ベートーヴェンを毎日聴く354-1(2020年12月19日)
『ベートーヴェン/カノン「これがその作品だ」WoO197』を聴いた。
ベートーヴェンが、秘書役をしていたカール・ホルツに宛てて作ったカノン。これもとてもユーモラスな作品である。
「大フーガ」と呼ばれる弦楽四重奏曲 op133を、ピアノ4手版として楽譜出版する際、出版社のアルタリア社へ12ドゥカーテンを払うことになっていたが、そのお金をホルツに託す際に作られたという。
Da ist das werk. Sorg um das Geld. Sorgt.
これがその作品だ。お金のことが心配だ。心配だ。
ベートーヴェンは大フーガの楽譜をホルツに渡しながらこう言ったのだろう。そして
Eins,zwei,drei,vier,funf,sechs,sieben,acht,neun,zehn,elf,zwolf. Dukaten.
1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12 ドゥカーテン。
と早口で歌われるのは、硬貨を1枚づつ、12枚まで数えながらホルツに渡しているのだろうか。あまりに早口なので、こんな勢いではないと思うが。でも、この勢いはかなりイラつているようにも感じる。
ちなみにドゥカーテンのいう単位であるが、当時の1ドゥカーテンを今の日本円に換算すると2万円くらいらしい。なので12ドゥカーテンは約24万円ということになる。
ベートーヴェンが楽譜出版のために自らお金を払うということがあるのか、と不思議に思った。これは、出版社側が「出版したい」ということではなく、ベートーヴェンが出版社に「出版してほしい」と持ちかけたからだろうか。そして楽譜が売れれば、その売り上げの割合に応じてベートーヴェンに返される、ということだろうか。そのシステムが良くわからないのだが、きっとそうなのだろう。
約24万円。「お金のことが心配だ」と歌われているが、なかなか大きな出費だと思う。
「大フーガ」は名曲であるが、どのくらい楽譜が売れたのだろうか。そしてベートーヴェンは大きな収益を得られたのだろうか?
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