【小説】銃とチョコケーキ
最初の弾丸が胸に当たった瞬間。
私はトシ・ヨロイヅカのバースデーケーキのことを考えた。
オフィスの冷蔵庫にある、『アキ』という付箋が貼られたチョコケーキだ。
息子は今日で六歳。まだハイアットのお子様ランチを前に「マックのハッピーセットが良い」と言う年齢だ。六本木ミッドタウンで高級ケーキを買ったのは、自分を慰めたかったからだ。「これを買えるくらい、ママは頑張ってきた」と。転職先で、今回こそ周りから好評価を得て出世しようともがき、失敗している自分を。それは誕生日に有給を取らない