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大塚家具 新経営陣の成果を決算短信より読み解く

経営不振が続く大塚家具は2019年8月9日付にて2019年1~6月期の決算短信(※1)を公表いたしました。
大塚家具は2019年4~6月期から経営体制を刷新しましたので、旧経営体制と新経営体制の比較がしやすい形で財務諸表の数値からその成果をざっくりと見てみました。

大塚家具の決算短信では4-6月期単独の数値表記はなく1-6月期の累積表記になっているため、このままでは単純な比較は出来ませんので、4-6月期単独の数値が分かるように変換する必要があります。


2020年4月期(※2)
売上:1-3月 68億円、1-6月期 138億円=4-6月期 70億円
経常利益:1-3月 △14億円、1-6月期 △24億円=4-6月期 △10億円
純利益:1-3月 △14億円、1-6月期 △24億円=4-6月期 △10億円

2018年12月期(※2)
売上:1-3月 91億円、1-6月期 188億円=4-6月期 97億円
経常利益:1-3月 △13億円、1-6月期 △35億円=4-6月期 △22億円
純利益:1-3月 1億円(特別利益 15億円)、1-6月期 △20億円(特別利益 16億円)=4-6月期 △21億円(特別利益 1億円


<新経営体制における 2019年4-6月期>
売上:4-6月期 70億円
経常利益:4-6月期 △10億円
純利益:4-6月期 △10億円

<旧経営体制における 2018年4-6月期>
売上:4-6月期 97億円
経常利益:4-6月期 △22億円
純利益:4-6月期△ 21億円(特別利益 1億円)

<<新経営体制における前年対比 >>
売上: 4-6月期 △27億円
経常: 4-6月期 12億円
純利: 4-6月期 11億円


◎まとめ
大塚家具の新経営体制における若干の改善は見受けられるようです。
経常での約12億円の改善は、販管費で約10億円削減(4-6月期 2018年 56億円、2019年 46億円)しているようです。
新規の資金調達はエクイティですので、デッドと比較すると有利子分の余裕がまだあるかもしれません。
大塚家具にある最大の経営戦略的な問題点は、本来ならば市場に顧客の抱える問題があり、その顧客の問題解決の方法として、家具という道具を提供することで、顧客のニーズと企業の提供するモノやサービスがマッチしますが、現状では家具というモノありきで、ニーズがないところにこの家具はどうすれば売れるかという戦略を試行錯誤している点にあると言えます。
家具が売れないならば売らなければいい。家具というトリガーは生かしつつも売らないで利益を出す方法を私ならば考えます。


改善策
「大塚家具を復活させるデザイン戦略が私の元に降りてきました^ ^」
私の元に降りてきたということは、別の複数の人の所にも降りてきているはずです。大抵は、実行可能な複数の人に降りてきます。誰が実行するかは分かりません。

ヒントとしては、大塚家具はニッチャーからチャレンジャーを目指して失敗し、フォロワーに成り下がりました。今は、ニッチャーでもなく、チャレンジャーでもなく、フォロワーです。フォロワーの取るべき戦略定石に立ち返ることがKFSであると言えます。

具体的には、現在の大塚家具は家具市場においてフォロワーとニッチャーの間くらいに位置しています。市場占有率で言うならば、フォロワー10%、ニッチャー20%の間くらいですので、10〜15%くらいの位置です。ここからニッチャーの位置に戻る為の戦略が先決です。

ピーター・ドラッカーは著書「マネジメント」(1974)において、アルキメデスの言葉を引用し「私に立つ場所を与えよ。そうすれば世界をもちあげることができる」企業はどこで何をするか、だれを顧客にするのかを正しく定義さえできれば、必ず成功すると述べています。


(参考資料)
※1:2020年4月期 第2四半期決算短信
http://www.idc-otsuka.jp/company/ir/tanshin/r-1/r1-8-9_3.pdf
※2:大塚家具決算短信一覧
http://www.idc-otsuka.jp/company/ir/kessan-tanshin.html



※こちらは2019年8月10日(土)のnakayanさんのtwitterでの連続ツイートを読みやすいように補足・修正を加え再編集したものです。


中山兮智是(なかやま・ともゆき) / nakayanさん
JDMRI 日本経営デザイン研究所CEO兼MBAデザイナー1978年東京都生まれ。建築設計事務所にてデザインの基礎を学んだ後、05年からフリーランスデザイナーとして活動。大学には行かず16年大学院にてMBA取得。これまでに100社以上での実務経験を持つ。
お問合せ先 : nakayama@jdmri.jp


<MBAデザイナーnakayanさんによる「大塚家具」「匠大塚」に関連するこれまでのブログ記事はこちら>

(第1回) 2015-02-26  <連ツイ>大塚家具のお家騒動をマーケティングの観点から考察する。

(第2回) 2016-12-12 <連ツイ>大塚家具の業績悪化をコトラーの競争地位戦略から考える

(第3回) 2017-08-26 <連ツイ>低迷する大塚家具の成長戦略を考える

(第4回) 2018-01-10 <連ツイ>匠大塚会長が“父娘げんか”を経て語る「事業承継ここを誤った」 を読んで

(第5回) 2018-01-17 <連ツイ>匠大塚会長がそれでも家具販売に「説明と接客」を貫く理由を読んで

(第6回) 2018-08-19 大塚家具が生き残る経営戦略を考える



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