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北ドイツ①世界遺産ワッデン海

ドイツ国内旅行先で人気の場所はたくさんあるが、その中でも北海沿岸は際立って人気がある。
数年前に、初めてこの辺りを旅行した時の思い出を。


旅の最初の目的地は、Hooksiel ホークジール。
他に大きな街がいくつもあるのだが、すでにパートナーが訪れた事のある街ばかり。
今までに訪れたことのない街に一緒に出掛けたいという思いから、この小さな街が候補に挙がった。

ホークジールの周辺には、Sielという言葉が語尾に付く街がとても多い。

Hooksiel
Rüstersiel
Harlesiel
Corolinensiel
Neuharlingersiel
Bensersiel
Dornumersiel
Nessmersiel

私は、このSielという単語を知らなかったのだが、堤防や水門、水路などが複合的に造られたもので、特に街からの排水のために利用されているという事を知った。
街を水害から守りつつ、また水路を使う事で船の移動を容易にするような、運河のような働きも一部担っているようだ。

私達はこの街でFerienwohnung(休暇用のアパート)と、自転車を借りた。
この休暇用のアパートというのは、ドイツでは広く利用されている。
休暇のために仕事をしていると揶揄される事もある程、ドイツ人は休暇をとても大切にしており、また長い休暇を取ることが一般的だ。
これらのアパートには、キッチンや洗濯機、広い庭まで付いている事が多いので、長期滞在や子供連れのかたにとっても、とても人気だ。

ホークジールの街並み

小さな港

ホークジールを含む北海の一帯は、Wattenmeer(ワッデン海)と呼ばれている。
これはオランダ、ドイツ、デンマークにかけての水域、湿原地帯のことを指しており、ドイツでは国立公園であり、また2009年には世界遺産(自然遺産)にも指定されている。

このワッデン海の干潟地域は、全長500Km、面積にすると10.000㎡にもなるのだそうだ。
東京から大阪までの距離、この干潟地域が続いているのだと想像すると、鳥肌が立つ。

話は逸れてしまうが、ドイツ国内に、いくつの世界遺産があるか調べてみた。
ドイツ外務省のサイトによると、現在は合計51個あるそうだ。
ユネスコの世界遺産、最初の年1976年に指定されたものの一つが、アーヘンの大聖堂だ。

もちろんパートナーはこの干潟を別の街で見た事があったそうだが、ここを歩いて散歩してみたいというのが願いだったようで、私ももちろんすぐに賛成した。

テレビでしか見たことがなかった干潟。
しかも、ここは世界最大の干潟なのだ。

満潮と干潮の時間を調べ、どのくらい水位に差があるのかを見に行くのも面白かった。
まるで別の場所を訪れたかのように、その様変わりする様子に驚いてしまう。
海水が岸まで来ていたのが嘘のように、干潮になると、何キロにも渡り干潟が現れるのだ。

満潮では、左側に見える建物のところまで海水が来ている。

干潟見学のために、私達はツアーに参加した。
ツアーでは、干潟の中を歩いたり、普段は海の底にいるはずの生き物を見つけて、それを見せてくださるのだが、これが本当に面白かった。
でも、私は、ちょっと怖くて触れなかったのだが。

長靴が干潟の泥にはまり、何度も動けなくなってしまうほど、歩きにくい。
この地域では、裸足で泥の中を走るというお祭りがあるのだそうだ。
きっと面白いだろうね、とパートナーと話す。

街には、海水を使ったプールがあった。
海で泳げない間も、このような施設があるのはとても嬉しい。

この辺りは保養のための施設が集中しており、
海からの風はヨードを含むので、体に良いとされているのだそうだ。
以前、同僚が体調を壊した時に、クアという療養休暇を取ったことがあった。
その時にも、北海に出かけていたのを思い出す。

街も、その一帯も、毎日のように冷たい風が吹き荒れている。
堤防の上にいると、体が風に持っていかれそうになり怖いくらいだ。

堤防には、羊が放牧されているのをたくさん見かけた。
その牧歌的な風景に、心が癒されていく。

私の後方を、自転車で走っていたパートナー。
ふと振り返ったら、いない。
なんと、自転車を止めて羊と戯れていた。
可愛らしくて、思わず写真を撮ってしまった。

街には、小さな貝博物館がある。
綺麗に飾られた貝は、とても美しい。

私は、ここホークジールで、干潟のツアーガイドさんから一つの貝の名前を教わった。
Herzmuschel。

Herzは、ドイツ語で心。
Muschelは、貝。

調べてみたら、鳥貝だった。
全く違う名前に驚き、なぜそんな名前なのかと聞いてみたら、ガイドさんは私に、下の写真のように貝を持ってごらん、と教えてくれた。

貝を上から見ると、心臓のハートのように見える。
こんな可愛らしい名前を付けてもらったら、鳥貝もさぞかし嬉しいことだろう。

日本では、貝の可食部分の足が鳥のくちばしに似ているから命名されたいうことを知ったのは、その日の夜のことだ。
他にも、食感が鶏肉っぽいという説もあるようだが、どうも私には鶏肉のようには思えない。

ついでに、日本で食べられている鳥貝を調べてみたのだが、なんと手のひらほどもある大きさの貝だった。
それでもやはり、ハートの形をしていた。

私は、鳥貝をそれほど好きだったわけではないのだが、このドイツ語名を知ってからは、少し好きになった。
私はやっぱり、かなり単純にできているようだ。

貝を見るドイツ人。
貝を食べる日本人。

一つの貝に対して、ここまで印象が違うというのは、面白い事だ。

そして、私がこの休暇中に知った単語が、あと二つある。
Flut=満潮
Ebbe=干潮

そして、この言葉を忘れないようにと、パートナーが私にある物をプレゼントをしてくれた。
それがこのカップだ。

Moin Moinは、おはよう(Guten Morgen)の代わりに、北ドイツで使われる挨拶だ。
私の同僚は北ドイツ出身なので、いつもこう挨拶してくれる。

カップの中に仕掛けがある。

愛情がEbbeにならないように、いつもFlutでいるように、とパートナーはそう言いながら、両手でカップを包むようにして、私に差し出した。

私はいつも、このマグカップで朝のコーヒーを飲む。
パートナーからの愛情を、たっぷり体に取り込んでいる気持ちになる。

そして、楽しかった北ドイツの休暇を思い出して、少しの間、目を閉じる。
目を開ければ、幸せな一日の始まりだ。


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世界遺産の街アーヘン

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