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ベートーヴェンを毎日聴く266(2020年9月22日)

『ベートーヴェン/舞台劇「レオノーレ・プロハスカ」の音楽 WoO96』を聴いた。

ベートーヴェンの作品に関して「レオノーレ」と聴けば、歌劇「フィデリオ」の登場人物であり、序曲作品にもその名前が残る。この作品も「レオノーレ」が付くのだが「レオノーレ・プロハスカ」と苗字まで付いている。

ということで、この二人の「レオノーレ」は全くの別人である。

でもこの二人のレオノーレには共通点がある。それは「男装して活躍した女性である」ということ。

歌劇「フィデリオ」の「レオノーレ」は、捕らわれの身となった夫を救うため、妻が男装して夫の救出を図る物語。そして「レオノーレ・プロハスカ」は、男装して志願兵としてナポレオン戦争に参戦。重傷を負い、その命を落とす。その活躍に「ポツダムのジャンヌ・ダルク」と称えられたという。

プロイセンの王室秘書官のレオポルト・ドゥンカーという人物。彼はウィーン会議に参加していたのだが、「レオノーレ・プロハスカ」の物語を劇にして、ウィーンで上演しようと考えた。美談のテーマは盛り上がりそうだし、作曲はウィーンで今もっとも熱い作曲家「ベートーヴェン」に頼む。これだけ材料が揃えば満員御礼にならないはずはない、と考えたのだろう。

重要な会議に参加していたのに、そんなことを考えていたのか?だから会議は遅々として進まなかったのか?まあ、お金儲けではなく、純粋に自国の英雄をウィーンはもちろん、各国の君主に知ってもらいたい、ということだったのかもしれないが。

この依頼を聞いたベートーヴェン。自分のオペラと似通ったような他の人物が持ってきたこの仕事の依頼を断るか?と思いきや、男装して活躍したという共通点を持つ「レオノーレ」に感銘をうけ、作曲を引き受けたのである。

音楽として興味あるのは4曲のうち、最後の曲は他で聴きおぼえがあるメロディが聴こえる。それはベートーヴェンのピアノ・ソナタ第12番の第3楽章の葬送行進曲。それを管弦楽版に編曲したのである。

ドゥンカーの「レオノーレ・プロハスカ」の劇。結局、上演されることは無かったという。こんなにいい材料が揃っていたはずなのに。

それは、実はすでに同じテーマを扱った別の劇「ポツダムの娘」(ピヴァルト作)が上演され、人気を博していたからだという。

もし「一発当てやろう」なんて考えていたとしたら、ドゥンカーは、マーケット調査を良くしていなかった、ということが原因と言えるのではないだろうか。

自分の作曲した作品がお蔵入りになったベートーヴェン。いったいどう思ったのだろうか?

FeatheredHatStudiosによるPixabayからの画像

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