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「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」を読んでミタ


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ジャンル:キャリア・マーケティング
著者:森岡毅
出版日:2016年4月23日


▪️本書の要点

  1. マーケティングとは売り上げを伸ばすための会社の「頭脳」であり「心臓」である。消費者理解の専門家として、消費者価値の最大化を目指し、組織の中で主体的に行動するべきである。

  2. マーケティングとは「売れる仕組みを作ること」である。「消費者の頭の中」、「店頭」、「商品の使用体験」、をコントロールすることで、仕組み化することができる。

  3. これからの時代を生き抜く企業には、「技術力」と「マーケティング力」の両方が必要である。マーケティングを重視し、技術力を活用する方策を練ることが求められる。

▪️要約

成功の秘密はマーケティングーマーケティングの役割

g-stockstudio/iStock/Thinkstock

企業がマーケティングに期待する役割とは、売上を伸ばすことである。しかしマーケティング部門だけで売上を伸ばすことができるわけではない。マーケティング部門が考えた、売上を伸ばす策を実行するのは企業全体、全ての従業員である。
つまり、マーケティングとは企業の「頭脳」であると同時に、多くの部署を動かす「心臓」の役割も担うのである。

企業の進むべき方向性を見極める頭脳としての「マーケター」が最初にすべき重要な役割がある。
それはビジネスを好転させるための衝くべき焦点、即ち「着眼点」を見極めることだ。
企業として頑張るべき焦点、つまり、「どこで戦うか」を正しく設定し、そこに会社の努力を集中させ、正しい方向へ皆を引っ張っていくことが「マーケティングの使命」である。

マーケターは消費者視点を貫く

著者がユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下USJ)に入社した2010年以降、USJは集客を600万人以上積み上げ、売上を倍以上に、利益は数倍の伸長を遂げた。V字回復を果たしたのである。

このV字回復を達成するための原動力は、1つの点に集約されるという。それは、USJが「消費者視点」の企業に変わったことである。消費者視点とは、「消費者の方を向いて消費者のために働け」という考え方のことで、「どれだけの消費者価値につながるのか」の1点に尽きる。

「消費者の方を向いて働く」は、考えれば当たり前のことである。しかし企業単位では「消費者視点」で一致団結することは困難だと著者は考える。企業のような多くの人が集まる集団では、企業の利害と個人の利害は必ずしも一致しないからである。
企業内には各部門の様々な利害のベクトルが縦横無尽に存在する。そしてその調整を図ると、「消費者にとってベスト」からどんどん離れていくことになる。いわゆる「落としどころ」は、ほとんどの場合で消費者にとって最適ではないのである。

マーケターは企業の中で消費者理解の専門家として各部門のしがらみの間に立つことが求められる。消費者価値を最大化できるように、しがらみの中でもリーダーシップを発揮し周囲を説得して、実現に向けて人を動かすことが重要となる。

日本企業はマーケティングができていない

日本企業のマーケティングとは

jacquesdurocher/iStock/Thinkstock

日本の多くの製造業が不振に陥っている。これは長年技術力に依存し、マーケティングを軽視したのが原因ではないかと、著者は考えている。欧米の企業ではマーケティング出身者が社長になっているケースが非常に多いが、日本の企業では、ほとんど目にすることがない。そもそも日本企業の多くのマーケティング部は機能していない現実がある。たとえば、大企業のTVCMでも、「自社のビジネスを伸ばす」という目的を達成しているものは数少ない。

マーケティングは巨大な自由主義経済市場のアメリカで、企業が生き残るための消費者最適を担保する知恵を体系立てたものだ。アメリカの自由主義経済によって育てられた、実戦学と言える。
日本でマーケティングの発達が遅れた理由は、日本独自の環境が原因である。規制による競争阻害、マーケティングを行う人材を集める障害となる、終身雇用と年功序列制。そして企業の「良い製品を作れば売れる」という技術志向の考えが根強かったことがあげられる。

「技術」と「マーケティング」の関係

日本の市場は成熟し、少子高齢化により縮小することが見込まれる。そのため、日本の大企業は海外で戦う必要に迫られている。世界のビジネスでは自由競争を避けることはできない。
「良い製品を作れば売れる」の時代は終わり、「売れたものが良いもの」という時代が到来した。これからの時代を生き抜くのは、マーケティングを重視して、技術力を活用する企業である。

現代は、優れた技術力があっても、競争優位や市場創出を実現できる技術革新が頻繁に起こらない時代となっている。またマーケティング力がないと、技術力を発揮する方向性を定めることが難しい。逆に「売る種」となる技術力が全く無いのに、売り方のアイデアや工夫だけでは、継続してビジネスを行うことは困難である。

日本はいまだにマーケティング発展途上国であり、強力な「マーケティング力」が獲得できれば、日本の誇る「技術力」は再び輝きを放つことは可能である。現在苦境に立っている企業はマーケティング力に問題があることを認識するべきである。問題点を自覚することから反撃は始まるだろう。

▪️ポイントー マーケティングとは

消費者の頭の中を制する

マーケティングの本質とは、
売れるようにする=売れる仕組みを作ること」である。
売れる仕組みは消費者と商品の接点をコントロールして作ることになる。主なコントロールするべき接点は「消費者の頭の中」「店頭(買う場所)」「商品の使用体験」の3つである。

「消費者の頭の中」とは自社商品に対する「認知率」と自社商品へのイメージである「ブランド・エクイティー」を意図的に高めることである。「ブランド・エクイティー」を競争に有利になるように築き、消費者の頭の中に「選ばれる必然」を作ることが重要となる。これにより自社商品は継続して売れるようになる。ブランド・エクイティーを作る一連の活動を「ブランディング」と呼ぶ。

店頭を制する

Kwangmoozaa/iStock/Thinkstock

「店頭」は消費者が商品を購入する現場であり、自社商品が十分な認知とブランド・エクイエティーを持っていたとしても、購入に結び付かない原因となる場所である。
店頭では3つの他社商品との争いが存在する。

一つ目は自社商品が店頭で扱われている割合を指す「配荷率」である。消費者が自社商品を買おうと思っても、店頭に商品が無ければ売上はゼロのままとなる。
ここでは卸、小売りの流通業者に対して、自社商品を扱うメリットを示し、「流通に選ばれる必然」を作る必要がある。
マージン率や客単価向上、売上の大きさなど着眼点はいくつかあるが、最大の武器は「消費者に求められている状態を作ること」である。
自社商品が消費者に支持されていれば、売上の上がる最大の要因になるとともに、消費者から支持されている商品を扱っていない小売店は、顧客からの信用を失うことになる。卸や小売店は消費者が求める商品は、取引条件に関わらず積極的に扱わざるを得ないのである。

二つ目は「山積」、つまりディスプレイの争いである。
店頭で自社商品を見つけてもらうことは重要である。店頭で目につきやすい広いスペースを確保して、自社商品に気づいてもらい、買う確率を高める施策である。
特に視覚的に目立つ「山積」の販売効果は強力である。価格を変更しなくても、山積するだけで、山積をしない展開の数倍を売上げることもある。

三つ目は「価格」である。
店頭価格を最終的に決めるのはマーケターではなく、小売店である。マーケターは消費者に定着させたい価格から流通マージンを逆算して、自社商品の価格政策を定めていく。
狙った店頭価格よりも高すぎても、低すぎてもダメである。高すぎると販売個数は想定どおりに伸びない結果となる。価格が想定より低い場合には3つのリスクがある。
消費者に安い商品と認識されるリスク、卸小売りの利幅が薄くなるリスク、継続的に値引きを求められるリスクである。消費者が安いイメージをもつ、流通にとって利幅の薄い商品には、更なる値下げしか販売を伸ばす方法はなくなるのである。

マーケターが狙った価格帯で商品が売れる状態を維持していくことが、売上(単価×個数)を中長期で最大化させて自社商品を長く繁栄させることに繋がるのである。

治水工事のように
消費者が「認知」してから「購入」し、さらに「再購入」に達する。この一連の流れのことを「パーチェス・フロー」と言う。

著者はこのフローを治水工事に例えて説明している。
マーケティングとは、一番上流の「市場」という湖に溜まっている水を、川を使って最下流の「売上」という企業の池にできるだけ多く流すゲームである。
川には「認知率」「配荷率」「購入率」などの川幅が狭まる場所がいくつかある。どこの川幅が問題かを特定して、適切な治水工事を行い、たくさんの水が流れる仕組みを作っていく。これが売れる必然を作るマーケターの仕事である。

マーケティングが日本を救う

合理的に準備して、精神的に戦う

Kwangmoozaa/iStock/Thinkstock

日本は道徳律が高く、お互いを信頼して思いやる「高信頼社会」である。日本人は情緒的で、特に就労モラル、現場の団結力など、戦術的な局面である現場の生産性に抜群の強さを発揮する。
日本の「卓越した戦術的な強み」を活かすためには、個人や企業が「合理的に準備するクセ」をつけることが大切である。

しかし、情緒的で精神性を重視する日本社会では、合理的に行うべき意思決定の際に情緒が入り込んでしまう。
理性と感情が一体化しており、合理的に正しい判断を冷徹に下すのが不得意である。また、そもそも「戦略がない」ことも多いが、生き残るためには戦略は不可欠である。

戦略段階では極力「情緒」を排除し、科学的な情報分析と感情を区別して議論し、合理的な「選択」をしなければならない。強い現場の力を爆発させるべき焦点、戦う場所を突き詰めて選び、合理的に準備し、精神的に戦うことができれば現場はより大きな成果を上げる。

マーケティングが日本を救う

未来の日本を豊かにしていくカギは「マーケティング」にある。マーケティングは人を幸せにするための科学で、誰かを幸せにすることが好きな日本人の価値観に合っている。
自分のやる仕事が人々の頭の中の価値軸を変えて、多くの価値を生み出し、それが人々の購買行動につながる。マーケティングは今後も重要性を増していくだろう。

▪️すゝめ

要約では、個人も企業もビジネスで成功するためのカギである「マーケティング思考」を中心にまとめた。
本書内には、他に著者が体得した「キャリア・アップの秘訣」にもページが割かれている。「キャリア」という漠然としたイメージに対して、どのように考えると「キャリアの成功確率」が高まるのか。そのための行動指針がまとめられている。こちらも必読である。

Flier参照


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