【超短小説】年雄と晩酌
年雄はあまりお酒に強くない。
だから晩酌はほぼしない。
だが、コンビニで見つけたお酒に合いそうなアーモンドが食べたくて、その日は小さな焼酎瓶を買って帰った。
お湯割りにした。
家で飲むと、外で飲むより緊張しないせいか、酒のまわりが早く感じる。
年雄は携帯に残っている写真を見だした。
普段、写真を撮る方ではないが、消してないので、約6年分の写真が残っている。
1番昔の写真は、山から太陽が出た瞬間の写真だった。
恐らく、初日の出を撮ったのだろう。
・・・覚えてない。
次はでっかい山の写真。
長野に行った時かな?
年雄はパラパラと携帯に残っている写真を眺める。
山・・・空・・・大きな木・・・自分・・・友達の結婚式・・・太陽・・・木・・・山・・・上半身裸の自分・・・太陽・・・公園・・・空・・・忘年会・・・空・・・大きな木・・・。
景色ばっかりだな。
その日見た景色が美しく感じたのだろうけど、写真じゃ伝わってこないし、撮った時の感情も思い出せない。
"これが俺の6年分の記録か"と思いながら、年雄は小さな焼酎瓶を飲み干した。
浜本年雄40歳。
酔っ払いながら"来年からはもっと写真を撮ろう"と決めた日だった。