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70kgほどの小銭を郵便局へ運んだ話

「小銭が貯まると見た目の1000倍重い」
2018年、夏。「効率化命!」「キャッシュレス大好き!」だった私は、パートナーと引越しをした際に発生した今回の珍イベントにより、この事実を初めて目の当たりにすることになりました。

小銭が貯まっていく人

私のパートナーは、現金主義でした。現金主義の中でもお札優先ユーザー。男性に多いでしょうか、常にお札で支払い、小銭はポケットへ。そして自宅の小銭ボックスへ溜めていくタイプ。
支払いの時点ではそれなりに効率が良い。いちいちいくら払うか考えずにお札を多めに出すだけで、あとはお釣りをもらうだけ。とてもシンプルです。

しかし彼には、溜まった小銭を使う能力は一切備わっていなかったのです。

彼の一人暮らしの家で一緒に住み始めた時には、すでに直径15㎝の巨大な銀の1号缶1つ分と、ジップロックMサイズ18袋分くらい溜まっていました。
猛烈にキャッシュレスに生きようとしていた私には、到底信じられない光景…。今でも思うのですが、彼はその小銭を将来どうするつもりだったのでしょう。

ついに引っ越しが決まる

そして時は過ぎ、8畳の1Kに2人で住むにはさすがに辛くて、いよいよ広い家に引っ越そうという話に。嬉しい反面、私にはとても気がかりだったことがりました。
もちろんあの小銭の山です。

私は今まで生きてきた中で、小銭を抱え込む経験が全くなくてわからなかったのですが、小銭というのは大量にあると非常に、想像を絶するほど重い。

引越し先に持って行かれても結構場所を取るから困るし、どう見ても運ぶのが大変。
彼には何度か「早めに郵便局に行って処理してほしい。早めに。」と頼んだものの、どうしても忙しかったらしくそのまま放置されていました。(後によ〜〜く思い知ったけれど、一人では到底運べませんでした…。トータルで60kg〜70kgくらいあったのではないでしょうか。大きい大人 約一人分)。

結局、Xデーは引越し当日に持ち越されます。

いざ

猛暑の8月末の引越しでした。暑い。息をするだけで燃える。そして、何度も確認したけど、小銭はそこにあった…。でも運ばなければ退去できません。

いざ、運搬の準備に取り掛かります。まずどうしたかと言うと、その小銭たちをありとあらゆる手持ちのバッグに入れてみる。けれども、あまりの重量に、普通のバッグではすぐに破れそうだったのです。
最終的には本格的な登山用のザック2つに半分ほどを分けて詰め、残りを小さいバッグに小分けに入れて、1号缶は脇に抱え、2人の背中も両手もふさがりながら、出陣。

部屋→エレベーター、エレベーター→オートロック玄関内側、玄関内側→玄関外。本当に重さに耐えられなさすぎて、一区切りずつ息を切らして移動していきます。いちいち一苦労。これならベッドを運ぶほうが全然マシだ…! 少し歩くだけでも猛暑と重さで汗だくになります。

なんとか外へ出て、タクシーを捕まえる。
運転手さん「重そうですね?」
私「全部小銭なんです」
運「やーこんなに大量の小銭見たことないです」
私「私もです」
運転手さんがちょっと引いていました。

そして、なんとか郵便局へ到着。

郵便局に入るにもまた一苦労…。タクシー→郵便局外入り口、入り口外→入り口中、入り口中→待合いスペースと、順を追ってやっと辿り着きました。大きなザックを背負って入ってくる私たちに若干ざわつく局員さんたち。おらぁー!と荷物をすべておろすと他のお客さんの視線も刺さります。痛い。

ここで、彼の口からまさかの一言が飛び出したのです。
「いや…貯めとくんじゃなかった…(ボソ)」
カチーーーン(゜-゜)
となるのを抑えつつ、受付窓口へ。

郵便局で枚数計算

そして、窓口へ行って「あるだけ入金」で枚数計算を依頼します。

郵便局のATMでは扱える小銭の枚数は1回100枚まで。現金への換金だと窓口手数料がかかってしまうのですが、小銭の枚数を数えてもらって口座に入金してもらう「あるだけ入金」の場合は手数料は無料です。

局員のおばさまの一言での気づき

重い。汗。恥ずかしい。イライラ。「なんでわたしまでこんな辱めに…」と内心怒りMAXだった私の元に、1人 年配のコンシェルジュの女性がささっと近づいてきました。

コ「いや〜すんごい量ですね!」
私「ほんとですよね。もう大変です(恥ずかしいし^^;)」
コ「いや〜、彼、貯金力あるわね! 絶対離しちゃだめよ、お姉さん!」
私「!!!…………(゜-゜)なるほど。」

静かに怒りに燃えていた私は、この方のすばらしい発想の転換に、ひとり感動していました…。

この時のキャッシュレス推進派の私は、「小銭が大量にあるのは恥ずかしい」という謎の主観的なルールを彼に押し付け、1人で勝手にイライラしてただけでした。その感情にフォーカスしてしまい、あやうく「この先この人と一緒で大丈夫だろうか」などとまで考えてしまいそうでした(笑)。

もっと広い意味で捉えたら「貯金してる」のは私と変わりません。私は銀行に預け、彼は自宅で小銭で保管。それだけの違いなのに、私は自分の変なこだわりルールを当てはめて良い悪いを判断していました。一歩下がって見渡せば、すんなりわかることだったのです。

私の怒りはこの発想の転換でスッと消えてなくなり、逆に、こんな視点に気づかせてくれたこの一連のできごとに感謝することになりました。

小銭を数えるのには時間がかかる

ここで、そういえば、引越しをしている最中だったということを思い出します。この後始まる引越し業者の手続きを彼に任せ、私は郵便局で1人、小銭の計算が終わるのを待ちました。
数もそれなりだし、30分くらいかな、などと適当に考えていたところ…まさかの1時間半超えでした(笑)。
局員さん2人がかりでした(お疲れさまでした…)。

最終的には、ものっすごい金額が印字された通帳を見て「たしかにとてつもない貯金能力だ…」と彼に感心し、郵便局をあとにしました。

結論:大量の小銭を運ぶのは大変です。

貯金は大事ではありますが、70kgほど貯めるのは、あんまりというか全くおすすめできません。せめて両手に収まるうちに両替しに行くのがベストだと思います。

ちなみにこの時ほど、お金を紙にした人に尊敬の念を抱いたことはありません。

私たちはその後も仲良く暮らしており、この出来事以来、彼にはモバイルSuicaなどのキャッシュレス決済を導入してもらい、小銭は10cm四方の小箱1つだけにおさめてもらう盟約を結びました(私が折を見て必死に使う)。

ある日の彼の一言「モバイルSuica便利だな」。

キャッシュレス、バンザイ。

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