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寒い夜には、うどんを囲んで。

「うどん食べようよ」
「うどん いいね。今どこ?」
「もう着く」

冬初旬。
0時を過ぎた頃。
締め切りの終わった友人は
電話を掛けてくる。

慌てて外に出る準備ー財布と携帯。
玄関にかけたままのMA-1をひっかけて
階段を駆け下りた。

「さっき終わったとこでさー
 急にうどん食べたくなっちゃって」

アシスタントの彼は
運転しながら「肉!肉も入れたい!」と呟いている。
仕事が終わると即帰宅が常の彼。
こういう時は 話が別だ。

仕事。
こちらは
一日先に原稿から手を離した。

最後は純粋な手先の作業となった彼ら。
通話しながら仕事を進め。
「終わったら なにか食おうぜ」

締め切り前のラストスパート。
早く終わんねえかな。
そんなことで
頭がいっぱいになる。

「あれから 何食うかで盛り上がっちゃって」

「肉!肉だよ!肉ー!」


心なしかスピードが増した気がする。

24時間営業のスーパー。

徹夜明けと徹夜続き。
頭はナチュラルハイ。

食べたいもの。
掴む。
カゴに放り込む。
目についたもの。
掴む。
カゴに放り込む。

おやつはいくらまでですかー!?

入れちゃえ入れちゃえ。


ああ、今週まだジャンプ買ってない。
サンデーも入れといて。
他は?
テキトーに入れといて。

ローストチキン美味しそう。
まだカゴ入る?
カゴ持ってきたから大丈夫。

ノート(PC)中古安いね。

さすがにそれはアカンやろ。

肉。
肉。
肉。

肉まみれのうどん鍋。


10人前超の物量。

締め切り明けと徹夜明けの集団は
不適に笑った。

ぼんやり頭にも
一目瞭然「買いすぎた」
その物量。

スーパーからほど近い
締め切り直前の
家に車を飛ばす。

「助っ人と肉うどん いる?」
「5秒でこい!」

助っ人と
食材の山。
押しかけられた締め切り直前。

原稿を受け取り。
ラストスパート!
ブースト!


朝日を迎えながらの鍋は
とてつもなく美味かった。

肉サイコー!

うどん 美味しゅうございま・・・。

床一面に広がる
疲れ果てた人、人、人。

原稿を取りに来た編集者は
人の間をかいくぐり
何事もなかったように
帰っていった。

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