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10)オーストラリア、ホームステイ終了。f*ckと叫ぶ香港人との共同生活(25歳)

レイザーラモン家でのホームステイを終え、私は巨大なスーツケースを抱え次の住処へ移動することとなった。

次の目的地は、
・立地が良い
・家賃が手ごろ
・寒くない

が条件である。

ホームステイの次のステップとして一般的なのは「シェアハウス」だ。

アパートや一軒家のオーナーが使用しない部屋を他人に貸し出し、複数名と共同生活することで借り手は家賃を安く抑えることができる...といったもので、オーストラリアではごく一般的な生活スタイルの一つである。
家具つきの物件がほとんどなのでスーツケースひとつで引っ越すことができる。

私も例にもれず地元のウェブサイトで物件を探し、何軒か見学にあたった。

そのなかで有力候補となったのが、香港出身のオーナーが住むアパートだった。
学生時代から10年以上オーストラリアに住んでおり、配管の仕事に携わっているらしい。
第一印象は「ジャッキーの映画で料理人やってそう」だった。なので、ここではジャッキーと呼ぶことにする。

スクリーンショット 2020-10-12 午後11.03.42

見学時に「暖房はあるか」と聞いたところ、「もちろん!ヒーターを貸すよ」とのこと。
レイザーラモン家の一軒家と異なり小さなアパートではあるが、立地もよく家賃も手ごろだったのでここに決めた。


ところで、他人との共同生活が上手くいくかどうかはギャンブルだと思う。
仲の良い友達同士であっても、一緒に住んでみたら上手くいかないことなどいくらでもある。
ましてや初対面の人と数分程度話したところでその人がどんな生活スタイルを持っているか見極めるなど至難の技だ。

ジャッキーは人柄もよくあまり人に干渉しないタイプだったので、今回のギャンブルは成功だったと思う。
しかし彼との生活を始めてからどうしても気になる点がひとつだけあった。

ジャッキーは無類の日本ドラマ好きである。
帰宅すると部屋に引きこもり、ひたすら日本のドラマをネットで見続けている。
しかしネットの調子がいつも悪く、接続不良になるたび「ファック!」と叫びまくるので少し怖い。

彼の部屋はもともとリビングだったのか他の部屋より広めなのだが、なぜか廊下のそばに机を置く人だった。

スクリーンショット 2020-10-13 午後6.58.24

そのため彼の叫び声はもちろん、食べ物を咀嚼する音、鼻を噛む音、彼のたてる物音はすべてこちらに筒抜けなのだが、本人は同居人がどう思うかなどどうでもいいらしい。
(私は可能な限り部屋の隅に移動し、可能な限り静かに過ごした)

なぜ広い部屋があるのに通路のそばに来る?何なん?通路好きなん?
一度気になり始めるともうダメだ。スキマだらけの薄い扉2枚では何も隔てることはできない。

ある日私は耐えかねて立ち上がった。よし、今日こそ「机部屋の奥に置いたら?」と聞いてみよう。
自分の部屋の扉に手をかけた瞬間、逆にトントン、とこちらの扉をノックする音が聞こえた。ジャッキーだ。

「ど…どうしたの?」私は恐る恐る扉を開けた。
「スーパーのクーポンあるけど使う?ブロッコリーが1ドルで買えるよ!」
「……」

私はクーポンを片手に自室の扉をしめた。
やっぱり言えない。ファックとか叫ぶけどジャッキーはやはり優しい…。

暖房の効いた部屋で私は思った。
共同生活とはそういうものだ。欲張ってはいけない。

引っ越し教訓5.
同居人の部屋の配置を気にしよう。

続き


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