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摂食障害の長い長いトンネルを抜けて~「痩せたい」と「食べたい」のその先へ~155


そう考えると、やっぱり人間らしく曖昧さがある方がいいのかもしれない。

「そうよね、完璧なんてただの幻想だったのだから。私は、完璧でも何でもないのだから。私はただ、完璧に憧れて、完璧を目指して、完璧になったつもりで、完璧にはなれなかったのだから……」

ペットボトルを取り出して自分の机に戻ろうと歩き始めたら、後ろから声をかけられた。

「あら紗希さん、今日も残ってるの?」

振り返ると、新山さんが立っていた。

「あっ、新山さんお疲れ様です。今から帰ろうと思ったんですけど、ちょっと喉が乾いたのでお水でも飲んで落ち着いてからにしようかな、って」

新山さんの前では『元気な紗希さん』でいたかった。

「そうだったのね。ところで、来週の金曜日、空いてるかしら」

「あっ、はい。えぇっと……確か何もなかったと思います」

「そう?もし良かったら空けておいてくれる?」

「あっ、はい。わかりました」

「それじゃ、私は戻るわ」

「お疲れ様です!」

何だろう……これは新山さんに誘われた?ってことでいいんだよね?

嬉しくて、さっきまでの疲れとか、思うように身体が動かない感覚とか、そんなものはどこかに吹き飛んでしまった。机に戻る足取りも、少し軽くなった気がした。


今日もありがとうございます。

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