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力を抜く、力を入れない…という感じではなく、力が入っていないという感じ

 トランペットを吹くために必要な「力」…腹式呼吸で使う「力」やアンブシュアが崩れない様にするための「力」、楽器を持つための「力」などの「必要な力」を除いては楽器を演奏する時の「力を抜く」「力を入れない」「リラックスする」ことが大切である、と多くの先人たちから教えられ、私はそれを最重要事項と思い長いこと練習や研究を重ねてきた。

 しかしこれはなかなか難しいことで、研究には何十年もかかり、漸く最近になって長年の苦労が実り始め、良い音を出すためのリラックスした「感じ」が少しずつ確実なものになってきたところだ。
 そうなるとトランペットは私にとっては簡単に音の出るとても楽しい遊び道具になる。
音楽を作ったり演奏したり、合奏したり、飽きることなくいつまでも遊んでいられる最高の友だちとなる。

 それでもまだ調子の悪い日がある。その時に自分の状態を検証すると、やはりほぼ必ず「力が入っている」状態なのが分かる。
 「力が入っている」部位はその時々で様々だが、大抵それはひとつの場所から徐々に範囲が広がっていく様だ。
そうなると、最後にはどこの「力」が問題なのか分からなくなってしまう。
 昔はこの状態になると頭は完奏することでいっぱいになり、音楽的に納得がいかず落ち込み、そこから学ぶことができないくらい疲れてしまっていた。

 何かが見えてきたのは、演奏や研究等様々な経験の中で「失敗しない」「自分よりも他人が納得する様に」「多くの人に喜んでもらえる様に」、、、こんなことを考えていてはダメだということに気付き、それを本気でやめようとしはじめてからだ。
「自分が喜ぶ」「自分の中で納得がいくまで突き詰める」「自分の内側で自由且つクリエイティブな瞬間を絶えず展開する」。。。
 人間関係を軸に音楽を作るのではなく、自分の想像の世界での広がりや繋がりを軸に作っていくということ。
 そんな風にして自分を喜ばせる音楽を作っていると自ずと歌に強さが漲ってくる。 
 更に、他者とのコミュニケーションで構築していく音楽芸術の世界においても、お互いの音楽をリスペクトすることを大切に協働創作することでそこに矛盾は生じてこないと思う。

 そうして「楽しく」音楽を作っている時にふと自分を見つめてみる…そこには自然体の自分がいて、力は入っていない。

 努力の方向を自分の内側に向けることで、力を入れる理由が無くなってくる。
 その結果、頭や心がリラックスして体全体にそれが伝わっていく感じになる。これが無要な力が入らないコツかもしれない。

 自分を喜ばせることがリラックスの秘訣なのならば、そんなに難しいことではないのかもしれない。

 人間社会に生きているので、人間関係を無視するのは無理だと思う。だけれども頭の中に空とか雲とか太陽とか海、山、空気、土、水、猫、犬、草花なんかがあることで、自然と力の入らない生き方が出来る様になるのかもしれない。

 楽器が身体の一部になるためには、そんな気持ちが必要なんだと強く思う様になった。

ということで、今日も勉強しよう。


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