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ベートーヴェンを毎日聴く333(2020年11月28日)

『ベートーヴェン/カノン「おお、トビアス」WoO182』を聴いた。

このカノンに出てくるトビアスとは、トビアス・ハスリンガーという名の人物のことである。

彼はベートーヴェンの親しい友人であり、ベートーヴェン作品を多くの楽譜出版したアントン・シュタイナーの元で働いていた。

このカノン誕生にはこんな話があるのだと、ベートーヴェンは手紙で書いている。

ベートーヴェンは温泉療養で訪れるバーデンへ向かう馬車の中で眠っていた。すると中東を旅している夢を見たのだという。エルサレムを訪れた夢では旧約聖書(「ドビト記」)に出てくるトビアスと、それに関して思い浮かんだメロディーを思い付いた。しかし、目が覚めたときにはその記憶をもう失っていた。

バーデンからウィーンへの帰り道も馬車に乗っていたが今度は眠らず起きたままであった。すると不思議なことに、忘れていたメロディーが浮かんできて、それをカノンとして記録したという。

歌詞は「おお!トビアス!主ハスリンガー!おお!」

と名前を言っているだけであまり意味を成さない。夢では聖書のトビアスが出てきたが、なぜがカノンは同じファーストネームのハスリンガーのこと。

ベートーヴェンが大好きな冗談、言葉遊びである。トビアス・ハスリンガーのことを手紙やカノンでよくからかっていたらしい。

しかし、この音楽は短くても格調高い宗教音楽のように聞こえる。これはちょうど作曲も終盤に掛かったミサ・ソレムニスに影響されているのかもしれない。

思いっきり悩んでいる時に、その解決方法やアイデアが夢の中に現れることがあるという。きっとミサ・ソレムニスで頭がいっぱいだったのだろう。エルサレムへ行き、聖書にちなんだ夢を見たというのも何か神秘的な話である。

WalkersskによるPixabayからの画像

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