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流氷に憧れて【1】冬の知床一人旅

早朝、吉祥寺から羽田へバスで向かう。リムジンバスは満席で、私のすぐ後ろの人から補助席になった。
夏のロンドン旅行以来の羽田に到着。そのまま保安検査場を通過し、AIRDOに搭乗した。予約した時点から窓側の席はすべて埋まっていて、私は通路側の席に座った。窓からの景色が見えづらいことにもどかしさを感じながらも、ドリンクサービスで季節限定のほたてスープを飲み、9時前には女満別空港に着いた。

羽田で飛行機に乗り込む


空港に着くなり外に出てみた。快晴だったがやはり寒い。温度計は-10.4度を示していた。除雪された雪は高く積み上がり、太陽に照らされてキラキラと光って見える。思わず雪に触れ、そのサラサラした感触に驚く。空港周辺の雪でもこんなに綺麗なんだ。
空港に戻ってしばらくすると知床行のバスが来た。予想以上に多くの人が乗るようだ。

しばらく走ると車窓から網走湖が見えた。凍結した網走湖の湖上には無数のテントが立っていて、ワカサギ釣りを楽しんでいるようだった。このあたりの木々は、枝が雪か氷で白く見えた。それは樹氷のように厚ぼったいものではなく、繊細な枝のシルエットが白く染まり、しかもそれが太陽に照らされて輝き、繊細なガラス細工の作品が並んでいるかのようだった。

バスは網走の街を通過した。
氷砕船おーろら号乗り場のある網走道の駅のあたりから、ようやく海岸線に出て、港の護岸の奥に流氷がのぞいた。港からしばらく走ると、流氷は、護岸に邪魔されずに海岸線まで押し寄せていた。海上を漂う、どこか心許ない感じをイメージしていたけれど、まさに雪原がそのまま海上にも続いているかのように力強く、このままロシアまで歩いて行けるのでは、とも想像した。流氷が反射する光で外は眩しく、すぐに結露で曇ってしまう窓を何度も拭いては目を細めながら外を眺めた。

車窓からの流氷


お昼、ついにウトロに到着した。
道の駅で食事をする予定だったが、混雑で断念し、代わりにキッチンカーの屋台でおでんを食べた。大根の他にウトロ産のつぶ貝とジャガイモを注文し、この気温でまさかの屋外ランチを楽しんだ。
それから道の駅と併設の世界遺産センターを軽く見学し、バスに乗り込んだ。行先は、ここから少し北上したところにあるフレペの滝。

雪の森を歩く

終点の知床自然センターから雪の中を歩いて向かう。はじめは森の中を進んだ。白樺など葉を落とした木々たちの中に、雪を被った針葉樹も混じっていて、枝の先にはつららをぶら下げていた。つららは太陽光を反射して、自然のシャンデリアのように美しく光り輝いていた。木の皮が雪に落ちているのも何度か目にしたが、これはシカの仕業であろう。近くに人がいない時を見計らって立ち止まり、静寂に耳を傾けたりもした。

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