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継承への気持ち

「子供の名前を韓国っぽくしたいとかないん?」

時々聞かれる質問だ。


私は在日韓国人4世にあたるわけだが、そこそこ色濃く韓国の文化が残っている方ではないかと思う。(「わたしの文化」という記事を見ていただければ分かると思う。)

父を朝鮮学校に通わせるかどうかや、日本に帰化させるかどうかでもかなり揉めたと聞いたから、きっとひいおばあちゃんみたいな上の世代の人たちは、韓国の文化を継承したいという気持ちが強かったんだと思う。

実際、今まで曽祖父母、そしておじいちゃんのお葬式は全て韓国式で行っている。


在日韓国人の文化継承については盛んに議論されている。

世代が交代していくほどに、自然と韓国の文化も薄れていくものである。

最近は韓国語が話せない人、帰化をする人、自分に韓国のルーツがあることさえ知らない人も増えている。

ある種の「適応」とも言えるかもしれない。

それでも、やっぱりどこかで韓国の文化が継承されている。

私がいつも食べている韓国料理は、曽祖父母から祖母、そして父へと受け継がれてきた。

慣習やチェサ、お葬式の方法だってきっとそうして伝わってきたのだろう。

もちろん、一世が持ってきた「生粋の韓国文化」と私が今受け継いでいる文化には多少の差異があるかもしれない。

日本に適応しながら新たに生まれた「在日文化」かもしれない。

だけど、やっぱり代々継承されてきた文化や慣習であることには変わりない。


私の父は、親族の中で恐らく初めて日本人と結婚をした。

だから、私は親族の中で初めて「ハーフ」として生まれた。

在日韓国人には韓国人であることに誇りを持ち、韓国人のまま韓国の文化を継承したいという人もいる一方で、在日として生まれたことを悔い、日本人になってしまいたいのになれないと悩む人もいる。

私の父やその兄弟はどちらかと言えば後者に近いと思う。

父や叔父叔母は、私には絶対に日本国籍を取ることを勧めてくる。

自分たちが日本で韓国籍のまま暮らしてきて、たくさん苦労してきたからである。

話を聞いている限り、父は自分の代でもう韓国文化の継承は辞めようと思っているようだ。


他の親族が私のことをどんな風に考えているかは分からない。

せっかく日本国籍を持って生まれたんだから、日本国籍を選択して日本人として日本に染まって生きてほしいと思っているかもしれない。

だけど、韓国語を勉強し始めたことを報告した時、留学をしようと決めた時、韓国に出生届を提出し、パスポートを取得した時、祖母はそれはそれはとても嬉しそうな顔をしていた。

祖母は私が幼い頃に韓服を着た写真をずっと大切にとっているし、去年ソウルで韓服を着た写真を印刷してあげたら、リビングと職場のデスクに飾ってくれた。

祖母は自分のアイデンティティに誇りを持ち、どこかで文化が継承されることを願っているのかもしれない。


私は今後、どうしていくのか。

それはまだ分からない。

私はこれからどこを生活拠点にして、どんな人と生きていくのかも分からない。

でも、私が伝えなくなってしまったら、今まで上の代からずっと伝えられてきた文化がここで消えてしまうというのも事実である。


私自身、正直に話すと、やっぱり生まれ育った日本の方が愛着を持っているし、これから先もきっと日本を生活拠点として暮らしていくのではないか、そして日本国籍を選択するのではないかと今は思う。

だけど、もし日本国籍を選択したって、私はぜひ自分の文化を子供や周りに伝えていきたいと思う。

もしかすると、自然と伝わっていくものなのかもしれない。

チェサやお葬式の様な自分の意思によって伝承されるかどうかが決まるものに関しては、きっと私が最後の代になる。

韓国の文化を色濃く持った家庭にに嫁がない限り、私はもうチェサみたいな儀礼をすることはないだろう。

だって、私の周りにはチェサをしたい人もできる人ももういないから。

だけど、自然と伝わってきた母の味(父の味と言った方が正しい)であるチヂミやトックは私も受け継いでいくのかもしれない。


自分にもしも子供ができて、その子供が自分のルーツや韓国の文化について興味を持ったら…

その時は、私の知っている全てを教えてあげようと思う。

同時に、国籍やジェンダーで人を決めつけたり差別したりしてはいけないこと、友情や愛情に人種は関係ないことを絶対に教えたい。


私が本当に伝承すべきことは、こういったことなのかもしれない。



おばあちゃんと済州島に行きたい!