#132 新宿 ボンベイ ④ *移転*
1973年創業の名店「新宿 ボンベイ」。
新宿界隈で最も歴史あるカレー屋であり、かつ都内でも5本の指に入るとも言われた老舗のインドカレー店が、今まさにその歴史に幕を下ろそうとしていました。
「新宿ボンベイは閉店します」
Twitter上にこの衝撃的なアカウントが誕生したのは、2018年3月下旬の某日のこと。
わずか一日にしてフォロワー数は2000人を突破し、瞬く間にネット上に拡散されていったツイートは、数多くのネットニュースでも取り上げられるなど、カレーファンのみならず、普段インドカレー屋にはあまり馴染みのない人々の注目までも集める事態となりました。
話題となったこのアカウントは、親会社により4月末での突然の閉店を告げられ、その決定に従わざるを得ない同店スタッフが、悲痛な思いをファンに訴えるべく作成したものでした。
閉店の理由が赤字による経営難であるならば、残念ですがスタッフの方々もわたしたちファンも納得するしかなかったと思います。しかし、「ボンベイ」は新宿駅西口前という飲食店激戦区でありながら、お昼時にはいまだ行列のできる人気店であり、当然のごとく黒字経営でした。
では、なぜこのタイミングで閉店なのか。
その理由は、買収により経営権が変わったことで新たに親会社となった企業が、「ボンベイ」を潰して新しく和食レストランを開店させることを決定したからなのだとか。
当然ながら、長年に渡って「ボンベイ」の味を守り続けてきたスタッフの方々にとって、親会社のこの決定は到底納得できるものではなく、かといって親会社の決定を覆すような権限も持ち合わせておらず、やり場のないその想いを発信するために作成したのが「新宿ボンベイは閉店します」というアカウントなのでした。
かくしてこのニュースは、カレーというワードに敏感なわたしの目にもすぐに止まりショックを受けたのと同時に、学生時代から通ったこのお店に、どうしてももう一度行かなければならないという使命感にも似た思いにかられ、久しぶりに主人と二人新宿まで足を運んでみました。
およそ2年ぶりに訪れた「ボンベイ」は、もうすぐ看板を下ろすということが嘘のように活気に満ち、最期の時を惜しむお客さんで店内は溢れかえり、店の外にはいつにもまして長い行列ができていました。
あー。何とか最後に間に合って良かった。
さて、この日、わたしが「ボンベイ」のラストメニューに選んだのは、2種類のカレーにナン、ターメリックライス、サラダ、サモサがセットになった「ベジタブルターリー」。カレーは「チャナマサラ」と「アルマッシュルーム」をチョイス。ナンは「ロティ」に変更してもらい、「タンドリーチキン」も別でオーダーしました。
いただきまーす!ぱくり。
うん♪♪やっぱり美味しい!!
アルマッシュルーム・・・じゃがいもとマッシュルームのカレー。トマトベースのさっぱりとした程よい辛さのグレイビーの中に、じゃがいもの甘味とマッシュルームやえのきの風味が感じられ、とても良くマッチしています。トッピングの生姜とパクチーで清涼感がプラスされて後味も爽やか。美味。
チャナマサラ・・・ひよこ豆のカレー。シナモンやカルダモン、クローブなど香り高いスパイスが特徴的なやや辛口のグレイビーに、ほくほくのひよこ豆がぎっしり。噛むば噛むほどスパイシーな辛さの中にお豆の優しい甘さが広がってめちゃめちゃ美味し。
ロティ・・・全粒粉、無発酵のインドのパン。ナンよりも素朴であっさりとした味わいで、わたしはナンよりも断然ロティやチャパティの方が好みです。店内に据えられたタンドールで焼かれた「ボンベイ」のロティは、外側はパリッと香ばしいのに中はモチッとしていて、ナンのような重たさはないのに食べごたえはあり、カレーとの相性もバッチリ。
サモサ・・・小麦粉で作った皮の中にじゃがいもなどの野菜や挽肉を詰めて揚げたインドのスナック。「ボンベイ」のサモサは、スパイシーに調理されたマッシュポテトとグリンピースなどの具がぎっしり詰まっていて美味!皮が薄めなためか、それほど脂っこさを感じさせない点も◎。付け合わせの甘酸っぱいチャトゥニーをディップすることでさらに美味しさ倍増。
タンドリーチキン・・・スパイスと肉の旨味がしっかりと感じられるジューシーなチキンはもちろんのこと、付け合わせのミントソースがこれまた爽やかな酸味でバツグンに美味しい!
ごちそうさまでした♪
帰り際に店長さんと少しだけお話しさせていただいたところ、スタッフの方々も何とか閉店を撤回できないかと頑張ってはいるものの、インド人スタッフの方々の就労ビザが7月には切れてしまうこともあり、それまでに再開させるのは現実的には非常に難しそうだとのこと。
こんなに素晴らしいお店なのに残念でなりません・・・。
「新宿ボンベイ」は、学生時代から足を運び続けたわたしにとって、カレー愛の原点とも呼べるお店のひとつであり、独身時代には主人とデートをした思い出深いお店。
無くなってしまうのは本当に惜しいけれど、偶然にも記事を目にしたことで、最後にもう一度味わうことができたのはとても幸運だったと思います。
45年間お疲れ様でした!
そして、美味しいカレーとともにたくさんの思い出をありがとうございました!!
【追記】復活を惜しむファンの声により、2018年6月28日、代々木に場所を移して再開することが決定しました!おめでとうございます!!
晴れ、時々Curry。2018-04-21
ハレカリにカレーを奢る? ▶YES NO