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ベートーヴェンを毎日聴く352(2020年12月17日)

『ベートーヴェン/カノン「門が通れなければ、壁を通って」WoO194』を聴いた。

このカノンはモーリッツ・アドルフ・シュレジンガーに贈られたもの。

シュレジンガーはベルリンに生まれたが、パリで楽譜出版を営み多くの作曲家の楽譜を出版した。ベートーヴェンもその作曲家のひとりである。

シュレジンガーがベートーヴェン作品を最初に出版することができた素敵な経緯は、カノン「信じて望め」WoO174にて紹介したので、そちらも参考にいただきたい。

このカノンは1825年の9月に作られた。ちょうどこの頃、シュレジンガーはベートーヴェンを訪問し、弦楽四重奏曲第12番 op.127、そして第15番 op.132の楽譜を出版する契約を取り付けた。そして、それが試演される演奏会も聴いたという。

この出版についてスムーズに契約できたのかどうなのかわからない。でも「門が通れなければ、壁を通って」という、そのままでは意味が分からない歌詞の作品をシュレジンガーへ贈った意図は

「たとえ門を閉めていて入れない状態であっても、私の楽譜を出版したいのなら、壁を乗り越えてでも契約を取りに来い」

と言っているように思える。

もちろんベートーヴェンのカノン特有の冗談だと思うが、それほどベートーヴェンは自らが生み出す音楽に自信があり、シュレジンガーはそれをよく理解していて出版したいという思いが強かっただろう。

この時契約された弦楽四重奏曲の楽譜が出版されたのは、ベートーヴェンの死後になってしまったという。

Maike und Björn BröskampによるPixabayからの画像


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