文化に対する熱い眼差しが伝わってきます。金剛氏が勧める『近代詩文書基礎講座(第1巻)』は1982年に近代詩文書作家協会から刊行されたものです。

 最近はSNSの普及でめっきり手紙や年賀状などの紙で書く機会が減りました。せめてもの相手に新年のご挨拶や祝辞の言葉を述べる際には美しい言葉を覚えておく必要があります。一般向けの書籍としては小学館国語辞典編集部が編んだ『美しい日本語の辞典』(小学館)が参考になります。コンパクトに仕上がった辞書です。美麗な日本語だけでなく文章の作法や季語など我々日本人にとって欠かせない項目が網羅されています。手元に置いとくだけで損はないと思います。

 読売新聞編集委員の関根健一氏が監修を務めた『品格語辞典』(大修館書店)も言葉の品格を磨くのに打ってつけの辞書です。手紙やブログ、文学作品を書く時にも助け船となるでしょう。洗練された文章が書けるようになるはずです。



広辞苑



 調べ、学び、確認するための資料としては鉄板。広辞苑。内容は言わずもがな、ですね。

水道橋博士の虎人舎 YouTube より

 金剛氏が所有する『広辞苑』は第二版です。現在は第七版。時代が流れるにつれて新しい言葉は誕生していき、古い言葉は「死語」となる。なんとも儚い限りです。
 金剛氏は辞書を引きながら文章を書いているようです。言葉の正確な意味をしっかり押さえておかないといけないという気概があるのでしょう。



魔術・占星術



 さて、魔法使いと言うからには不思議な蔵書もあるというもの。皆様にもいくつかご紹介致しましょう。この棚には、民俗学的な資料やファンタジーに関する本が並べられています。まずご紹介するのは『魔術の書』。世界中の魔術・呪術・祭礼・祭具などが多数収録されています。ただいま開いているのは南米地域。この本があれば家の中の民芸品もすぐにどこの土地のものなのかが分かります。このページの記載はゲルマン系の古代文字・ルーンです。ルーン文字は漢字のように一文字で複数の意味を持つ表意文字ですが、表音文字である現代のアルファベット・ローマ字とも対応しております。ですから、この金剛の名前を漢字・ローマ字を経て記載するとこの通り。現存している資料が少ない文字なので、実際どの程度呪術・魔術的な要素を持ちながら使われた文字か定かではないのですが、現代では占い道具として定着しており、金剛にとっても力強い味方となっています。

水道橋博士の虎人舎 YouTubeより

 これまた大型の書物です。イギリスの出版社であるDK社が編んだ『魔術の書』(グラフィック社)は世界の魔術や呪術に関する歴史を解説した書です。「魔法・魔術がどのようにして生まれ、変遷し、現代のウィッカ信仰やオカルトに発展したのか。」との説明文がなされ、錬金術、占い、魔女裁判などの分野に精通した本といえるでしょう。金剛氏はこの書物からインスピレーションを生み出し、創作活動に役立てています。占いにも造詣が深いといえます。

 ここで占いの話が出ましたので、一般の読者が馴染みやすいものはどれが良いでしょうか。
 巷ではタロット占いが流行しているかもしれません。占い師の賢龍雅人氏が執筆した『タロット占いの教科書』(新星出版社)はタロット占いの技法を知ることができます。こちらは週刊ダイヤモンド(2024/1/27)のブックレビューコーナーで元外交官で作家の佐藤優氏が書評を掲載しています。

<占うにあたって、質問を整理することはとても重要です。今自分はどんなことで悩んでいるのか、カードにどんな回答を求めているのか。それらがはっきりしないままカードを引くと、出たカードを都合よく解釈してしまうからです。/ たとえば「彼との関係に悩んでいる」という質問の場合、「彼との関係をよくするために、自分がどう行動したらいいか知りたい」のか、「彼の本当の気持ちを知りたい」のか、「これから私たちの関係がどうなるのか知りたい」のか、質問を具体的に整理する必要があります。>質問を具体的に整理する過程で、各人が自らの心の状態を言語化する必要に迫られる。この過程がカウンセリングの意味を持つ。

週刊ダイヤモンド『佐藤優 知を磨く読書 第514回』 2024年1月27日

 人生における悩みを抱え込んでいた場合、できるだけ言語化する必要があります。その際、どんな過程で悩んでいるのか、これから先の出来事で閉塞した状況を好転したいのかなどの想いを質問によって整理すること。それを占い師に悩みを打ち明けることは一つの方法になるでしょう。賢龍氏は一級の占い師として知られています。

 タロットカードが占いに使用するようになった歴史的経緯については鏡リュウジ氏の『タロットの秘密』(講談社現代新書)が参考になります。実に興味深い作品です。

 私自身は占星術に深く関心を示したことがありませんでしたが、運を良くしたいと思っています。最近手に取ったのはゲッターズ飯田氏の『ゲッターズ飯田の運がよくなる口ぐせ』(プレジデント社)という書籍です。そもそも運が悪く感じるのは口癖から生まれると言います。たとえば、「お金が集まる言葉、逃げていく言葉」というコラムは目から鱗でした。

< ある人からこんなことを教わりました。
 「お金は、『お金がある』と言うと自然と集まってくる」
 僕はそれを聞いて、どんなに貧乏でも「お金がない」とは言わず、つねに「お金がある」と言うようにしました。
 いまとなっては、本当にお金に困ることはなくなりました。(中略)
「お金がない」とばかり言っている人は遊びや食事に誘いづらく、「あの人に声をかけるのはやめよう」となって、人づきあいがどんどん疎遠になっていきます。そうすると、新たな人や情報との出会いもなくなり、仕事やお金につながる出来事も起こらないでしょう。>

ゲッターズ飯田『ゲッターズ飯田の運がよくなる口ぐせ』プレジデント社 p.60

 「お金がある」と自己暗示をかければ、人もお金も集まってくる。その点で飯田氏は「お金がない」という言葉は人間関係をシャットアウトする危険な言葉だといいます。心に刺さるものです。やはり言葉は”言霊”であると覚えておくと良いでしょう。


占星術に関する書籍 動画より



哲学・文学



 人の文化的変遷、つまり心の流れを組むのであれば、哲学の書類も手放さないでしょう。こちらは哲学後半を比較的優しくまとめあげてくれています。そして、客観的な心理学や哲学よりもより人の心の近くにあるのが文学ではないでしょうか。
 お次は、古典から近現代にかけての文学をまとめた本棚をご紹介いたします。一番右手に見えてきたのは、「源氏物語」。箱入りの本ですから、中身を取り出してみると装飾的で手触りの良いしっとりとした和紙の上で源氏物語を楽しむことができます。しかしながら、古典の理解は難しく、手前の書籍を抜き去ると古典を読むためのサポートになる書籍や解説書、また近現代の作家の作品が揃っています。ちょうどこちらは先ほど広げた「きりつもははきり」の解説書。また背景を理解するために日本史や国語便覧の本が役立ちます。当時の服装や通貨など状況をよく理解していると物語がより深く体の中に入ってくる感じがします。著名な作家の作品などは名作と一絡げにされ、名前やあらすじだけを知っているということも。この『ファウスト』はゲーテの代表的な戯曲。「時は止まれ 汝は美しい」という一説が有名ですが、それだけでなく、ゲーテが一生をかけて書き上げた、その一部一部に重みがあります。
 さて、こちらの本棚は文庫本。この本棚の一押しは坂口安吾、江國香織、サン=テグジュペリ『夜間飛行』。このどれもが子どもの頃、友人や家族に勧めてもらった本です。詩歌という視点では銀色夏生さん。芸術家としてのあり方はレオナルド・ダヴィンチ。これらの本には強い影響を受けています。

水道橋博士の虎人舎 YouTube より

 金剛氏が頻繫に開く哲学書は一般向けの図鑑でした。実業家の田中正人氏が書いた『哲学用語図鑑』(プレジデント社)は難解だと思われる哲学の用語を平易に解説した書です。ビジネスや交渉事にも役立つ一冊だと思われます。



 そして、金剛氏が何より大切にしているのは文学。近現代の古典文学作品がずらりと並んでいます。動画で一番右に見えたのは箱入りの古書である『源氏物語』です。古典は難解なものが多いため、それらの理解を促す解説書も揃えて、源氏物語の味わい深さを堪能しているようです。
 丁度「源氏物語」をテーマにした大河ドラマが2024年に放送しました。『光る君へ』です。大河ドラマを楽しむために去年(2023)から刊行された書籍はたくさんありますが、漫画や図解解説書で理解を深めるとよいでしょう。富井健二氏が監修を務めた『マンガで味わう源氏物語』(Gakken)は紫式部作品の背景を分かりやすく解説しています。文学系YouTuberのベル氏が推薦文を寄せています。大河ドラマは終了しましたが、源氏物語の良さを改めて振り返るのに参考になるでしょう。

 以下の動画はベル氏の本棚です。文学の総本山です。


 さて、金剛氏の一押しの文学作品は坂口安吾や江國香織氏です。特に坂口安吾の作品は若林凌駕氏も愛読しています。『堕落論』(新潮文庫角川文庫)を逆さまにして置いてあります。水道橋博士氏もよく読んでいるそうです。

 芸術活動を行う上で手放せないのは『レオナルド・ダヴィンチの手記(上下巻)』(岩波文庫)です。杉浦明平氏が翻訳しています。影響は計り知れないようです。

 ただし、レオナルドダヴィンチが書いた古典は難解ですから、あまり時間をかけたくない読者もいるでしょう。手始めに入門書から入ることをお勧めします。
 美術史家の池上英洋氏の『よみがえる天才2 レオナルド・ダ・ヴィンチ』(ちくまプリマ―新書)は高校生でも読める本です。本書を読むと、天才・レオナルド・ダ・ヴィンチの人物像を知ることができます。

 ダヴィンチ研究者の桜川Daヴィンち氏の『超訳 ダ・ヴィンチ・ノート 神速で成長する言葉』(飛鳥新社・文庫版)を読むと、天才の思考法について分かりやすく解説しています。

 これら二冊の本を消化した上で、「もっとダヴィンチの謎を深く知りたい。」と思う読者はハードルが高めのノンフィクション作品に挑むことでしょう。ジャーナリストのウォルター・アイザックソンWalter Isaacson)氏の『レオナルド・ダ・ヴィンチ(上下巻)』(文春文庫)は700枚のダヴィンチの手記と膨大な関連史料から、天才の頭の中を探っていく評伝です。読みごたえはあります。

 金剛氏は八面六臂の顔を持つレオナルド・ダ・ヴィンチの魅力にくらくらとしてしまったのでないでしょうか。


金剛のとっておきの本


 では、最後に金剛氏の最も愛読する書籍を取り上げておきましょう。

 さて、「そろそろ終わるかな?」と思ったそこのあなた。ちょっと待ってください。ここにこれ見よがしに大きな扉がございます。Open the Sesami.
 これが金剛のとっておきです。ここには世界大百科事典、世界美術全集、日本の伝説といった本が収められています。ブリューゲルの画集と書道の教則本もこちらに。世界大百科事典は世界のあらゆること、五十音順に紹介してくれる書籍です。今まで個別の書籍で勉強してきたありとあらゆる点を線で結ぶ。今まで星の光のようだった本たちがこの書籍とつながることで、星座になります。世界美術全集は、全29冊。1冊ごとに特定の土地の美術史をまとめ上げています。芸術鑑賞の後半にとっても役立ちます。少し、ブリューゲルの画集を手に取ってみましょう。実は少々タロット・カードとのつながりが垣間見えます。こちらはタロットカードのタワー。何か急激で大きい変化のタイミングに現れるとされているカードです。そして、ブリューゲルの作品でとりわけ有名なのは「バベルの塔」。建築史の様子がありありと描かれています。実はこのバベルの塔の伝承がタロットカードのタワーのもとになったと言われることがあるのです。

※太字は筆者強調

水道橋博士の虎人舎 YouTube より

 なんとも大型の書籍が倉庫から垣間見えます。普通の人は保管することすらないでしょう。バベルの塔の伝承がタロットカードの発祥ともいえるのは驚きでした。やがてタロット占星術として現代社会に引き継がれているのです。


世界百科事典 動画より


 金剛氏は本棚と蔵書について感謝の言葉を込めて、次のように語りました。

 実は、今回ご紹介した本棚はスコットランドのグラスゴー美術学校の図書室がコンセプトの一つになっています。そして、実はここの書籍のほとんどは金剛が購入したものではありません。「ご自由にお持ちください。」と言われて頂いたものや「不要だから」と預けて頂いたものです。ご覧頂いた皆様、そして支えてくださる皆様、改めてありがとうございます。

Thank you for Watching!

水道橋博士の虎人舎 YouTube より




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ハリス・ポーター
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